動画コマースは、テレビのショッピングチャンネルのように、動画を視聴したまま直接商品を購入できるため、コンバージョン獲得につなげやすい点が特徴です。
今回は、動画コマースの基本的な概要からメリット・デメリット、おすすめのプラットフォームなどについてポイントを中心に紹介していきます。
動画コマースとは?
動画コマースとは、ECサイト内で動画コンテンツを活用したマーケティング施策のことを指します。
動画ECとも呼ばれることもあります。
従来のECサイトでは、商品の写真や文章のみで訴求を行うケースが一般的でしたが、特徴や使い方をテキストや画像のみで伝えるには限界もありました。
このような中で、スマートフォンの普及や5Gに代表されるネット回線の発達に伴い、動画をいつでも場所を問わず手軽に視聴できる環境になったこともあり、ECサイト内に動画を活用した動きが加速しました。
動画コマースでは、テレビのショッピングチャンネルのように、自社の商品を動画で紹介することが可能です。
商品の使い方やサイズ、特徴や機能、ケーススタディなどは、テキストや画像よりも動画の方が簡単に伝えることができます。
また、ユーザーの視覚だけでなく聴覚にもアプローチすることができるため、使用感などを具体的にイメージさせることで、コンバージョン獲得につなげやすい特徴があります。
ライブコマースとの違い
ライブコマースは、生放送の動画コマースのことを指します。
リアルタイムに集まったユーザーに対して訴求できるため、チャットなどでコミュニケーションを取りながら商品をアピールすることが可能です。
リアルタイムの配信には失敗できないため、出演者のスキルも求められます。
一方で、動画コマースであれば収録配信となるため、失敗しても撮り直しながら最適化していくことができます。
Eコマースとの違い
Eコマースは、ネット上で販売から購入までを一元管理する仕組みのことを指し、ネット通販全般のことを意味します。
従来のテキストや画像によって訴求するECサイトもEコマースの一つに含まれ、動画コマースもEコマースの手法の一つとなります。
動画ECとの違い
動画ECとは、ネット上の広告手法の一つで、動画を活用した広告のことを意味します。
また、広告を掛けずに自社サイトやSNSアカウントにて動画を掲載する施策も動画ECに含まれます。
ECサイト内で動画を掲載し、直接購入に繋げる動画コマースと手法は似ていますが、掲載する箇所や手法、目的などによって言い回しが異なるため、自社内だけでなく広告代理店などと共通言語として活用する際には注意が必要です。
動画コマースの市場規模
先ほどふれた近年のスマートフォンの普及、ネット回線の発達などに伴い、動画コマースの市場規模は増加傾向にあります。
YouTubeやTikTokなどをはじめ、動画プラットフォームも様々登場してきており、個人であっても動画を配信して商品を販売するユーザーも増えつつあります。
また、ECの業界は従来よりテキストや画像によるアピールに限界を感じており、動画をマーケティングとして活用するニーズは高くあります。
ファッションやアパレル系の業界であれば、衣服の質感や着心地をアピールするには動画の方が効果的です。
また、コスメやサプリ系の業界では、使い方や安全性を伝える上で動画の方が効率的に訴求できます。
このような背景もあり、ECの業界を中心に、動画コマースの市場規模は今後も拡大傾向にあります。
動画コマースを活用するメリット
テキストや画像よりも多くの情報を訴求できる動画では、効果的に活用することで以下のような効果が期待できます。
①コンバージョン獲得の増加
動画による訴求は、ユーザーの視覚だけでなく聴覚にもアプローチすることで、テキストや画像よりも多くの情報を伝えることが可能です。
その結果、ユーザー側も商品の特徴や強みなどを具体的にイメージしやすくなり、コンバージョン獲得にもつながりやすくなります。
特に、使い方や使用感、着心地など文字で伝えることが難しい要素は、積極的に動画で訴求することでユーザーに響きやすくなり、コンバージョン獲得につながる可能性も高まります。
②訴求チャネルの増加
動画コマース用に作成した動画は、自社のECサイトだけでなく様々なプラットフォームで横展開させることも可能です。
例えば、YouTubeやTikTok、InstagramなどのSNSをはじめ、広告として訴求させることもできます。
ユーザーに訴求する媒体・チャネルを広く持つことは、販売力を向上させコンバージョン獲得にもつながりやすくなります。
この訴求チャネルを増加させるという点でも動画コマースは効果が期待できます。
③話題性や拡散性の高さ
訴求チャネルとあわせ、動画コマースは話題性や拡散性の効果も期待できます。
特に、SNSではテキストや画像よりも動画コンテンツの方が、ユーザーの興味を惹きやすい傾向にあります。
その特性を活かし、イイねやシェアの増加によって、自然波及的にユーザーに認知させることも可能です。
動画コマースを活用するデメリット
これから動画コマースの実施を検討している場合には、以下の要素は注意点として押さえておくと効果的です。
①動画コンテンツの制作コスト
動画コマースでは、当然ながら対象の動画を用意する必要があります。
この動画の制作は、自社内で完結できるのであればまだしも、担当者がいない場合には制作会社に依頼しなければなりません。
通常、動画の制作には1本当たりの秒数や出演者のアサイン、企画内容などによって異なるものの、50万円から100万円程度かかります。
一度作成した後に修正する場合にも別途費用が発生する場合もあるため、定期的に運用していく上では相応の予算を準備しておく必要があります。
②効果測定や分析が難しい
また、動画コマースでは効果測定や分析が難しい傾向にもあります。
例えば、通常のテキストや画像であれば、対象ページの流入数や離脱率、コンバージョン状況などを確認すれば済みますが、動画コマースの場合にはそれに加えて、動画の再生数や視聴時間、完了率なども指標に含まれてきます。
これらはGoogleアナリティクスだけでなく専用ツールなどと組み合わせて分析する必要もあり、煩雑化して効果的な分析がしづらくなるケースも少なくありません。
動画コマースの成功には、適切な効果検証とPDCAサイクルが重要になります。
その上でも複数の指標を正しく計測・分析していくことが求められます。
動画コマースでおすすめのプラットフォーム
動画コマースにおいて、対象の動画を作成・管理していくためには専用のプラットフォームを活用していく必要があります。
近年では様々な動画配信プラットフォームが登場しているため、自社に合ったプラットフォームを選定することが重要です。
①firework
fireworkは、アメリカのLoop Now Technologies, Incが提供する動画配信プラットフォームです。
スタジオや専門機器を用意することなく、アプリを活用するだけで簡単に動画制作から集客まで網羅して対応することが可能です。
動画コマースとしても活用でき、ECサイト内での配信設定から販売までの導線設計も展開できます。
ライブ配信も可能で、作成後の動画はアーカイブとして蓄積させることも可能です。
②買えるAbemaTV
買えるAbemaTVは、株式会社サイバーエージェントとテレビ朝日が共同で提供する動画配信プラットフォームです。
動画配信サービス大手のAbemaを活用し、ショッピングチャンネルのように展開できるため、高い集客力が期待できます。
なお、2023年5月より運営会社は株式会社AbemaTVに譲渡され、サービスはアベマショッピングに一本化されています。
③MIL
MILは、MIL株式会社が提供する動画配信プラットフォームです。
従来の動画とは異なり、ユーザーが触れるという新しい視聴体験を実現するインタラクティブ動画をはじめ、ストーリー分岐やポップアップ、360度の映像など様々な動画制作に役立つ機能が用意されています。
また、企画制作だけでなく分析や改善までもワンストップで対応することが可能です。
④Instagram
Instagramは、画像や動画に特化したSNS媒体で、主にユーザー間のコミュニケーションを図ることを目的としていますが、ECサイト向けにショッピング機能も用意されています。
この機能を活用することで、動画から興味を示したユーザーに対して自然と販売ページに遷移させ、コンバージョン獲得に繋げることも可能です。
⑤YouTube
動画配信共有プラットフォームとして多くのユーザーを集めるYouTubeも、動画コマースとして活用することが可能です。
こちらも基本的にはInstagramと同様に、ユーザー間でのコミュケーションを目的としていますが、ショッピング機能を活用することで、自社の商材やサービスを動画で訴求することも可能です。
YouTubeで動画コマースに取り組む方法
YouTubeでは、ECサイトを運営する企業向けにショッピング機能が用意されています。
このショッピング機能は、一定の条件を満たしたクリエイターであれば、活用することでYouTube内にて商品の紹介を行うことが可能になります。
機能としては、動画終了画面への商品表示や動画内での商品のタグ付け、チャットでの商品の固定表示などが用意されているため、集客増加に繋げることが期待できます。
また、2022年7月にネットショッププラットフォームであるShopify(ショッピファイ)と提携したことで、YouTubeとShopifyを同期させ、よりコンバージョン獲得に繋げる展開も可能です。
動画コマースの活用事例
動画コマースは、近年注目されているマーケティング手法であるものの、闇雲に実施しても効果にはつながりません。
その際には、他社の事例を参考に、自社の動画制作や導線設計に役立てていくと効果的です。
①ニトリ
家具や雑貨の販売大手の株式会社ニトリは、ニトリネットというECサイト内で、ウチソトという動画コマースを展開しています。
季節に合わせた商品を動画で紹介し、ユーザーが興味を示した商品をタップするとそのまま購入画面に遷移させることが可能です。
活用シーンを動画によって具体的に示すことで、よりコンバージョン獲得に繋げることができています。
②INSECT COLLECTION
アパレルブランドのINSECT COLLECTIONも動画コマースを展開しています。
様々なアイテムを扱う中で、目次をECサイト内で用意することで、ユーザビリティを向上させ、スムーズな動画視聴から購入へとつなげています。
③Jack Bunny
ゴルフ系のアパレル販売を行うJackBunnyも動画コマースを展開しています。
動画コマースに不慣れな方向けに、「商品の詳細を知りたい方は、洋服をクリックして下さい。」といったアナウンスを加えることで、分かりやすい導線設計を行っています。
また、おすすめのコーディネートだけでなく、キャラクターを活用した隠しコンテンツなど遊び心を加えることで、動画を効果的にマーケティングに活かしています。
まとめ
テキストや画像よりも多くの情報を訴求できる動画は、ECサイトにおいても動画コマースとして注目を集めています。
スマホの普及やネット回線の改善などの外的要因も向上し、今後も動画コマースのニーズは高まるものと予測されています。
今回紹介した内容も参考に、自社の目的やターゲットの状況をふまえ、動画コマースを効果的に活用していきましょう。