マーケティングを担当している人たちは「サードパーティークッキー」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
個人情報の保護の観点から規制が強まっているサードパーティークッキーですが、GoogleのChromeでは廃止を2024年まで延長すると発表しました。
本記事では、サードパーティークッキーについて改めて解説するとともに、Googleが発表した廃止延長について詳しく触れていきます。
また、他の企業や法律による規制状況や対応方法についても解説していきます。
最後まで読むことで、サードパーティークッキーの最新の動向や、今後の流れについて理解できるでしょう。
1.Googleが「Chrome」でのサードパーティクッキーの廃止を2024年に延長
近年、個人情報の保護の観点からサードパーティクッキーの規制への動きが強まっています。
Googleは2020年1月に2年以内にサードパーティクッキーを廃止すると発表しましたが、2021年6月に延長し、2023年後半に再決定されました。しかし、2022年7月27日に2度目の延長を発表し、今回は2024年に延長されています。
今回の延長が決定された理由としては「プライバシーサンドボックスAPI」のテストに時間がかかるからだと考えられます。プライバシーサンドボックスAPIは、Google社が考案したプライバシー保護技術です。
試用版のリリースによってマーケティング担当や開発者などから意見を募ったところ「テストにまだ時間がかかる」という口コミが多く寄せられました。
GoogleはプライバシーサンドボックスのAPIの一般公開を2023年第3四半期までに設定し、2024年の後半までに段階的なサードパーティクッキーの廃止をすると発表しています。
2.そもそもサードパーティクッキーとは
マーケティング担当者やWeb広告に興味がある人のなかには、サードパーティクッキーについてはっきり理解できていない人もいるでしょう。
ここからは、サードパーティクッキーの意味や、ファーストパーティクッキーとの違いについて解説します。
今後の動向を把握するためにも、クッキーの基本的な情報について理解を深めておきましょう。
2−1.クッキー(Cookie)とは
そもそも、クッキーは「Webサイトに訪問したユーザー情報を一時的に保存する仕組み」を指しています。
ユーザーが入力したログインIDやパスワード、住所、カートに入れた商品の情報なども含まれます。
例としては下記です。
②サイトのドメインからブラウザに、Cookie情報を付与
③ブラウザがCookie情報を保持
④ユーザーが再度訪問した際、ブラウザからCookie情報を戻す
⑤ユーザーがログイン情報を入力しなくてもログインできる
Cookie情報が残っていることでブラウザがログイン情報を戻し、再度ログインすることができるのです。ユーザーにとってはわざわざ情報を入力する必要が無いため、便利な仕組みといえます。
その情報をもとに、サイトの数値を分析することができます。
2−2.サードパーティクッキーの意味
サードパーティクッキーは「訪れたサイト以外のドメインから発行されたクッキー」のことで、第三者から付与されることが特徴です。
たとえば、サイト上でバナー広告などが配信されている場合、広告配信サーバーから発行されることになります。
ドメインを横断したトラッキングができるので、後述するリターゲティング広告やアトリビューション分析などで活用可能なことがメリットです。
2−3.ファーストパーティクッキーとの違い
ファーストパーティークッキーは、訪問したWebサイトのドメインから発行されるクッキーです。ログイン情報やカートへの保存などに利用されているため、恩恵を身近に感じる人も多いでしょう。サードパーティークッキーと異なり、ブロックされる心配がありません。
しかし、ドメインを横断したトラッキングを行うことはできないので、応用できる幅が限られています。
3.サードパーティークッキーの具体的な利用方法
サードパーティークッキーの具体的な利用方法は以下3つです。
- リターゲティング広告
- アトリビューション分析
- Web広告の効果計測
- アフィリエイト広告
それぞれの詳細な利用方法について把握しておきましょう。
3−1.リターゲティング広告
リターゲティング広告は、興味関心を持ったユーザーに対して効率的に訴求ができる広告手法です。
自社サイトに訪問したユーザーをターゲティングし、別のサイト訪問時に広告を配信することができます。
サイト内に設置するリターゲティングタグにサードパーティクッキーが取り入れられていることが特徴です。
3−2.アトリビューション分析
アトリビューション(attribution)は「帰属」という意味を表しており、アトリビューション分析は広義では「特定の事象がどんな要因によって発生したのか」を示しています。
インターネット広告の業界では、CVが発生するまでの広告の貢献度を分析することをアトリビューション分析と呼んでいるので覚えておきましょう。
分析のためにサードパーティクッキーを導入しているツールがあり、どの広告が興味関心を植え付け、行動の後押しをしたのかが分かります。
3−3.Web広告の効果計測
広告によって、資料請求や購入などのCVがどれだけ発生したのかもクッキーで計測されています。
クッキーへの規制が強まると、各プラットフォームの管理画面に表示されている数値と実際のコンバージョン数が合わないなどのトラブルが発生する可能性があります。
3-4.アフィリエイト広告
個人ブログやランキングサイトなどに商材を掲載する広告を、アフィリエイト広告といいます。
アフィリエイト広告内のリンクをクリックすると、LP(ランディングページ)へ遷移しますが、リンクからLPへ遷移する際は裏側ではサーバーを経由しています。
サードパーティークッキーを利用することで、広告を掲載していたどのWebサイトからコンバージョンを得られたかを把握することが可能です。
4.サードパーティークッキーへの規制の状況
サードパーティークッキーのへの規制の状況としては、先述したGoogle以外でも対応が順次始まっています。
サードパーティークッキーを取り巻く流れを理解するには、各企業や国が行なっている対策について理解することが大切です。
Appleの規制状況や各国の法律について見ていきましょう。アメリカやEU、国内の状況についても詳しく解説します。
4−1.Apple
Appleでは、個人情報保護の観点からクッキーへの規制を強めており、Googleよりも早い段階で規制に乗り出しています。
たとえば、Appleのブラウザである「Safari」では2017年から「ITP」と呼ばれるトラッキング防止機能が搭載されています。
また、2020年の3月には、アップデートによってサードパーティクッキーを完全にブロックするようになりました。
ファーストパーティークッキーへの制限も同様に行なっており、広告経由の場合は24時間以内で無効化される仕組みになっています。
順次アップデートが行われているため、Apple製品の利用者が多い日本国内では大きな影響が懸念されています。
4−2.法律関連
アメリカやEU圏などでは、データ保護の規制を強くする動きがありました。
アメリカでは「 CCPA(カリフォルニア州 消費者プライバシー法)」が2020年1月に施行され、カリフォルニア州に住む人々を対象にしたプライバシー保護が強化されています。
EUでは、2018年5月に「 GDPR(EU一般データ保護規則)」が施行され、欧州経済領域内で獲得した氏名やメールアドレスだけでなく、 IPアドレス・クッキーも個人情報の扱いになっています。
また、国内においても、2022年4月1日から「改正個人情報保護法」が施行され、クッキーの利用時に許可を求めることが義務付けられました。
「クッキーなどの情報も個人情報である」という認識が強くなり、各国や業界のガイドラインに則った利用が求められています。
5.サードパーティクッキー規制の影響
サードパーティクッキーの規制が行われることで考えられる影響は以下の3つです。
- コンバージョンの計測が困難になる
- リターゲティング広告の利用が難しくなる
- ファーストパーティデータを利用する機会の増加
それぞれの影響について詳しく見ていきましょう。
5−1.コンバージョンの計測が困難になる
サードパーティークッキーへの規制が強まることで、ビュースルーコンバージョンなどに関する情報を獲得しづらくなります。
ビュースルーコンバージョンは「広告を一度閲覧したがクリックしなかったユーザーが、別のサイトからアクセスして発生したコンバージョン」のことです。
間接的に発生した成果を調査することが困難になるため、広告を活用したマーケティング施策の戦略策定などにも影響が及ぶ可能性があるでしょう。
5−2.リターゲティング広告の利用が難しくなる
広告媒体の企業から発行されたサードパーティークッキーから行動履歴・興味関心を判断し、リターゲティング広告を配信することが難しくなります。
クッキー発行への拒否をするユーザーも多いので、今後は別の施策にも力を入れる必要があるでしょう。
一般的なユーザーは、クッキーについて詳しく知らないため、許可を求められても不信感から「拒否」を選んでしまう傾向があります。
現在、リターゲティング広告を主な施策として取り入れている場合、今後の規制で利用がさらに難しくなる可能性があるので注意が必要です。
5−3.ファーストパーティーデータを利用する機会の増加
サードパーティクッキーの利用が今までよりも難しくなることで、今後はファーストパーティデータの活用が注目を集めていくでしょう。
ファーストパーティーデータは自社で集めた情報のことであり、顧客の購入履歴などが該当します。
また、オフラインのアンケートやセミナーの開催、名刺交換で集めた情報もファーストパーティデータです。
信頼性が高くコストも多くかからないので、新しい対策として取り入れてみることをおすすめします。
ファーストパーティデータを獲得した後は、インサイドセールスやフィールドセールスで有効活用していきましょう。
6.サードパーティクッキーの廃止までにやるべきこと
サードパーティクッキーの廃止までにやるべきこととして、以下3つが挙げられます。
- 代替技術への理解を深める
- リピーター獲得に力を入れる
- 別のマーケティング施策も検討する
それぞれの項目を正しく理解して、対策を順次始めていきましょう。
6−1.代替技術への理解を深める
サードパーティークッキーへの規制は、大企業や国によって行われているため、広告主は順応していくことが求められます。
代替技術を理解して、補うための準備をすることを大切です。サードパーティークッキーに代わる技術としては「共通IDソリューション」や、Googleが開発している「Topics」そして「Device Fingerprinting」などが挙げられます。
「共通IDソリューション」はWebサイトから発行されたファーストパーティークッキーなどの閲覧履歴やログイン情報等をもとに、ターゲティングや広告配信の測定が可能になる技術です。
「Topics」は、Googleが発表した機能で、ブラウザはユーザーの閲覧履歴をもとに、過去3週間から各週で1つずつ関心の高い項目を選定します。この項目をWebサイト、広告主に共有することで、企業の適切な広告配信を可能にします。
「Device Fingerprinting」は、クッキーに依存せずに、通信時に取得した情報をもとにユーザーを推定する技術です。
クッキーが使えない環境でトラッキングする技術として注目されていましたが、AppleやGoogle等が規制することを発表しているため、今後の動向に注目です。
6−2.リピーター獲得に力を入れる
リターゲティング広告は広告手法のなかでも高い成果が望める方法でしたが、制限がかかったことで顧客生涯価値を高める施策が重要視されています。
新規顧客の増加だけを目指すのではなく、1人の顧客と長く関係を築いて利益を最大化させていきましょう。
例として、ECサイトを運用している場合「適切な関連情報を与えられているのか」や「商品の取扱が十分か」などを確認し、リピーターを増やすことが大切です。
6−3.別のマーケティング施策も検討する
多方面に配信できるWeb広告以外にも、SEOやSNS運用など、世の中にはさまざまWebマーケティング手法があります。長期的な目線で顧客を獲得したいのであれば、SEOやSNS運用の方が適切です。
サイトの立ち上げや運用など、工数は一定数必要になりますが、別の方法を模索している方は挑戦してみましょう。
成果がすぐに出る広告だけに頼らず、他の施策も検討することがおすすめです。
7.サードパーティクッキーについてのよくある疑問
サードパーティクッキーについて触れていると、以下のような疑問を感じる人もいるのではないでしょうか。
- セカンドパーティクッキーはあるのか?
- アフィリエイト広告への影響は?
7−1.セカンドパーティクッキーはあるのか?
セカンドパーティクッキーは、簡単にいえば「他社が取得したファーストパーティクッキー」のことを指しています。
ファーストパーティクッキーやサードパーティクッキーについて聞いたことがあっても、セカンドパーティクッキーは聞き馴染みがない人も多いです。
最近では、セカンドパーティクッキーを売買するプラットフォームも登場しているので、自社以外が獲得したデータを購入することもできます。
7−2.アフィリエイト広告への影響は?
アフィリエイトを提供しているサービス会社側が順次対応しているため、現状ではブログ運営者が個別で対策すべきことはほとんどないといえるでしょう。
ですが中には、個別で細かい設定をお願いしている場合もあるので、各アナウンスには耳を傾けておいてください。
8.まとめ
いかがでしたか?
サードパーティクッキーの規制は個人情報保護の観点から年々強まっています。Chromeを提供しているGoogleもサードパーティクッキーを廃止する予定でしたが、2024年まで延長されました。
今後は、廃止が完全に行われるまでに、サードパーティクッキーに頼らない施策の検討や新しい技術への理解が必要です。新規顧客の獲得だけに頼らず、リピーターの獲得にも注力していきましょう。
顧客の目線に立って、顧客生涯単価を高めるための方法を模索することが大切です。
また、長期的な視点で見れば、SEOやSNS運用を取り入れることも推奨できます。
各企業や法律による規制は強まっていくことが予想できるため、動向にも引き続き注目しておくことがおすすめです。