事業の成長戦略を描くうえで、目標設定は必須です。
また、適切に設定した目標は、日々の業務の道標となり、タスクの優先順位や各メンバーの評価の基準にもなり、生産性が大幅に向上するでしょう。
では、目標を”適切に”設定するにはどうすればよいでしょうか。
なんとなくで設定して、その目標にメンバーがついてこれない、なんて状態になっていないでしょうか。
そこで、SMARTという便利なフレームワークを使って、適切な目標を設定することができます。
今回は、SMARTの概要や、SMARTを活用した目標設定の方法などをご紹介します。
また、リスティング広告を始める際にも、目標設定は重要です。
広告キャンペーンを開始する場合のSMARTの活用事例などもご紹介します。
1.目標設定のSMARTとは
1-1.S:Specific(明確な)
1-2.M:Measurable(測定可能な)
1-3.A:Achievable(達成可能な)
1-4.R:Related(上位の目標に関連する)
1-5.T:Time-bound(期間を定めた)
2.SMARTを意識した目標の例
2-1.アトラクト
2-2.コンバート
2-3.クローズ
3.広告を始める前に確認したいSMART
4.この指標はSMARTに設定すべき?
4-1.CPA
4-2.CVR
4-3.CTR
5.まとめ
1.目標設定のSMARTとは
目標設定に使われるフレームワークのSMARTとは、以下の5つの要素を指します。
- S:Specific(明確な)
- M:Measurable(測定可能な)
- A:Achievable(達成可能な)
- R:Related(上位の目標に関連する)
- T:Time-bound(期間を定めた)
それぞれの指標に基づいて、目標設定を行います。
1-1.S:Specific(明確な)
目標は、曖昧な表現を避け、明確でなければなりません。
たとえば、「顧客を増やすため、営業を頑張る」などといった目標では何の意味もなく、むしろメンバーのモチベーションや生産効率を下げかねません。
一方で「新規顧客の契約数を、昨年比150%に伸長させる」というような具体的な目標であれば、それを達成したのかが判別できます。
未達成であれば、あとどの程度足りなかったのかがはっきりし、それによる評価も可視化しやすいです。
また、チームで目標を定めるとき、目標が曖昧であるとメンバー間の解釈にギャップが生まれる懸念もあります。
目標を数値化し、具体的であるほど、チームが一丸となって目標達成に向けたビジョンの共有が行いやすくなるのです。
1-2.M:Measurable(測定可能な)
数値で測定可能な指標を目標に設定しましょう。
たとえば、「顧客満足度を向上する」などといった目標は、聞こえは良いですが指標がわかりづらく、達成したかが判別できません。
そもそも”顧客満足度”とは何なのか?を定義するプロセスを経ているかも、上記の目標だけでは不明です。
このような場合は”顧客満足度”を「既存の取引先からの受注金額」として、
「既存の取引先からの受注金額を昨年比120%伸長させる」など、計測可能な数値に置き換えるのが良いでしょう。
また、顧客満足度の調査ツールを実際に導入し、数値化できる環境があれば、そのスコアをそのまま目標に設定するのも悪くないでしょう。
1-3.A:Achievable(達成可能な)
仮に具体的な数値を目標に設定していたとしても、現場の事情を知るもの全員が「無理です!」と口を揃えて言うような、現実的でない目標を掲げるのは良くありません。
人は成功体験を積み重ねることで様々なメリットがあります。
自信がつく
過去の成功体験から、人は自信をつけることができます。
自信は次のトライを生み出し、さらなる成長に繋がります。
成功体験はなるべく早期に経験することで、このスパイラルを回すことができ、成功のパターンを増やすことができます。
楽しくなる
成功体験自体が非常にポジティブなものであるため、日々の仕事が楽しくなります。
仕事は遊びではありませんが、楽しい作業と楽しくない作業では、どちらが効率よく、また粘り強く取り組めるかは明白です。
とはいえ、楽しさが先行してやるべきことの優先順位を見誤らないようにしたいですね。
余裕が出る
上記の2つの要素から、成功体験は作業効率面、精神面の2つの余裕をもたらします。
皆さん経験があるとおり、余裕がある状態は自ずとパフォーマンスを高めていきます。
目標達成による事業成長が第一であるうえで、長期的なチームビルディングの観点から、それを達成したことによる成功体験が重要です。
チーム内のリソースを鑑みて、達成可能な目標を設定しましょう。
1-4.R:Related(上位の目標に関連する)
その目標が、経営に関わる指標に基づく設定をされていなければなりません。
たとえば、「Twitterの企業アカウントのフォロワーを3,000人まで増やす」という目標があったとします。
数値が具体的なので一見良い目標に見えますが、「Twitterのフォロワーが事業に好影響を与える根拠」に欠けています。
Googleアナリティクスなどでリード獲得の参照元を分析し、Twitterから一定の割合でリードを獲得できているのであれば、Twitterに関する目標を定めても良いでしょう。
分析の結果、Facebookの方がリード獲得率が高かったり、またSNSがリード獲得に寄与していないのであれば、その目標は変更する必要があります。
目標を達成することで、事業に好影響があることが設定すべき目標の前提のひとつです。
1-5.T:Time-bound(期間を定めた)
これまでの4つの要素が満たされた目標でも、「期限」を設定しなければ、総崩れになってしまいます。
期限を設定することで、日々の進捗を確認できるようになり、毎日の行動、タスクが具体化されます。
逆に目標の期限が定まっていない状態では、達成のためのスケジュールが漠然としてしまい、日々のタスクに落とし込めない状態が続きます。
年、四半期、月、週などさまざまな期間の単位がありますが、目標の設定には期間を定めることをセットにしましょう。
2. SMARTを意識した目標の例
マーケティングに関わる目標は、収益化までの段階に応じて以下の3種類に分けられます。
2-1.アトラクト
自社サービスの潜在的な顧客を、”惹きつける”段階です。
- 今年度の3月30日までにサイト訪問者数を80%増やす
- 今四半期末までにTwitterのフォロワーを500人まで増やす
- 社内ブログのUU(ユニークユーザー)数を昨年比で300%伸長させる
これらの目標を達成する施策の多くはコンテンツ作成に関連するものとなるでしょう。
2-2.コンバート
アトラクトしたユーザーに対して、”見込み客に転換する”きっかけを与える段階です。
- 今年度の前期までに新規の見込み客を月間100人に増やす
- ランディングページ訪問者のCVRを5%まで向上する
- フォームの通過率を60%まで向上する
これらの目標を達成するためには、アトラクトしたユーザーに対して「どんな価値提供ができるか」を考える必要があります。
2-3.クローズ
コンバートしたユーザーが”実際の顧客へ転換する”段階です。
- 来四半期で新製品の顧客を40件獲得する
※競合他社が同種の製品を3か月で30件獲得した実績あり
この段階の目標をクリアするためには、コミュニケーションを継続的に取り続けて魅力を高めていくとともに、画一的でないコミュニケーションを取る必要があります。
対面、電話、メールなどの手段に関わらず、送るメッセージが”テンプレートっぽい”と見込み客は離れていってしまうため、「パーソナライズ」がキーワードです。
3. 広告を始める前に確認したいSMART
SMARTを用いた目標設定は、リスティング広告にも応用することができます。
- 当キャンペーン期間内の広告経由のエンゲージメント数を30,000,000獲得する
※過去同様のキャンペーンでエンゲージメントを20,000,000獲得した事例がある - 広告経由の問い合わせ(コンバージョン)を2020年9月末までに500件獲得する
- 広告経由の新規契約を2020年中に50件獲得する
※CRM,MAツールなどで広告経由の見込み客かどうかが判別できる
など、アトラクト~コンバート~クローズの各ステップでSMARTを抑えて広告目標を定めることができます。
基本的には、広告の評価指標を「コンバージョン」に置いているアカウントが多いとおり、コンバートの目標を設定するのが良いでしょう。
ほかに、ブランド認知目的のキャンペーンであれば「アトラクト」の目標を、大量の購買・顧客データを保有している企業であれば計測ツールを導入したうえで「クローズ」の目標を設定すると良いでしょう。
4. この指標はSMARTな目標に設定すべき?
SMARTを満たした目標を設定するときに、リスティング広告でよく見る以下の指標は適切なのでしょうか。
4-1.CPA
結論から言うと、弊社の見解では✕です。
目標のCPAが存在する場合、以下の2種類のパターンが考えられます。
目標のコンバージョン数が決まっていて、広告予算も決まっている場合
この場合、自動的に目標のCPAも決定しますが、それならばコンバージョン数を目標として追えば問題ないでしょう。
CPAを第一の目標として追ってしまうと、ブランドワードやそれに準ずる見込みの高いキーワードの完全一致、リマーケティングなど無難な施策を選びがちになり、結果としてコンバージョン数が縮小しがちです。
一方でコンバージョン数を絶対的な目標として追えば、現状のCPAで達成が難しい場合、予算を追加する選択肢を取りやすくなります。
許容できるCPAを先に算出した場合
許容できるCPAを決めてから、目標のコンバージョン数を掛けて、社内で予算の提案をする機会があるかと思います。
このとき、目標CPAはきちんとしたプロセスを経て定められているでしょうか。
過去の成約率実績や、商材の単価、利益率、リピート率やLTV、バイラル係数(既存ユーザーが平均して何人の新規ユーザーを呼び込むか)などを加味したうえでの許容CPAとなっているでしょうか。
効率のみを求めすぎると、運用経験がある方はご存知の通りリスティング広告のコンバージョン数は伸びません。
経営のフェーズにもよりますが、事業成長のために必要なのは成約による売上です。
効率ももちろん重要ですが、ターゲットへの接触機会の損失しないようにコンバージョン数を軸に目標設定を行いましょう。
4-2.CVR
CVRを目標として定めるのは、基本的には✕です。
ターゲティングするオーディエンスやキーワードによって、CVRは目まぐるしく変化するからです。
また、CVRが低くても、それ以上に平均CPCを抑えることができれば結果的にCPAが安価になるため、絶対的な指標とは言えないでしょう。
しかし、ターゲティングに大きな変化がない場合は、クリエイティブ改善のPDCAを回すために、CVRを目標の1つとして設定することは悪くないでしょう。
ランディングページや、エントリーフォームの改善が最も直接的に影響を及ぼすのはCVRであるからです。
しかしアカウント全体のコンバージョン数という指標と比べれば小さい指標であるのは間違いありません。
4-3.CTR
CTRも、CVRと同様に、画像やテキストの反応率を見るためには良い指標ですが、コンバージョンからは遠いでしょう。
いくら高いCTRで広告をクリックさせたとしても、そこから1件もコンバージョンが発生しないのであれば広告の費用対効果を疑わなければなりません。
よって、高いに越したことがない指標であるものの、目標として定めるかというと✕でしょう。
当たり前のようですが、リスティング広告はコンバージョンの数を目標に設定し、それを追って施策を打ち続けることで事業成長に貢献できるようになるのです。
5. まとめ
今回は、目標設定に重要な5つのポイント「SMART」ついてご紹介し、広告運用における目標の重要性と目標に置くべき指標を解説しました。
記事を見返すと、目標設定も運用テクニックの1つだと感じます。
また本文では触れてきませんでしたが、目標はなるべく1つに絞り、その1点のために全施策を投じることが重要です。
かのマーク・ザッカーバーグも、こう言っています。
Facebookがユーザー数を増やして成長することを目的としたアイデアでない限り、検討する必要はない
参照:ブログ購読者数を3倍にした、ブログトップページを飛躍的に改善する方法
当時のFacebookは”GROWTH”を指標としていたため、ほかの基準は一切取っ払って考えるべきと社員に示したエピソードです。
リスティング広告でも、目標のコンバージョン数の達成に向けて運用を進めていきましょう!
自社の目標を共有しながら広告運用ができるパートナーをお探しの方は、インフィニティエージェントまでお問い合わせください。