スマートフォンを中心としたIT技術の発達に伴い、近年では様々な広告・プロモーション手法が登場しています。
中でも、AR(拡張現実)は、マーケティングにおける新たな手法として注目を集めています。
ARは、仮想空間においてユーザーに疑似体験をさせることで、通常の広告よりも商品やサービスの認知度を高め、コンバージョン獲得にもつなげる効果も期待できます。
例えば、スマートフォンのカメラなどを通して、ファッションのコーディネートや家具・インテリア雑貨の試し置きなどを、バーチャルに体験することが可能です。
このようなリアルに近い疑似体験を行うことで、実際の効果を把握することができるため、コンバージョン獲得にもつながりやすい特性があります。
このような背景から、ARを活用した広告・プロモーション施策を行う企業も増加傾向にあります。
とはいえ、運用効果を高めるためには、AR技術の仕組みやコツなどを正しく理解しておくことが重要です。
そこで今回は、AR広告の基本的な概要やメリット、自社のプロモーションに活用するコツなどについてポイントを中心に紹介していきます。
AR広告とは?
AR広告とは、AR(Augmented Reality:拡張現実)の技術を活用した広告手法のことを指します。
スマートフォン技術の発達に伴い、近年ではスマホのカメラなどを通して、誰でも簡単にARの世界を体感することが可能です。
例えば、ファッション系であればスマホで自撮りのように映すだけでコーディネートを確認することができます。
腕をかざすだけで時計やブレスレットなどを試着する体験を行うことも可能です。
また、インテリア雑貨であれば部屋の中でスマホをかざすだけで、実際に配置した雰囲気を体験することもできます。
このようにARによる疑似体験を行うことで、ユーザー側としては購入後のイメージを具現化でき、コンバージョンにもつながりやすい特徴があります。
そのため、AR技術を広告・プロモーション施策に活用する企業が増加傾向にあります。
VRとの違い
ARと近しい技術に、VRというものも存在します。VRはVirtial Realityの略で、ARと同じく疑似体験を行う技術となります。
ただ、厳密にいうとVRは仮想現実と呼ばれ、体験するためにはVRゴーグルと呼ばれる専用のデバイスを装着する必要があります。
VRは仮想空間内でリアルに近い体験をすることができますが、専用デバイスを用意しなければならないため、現時点では誰でも気軽に体験できるという訳ではありません。
その点、ARであればスマホ一つで展開できるため、不特定多数に対して広くアプローチする上では効果が期待できます。
AR広告の基本的な仕組み
続いて、AR広告の基本的な仕組みについて紹介していきます。
AR広告は主にロケーション型とビジョンベース型の2つに分類することができます。
それぞれの特徴について紹介していきます。
① ロケーション型のAR広告
ロケーション型のAR広告とは、特定の場所(ロケーション)における情報をもとにAR技術を活用し、広告訴求する手法になります。
このロケーション型では、主にGPSを活用して位置情報を収集し、そこに対してAR技術を紐づけることで情報を表示させます。
基本的には屋外でのAR広告の展開において活用されることが多く、ユーザーが位置する様々なロケーションにおいて広告訴求することが可能です。
② ビジョンベース型のAR広告
これに対してビジョンベース型のAR広告は、ユーザーが行う行動に伴いARを表示させる広告手法となります。
例えば、あらかじめ設定しておいたQRコードなどを読み込ませることで、AR広告が表示される仕組みのことを指します。
さらにこのビジョンベース型のAR広告は、対象となるARを表示させる方法に応じてマーカー型とマーカーレス型に分類もされます。
いずれも目的やターゲット、プロモーション施策、企画内容などによって適宜選択することが可能です。
AR広告を実施することのメリット
次に、AR広告を実施することのメリットについて紹介していきます。
AR広告は、従来の広告とは異なるアプローチが可能です。
そのため、展開することで以下のような効果が期待できます。
① 今までにない新たなユーザー体験の創出
AR広告では、従来のテキストや画像、動画といった訴求に加え、3DによるCGを駆使した表示を行うことが可能です。
この技術を活用することで、リアルに近い演出や視覚的にも迫力ある訴求を行うことができます。
そのため、今までにない新たなユーザー体験を創出することができ、商品やサービスに対してより興味関心を促す効果が期待できます。
さらに、AR広告ではユーザーが実際に疑似体験を行うため、商材に対する認知度拡大につながる可能性も高まります。
テキストや画像だけでは情報を全て訴求しきることはできません。
これに対しARであれば、疑似体験を通じて楽しみながら把握することができるため、通常広告よりも高い効果が期待できます。
② コンバージョン獲得につながりやすい
AR広告による疑似体験は、認知度拡大だけでなくコンバージョン獲得にもつながりやすい特徴があります。
ファッションの試着・コーディネートや家具・インテリア雑貨の試し置きなどができれば、ただ認知するだけでなく商品やサービスを自分ごととして捉えやすくなります。
マーケティングにおいては、サンプルや試供品などを活用する施策も多くあります。
これらもユーザー体験によってコンバージョンにつなげる施策の一つとなりますが、AR広告ではそれを拡張現実において展開できるため、サンプル品の開発や郵送の手間などもかかりません。
そのため、コストを掛けず効率的にコンバージョン率を高める効果が期待できます。
③ 話題性や拡散性の高さ
近年注目を集めるAR広告は、多くの企業が参入・展開しているものの、そこまでひしめき合っている訳ではありません。
それは、AR広告をはじめAR技術に関する理解が浸透しておらず、効果を可視化できていない点などが挙げられます。
とはいえ、ARによる疑似体験は先ほどふれたように認知度拡大やコンバージョン獲得において効果が期待できます。
さらに現時点であれば先行有利を活かし、話題性の創出につなげることも可能です。
既に展開されているAR広告は、SNSなどで拡散され多くのユーザーにシェアされる傾向もあります。
このような話題性や拡散性の高さも、AR広告を活用する魅力の一つといえます。
ARを広告・プロモーション施策に活用するコツ
続いて、ARを広告・プロモーション施策に活用するコツについて紹介していきます。
AR広告は、闇雲に実施しても効果にはつながりません。
運用効果を高めるためには、以下の点を考慮しながら進めていくと効果的です。
① 話題性を集め認知度拡大につなげる
ARを活用した広告手法は、まだまだ一般的に浸透しているわけではありません。
そのため、AR広告によって話題性を集め、一気に認知度拡大へとつなげることも可能です。
とはいえ、闇雲に実施しても話題性を高めたり拡散を促すことにはつながりません。
ARはあくまで疑似体験の技術であるため、どのような疑似体験をユーザーに体験させるかが重要になります。
目的やターゲットをふまえ、商品やサービスを利用するシーンをよりイメージできる施策にて、AR広告を活用していくと効果的です。
② コンバージョン前の後押しとして活用
また、AR広告はコンバージョン前の後押しとして活用していくことも効果的です。
例えば、気になるファッションアイテムがあったとしても、本当に自分に合うのか分からず購入を渋るケースも少なくありません。
インテリア雑貨や家電などにしても、自宅の雰囲気やサイズが合うのか分からず諦めるユーザーも多くいます。
このような場合に、AR広告を活用して疑似体験を促すことで、コンバージョンの後押しにつなげることが可能になります。
他の広告・プロモーション施策などとあわせてAR広告を展開することで、全体的なマーケティング効果を高めることも期待できます。
SNSにおけるAR広告の展開例
最後に、SNSにおけるAR広告の展開例について紹介していきます。
AR広告の注目度が高まることで、近年ではSNSにおいてAR広告を展開することも可能です。
ここではSNSにおける代表的なAR広告として、FacebookとInstagramにおける展開例について紹介していきます。
① FacebookとInstagramにおけるAR広告の活用方法
FacebookとInstagramを展開するMeta社では、2022年からSpark ARというAR技術を活用した機能を展開しています。
このSpark ARでは、無料で展開可能なSpark AR Studioを通して誰でも簡単にオリジナルのARを作成することが可能です。
さらに、作成したARをMeta Spark Hubにて広告用のARとして申請し、承認されればAR広告として展開できます。
このAR広告は、FacebookやInstagramにおいてフィードやストーリーズなどで配信・訴求することが可能です。
FacebookやInstagramは、実名制のSNSであり、ターゲティング精度を高めることで広告・プロモーション効果を高めることも期待できます。
そこに加えて、AR技術によって話題性を創出することができれば、より拡散を促し多くのリーチ獲得やコンバージョン獲得につなげることも可能です。
② FacebookとInstagramにおけるAR広告の効果測定
AR広告もPDCAサイクルを回しながら検証と改善を行うことが重要です。
この効果検証において、FacebookとInstagramのAR広告では、他の広告と同じく以下の要素にて測定を行うことが可能です。
なお、FacebookとInstagramのAR広告では、インスタントエクスペリエンスと呼ばれるモバイルデバイス上にフルスクリーンにて表示される広告フォーマットの指標から計測することができます。
まとめ
様々なIT技術の発達に伴い、近年ではAR技術を用いた広告手法が注目を集めています。
AR広告は、スマートフォン経由でユーザーに商品やサービスを疑似体験してもらうことができるため、通常の広告以上に認知度拡大やコンバージョン獲得につなげる効果が期待できます。
とはいえ、運用効果を高めるためにはAR広告の仕組みを正しく理解し、目的やターゲットをふまえ展開していくことが重要です。
今回紹介した内容も参考に、AR広告を自社のマーケティングへ効果的に活用していきましょう。