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PEST分析とは|マーケティングは外堀から埋めよう

更新日:2023年08月08日

PEST分析とは|マーケティングは外堀から埋めよう

「明日までに市場分析をしておいてくれ」と上司に言われたあなた。
やったことないし、でも普段の仕事もあるしどうしよう!とお困りなら、それは「PEST分析」で解決できます。

数あるマーケティング系の分析方法の中でも、市場の分析に特化した「PEST分析」について、成り立ちから作成のコツまでご紹介します!

1.PEST分析とは

「PEST分析」とは、商材やその業界を取り巻く外部環境を4つの視点から分析するマーケティングフレームワークのひとつです。
※外部環境のことを「マクロ環境」、内部環境のことを「ミクロ環境」と呼ぶこともあります

現代マーケティングの第一人者であり、ノースウェスタン大学ケロッグビジネススクールの教授を務めた、フィリップ・コトラー氏によって提唱されました。

PEST分析で用いる4つの要素は、以下の通りです。

P:Politics(政治)
規制など、市場のルールを変化させるもの

E:Economy(経済)
景気や経済成長など、価値連鎖に影響を与えるもの

S:Society(社会)
人口動態の変化など、需要構造に影響を与えるもの

T:Technology(技術)
ITの発展など、競争ステージに影響を与えるもの

また、「外部環境」とは自らでコントロールできる要素か否かによって定義されます。

外部環境:自社の意思でコントロールできない要素
内部環境:自社の意思でコントロールできる要素

自分たちで変更できない外部環境の要素は、うまく適応することが大切です。

たとえば、上流から流れている川に対して、泳いで上流に向かうのは得策ではありません。
川のすぐそばを歩く(アプローチの変更)か、エンジンを搭載したボートで移動する(技術の進歩)などしたほうが良さそうです。
このように、外部環境に負けずビジネスを軌道に乗せるためには、PEST分析はたいへん重要です。

2.PEST分析を“最初に”行うワケ

マーケティング分析を行う方には、「PEST分析は最初に取り組みましょう」と案内しています。
理由は2つに分けられます。

2-1.戦略を左右する要素となる

外部環境は自分たちの意思で変えられるものではないため、事業の戦略は外部環境に適応しているものであることが推奨されます。
戦略を決める前提として、外部環境に関連する情報が必要であるためPEST分析は早期に行いましょう。

2-2.他の分析に活用できる

PEST分析によって得られる情報は、他のマーケティング分析にも活用することができるからです。
活用できるフレームワークを以下にご紹介します。

5C分析

マーケティング分析の有名な方法のひとつに、3C分析というものがあります。
3C分析は「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」を分析することで、商材の「重要成功要因(KFS/Key Factor for Success)」を見出すために用いられます。

※3C分析についてはこちらから
今さら聞けないマーケティングの基礎【3C(5C)分析】とは?

この3C分析をグレードアップさせたものに「5C分析」も存在し、「顧客(Consumer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」「中間顧客(Customer)」「地域社会(Community)」の5つが分析対象になります。

このとき、「地域社会(Community)」の部分がまさにPEST分析の内容になります。

SWOT分析

SWOT分析も、自社商材を分析するときのフレームワークとして有名です。

SWOT分析では内部・外部、ポジティブ・ネガティブを4象限に分割し「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」とそれぞれ定義しています。

※SWOT分析についてはこちらから
SWOT分析を解説!自社の強み・弱みを知って戦略を立てる

この4つのうち、外部要因である「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」についてはPEST分析の内容を反映させた分析が可能です。

ファイブフォース分析

ファイブフォース分析とは、5つの要素からその業界の競合性の多寡を明らかにする分析方法です。
「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」「業界内競争」「新規参入の驚異」「代替品の驚異」を調査します。

※ファイブフォース分析についてはこちらから
ファイブフォース分析|業界を左右する5つの要素を捉える

全ての項目に外部要因の影響はありますが、その中でも「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」「代替品の驚異」はそのインパクトが大きいため、PEST分析をあらかじめ行うことでより詳細な記述が可能となります。

このように、PEST分析はほかの分析へ展開可能な情報が多いため、できるだけ先に行うのが良いでしょう。

4P分析

4P分析とは、1960年にエドモンド・ジェローム・マッカーシーが提唱したマーケティング施策におけるフレームワークの一つです。

Product(製品・サービス)、Price(価格)、Place(販売場所・提供方法)、Promotion(販促活動)からなり、それぞれの頭文字を取って4P分析と呼ばれています。

一般的にマーケティングは、市場やユーザー行動を分析し、その上で戦略立てを行い具体的な施策につなげていきます。

このようなマーケティング活動の中で、自社の商材やサービスの役割を把握する上で有効活用することができます。

3.PEST分析の手順

PEST分析を進める際の手順、注意点などを説明します。

PESTがそれぞれの項目の頭文字となっているとおり、以下の4項目を分析しましょう。

3-1.P:Politics(政治)

政治そのものだけでなく、広義的に“市場のルールを変化させるもの”を指します。
具体的には、以下がそれにあたります。

例)

  • 法律、制度の規制/緩和
  • 政治、政権交代
  • 政治団体、デモ
  • 税制、増税・減税
  • 外交

3-2.E:Economy(経済)

景気や経済成長など、モノ・コトの価値に影響を与えるものを指します。
具体例としては以下が挙げられます。

例)

  • 景気動向
  • 物価
  • 消費動向
  • 経済成長率
  • 為替
  • 株価
  • 金利
  • 原油価格

3-3.S:Society(社会)

人口動態の変化や、流行の移り変わりなど、需要の構造に影響を与えるものを指します。
このほかにも以下のような例が挙げられます。

例)

  • 人口動態・密度・構成
  • 世帯
  • 老齢人口・少子化
  • 流行・世論
  • 宗教・教育・言語
  • 治安

3-4.T:Technology(技術)

ITの発展など、競争ステージに影響を与えるものを指します。
例えば、これまで店舗同士の集客戦だったものが、今では「通販で買うか、店舗で買うか」という選択肢があるように、競争する相手や段階が多様化します。
実店舗のプロモーションではそもそも選ばれる前に「店舗で買う」ことのメリットを訴求しなければなりません。

例)

  • インフラ
  • イノベーション
  • 新技術
  • IT活用
  • 特許

4.PEST分析の手順

続いて、PEST分析のやり方について紹介していきます。
PEST分析は、以下の手順に沿って進めていくと効果的です。 

①情報を4つの要因に分類

まずは、自社に関連する情報や要素を集め、PESTの4つの要因に分類していきます。

PESTに関連する情報は多岐に渡るため、闇雲に収集していても際限が無くなり工数だけがかかってしまいます。
目的をふまえ、ある程度の情報源を絞って収集・分類していくと効果的です。

例えば、テレビや新聞、インターネット上のニュース記事、調査資料などはPEST分析に活用しやすい傾向にあります。
また、業界によっては専門紙や専門サイトも有効活用できます。

なお、この段階では正確な分類にこだわる必要はありません。
あくまで要因を認識する上で参考情報を振り分けていくと効果的です。

「インターネット広告」における例

・Politics(政治):インターネット広告と政治
・Economy(経済):インターネット広告と経済
・Society(社会):インターネット広告と社会
・Technology(技術):インターネット広告と技術

②事実と解釈に分類

続いて、振り分けた内容を「事実」と「解釈」に分類していきます。

事実とは、実際に起きた事象のことで誰も変えることができないものを指します。
これに対し解釈とは、起きた事象や状況に対する個人的な理解や考えのことを意味します。

インターネット上のニュースなどは、事実と解釈のどちらに当てはまるのか判別が難しい場合もあります。
とはいえ、誰がみても納得できる情報以外は解釈に当たるため、正しく見極めていくことが重要です。

「インターネット広告」における例

・事実:日本国内のインターネット広告費は前年比115%伸長
・解釈:インターネットが“マスメディア”となる日も近い

③事実を脅威と機会に分類

次に、先ほど振り分けた「事実」を「脅威」と「機会」に分類していきます。

この際に、自社にとって有利に働く情報であれば「機会」に、不利に働くことが予測される情報は「脅威」として分類していくと効率よく分類することが可能です。

とはいえ、中には脅威にも機会にもなり得る情報も存在します。
このように複数の視点を持つことで、今まで気づかなかったビジネスチャンスを生み出すことも期待できます。

「インターネット広告」における例

・脅威:5Gの日本上陸
・機会:動画関連市場の拡大

④戦略だて

最後に、振り分けした脅威や機会を参考に、具体的な戦略立てにつなげていきます。

この際に、緊急性の高さや長期的か短期的かといった優先付けを行いながら検討していくと効果的です。
施策によっては、緊急性が高かったとしてもリソースの問題などによって短期的にアプローチできない場合も存在します。
自社の状況もふまえた上で、優先度と照らし合わせながら検討していくことが重要です。

「インターネット広告」における例

・アプリを活用した動画広告の運用

5.PEST分析の事例

それでは、「インターネット広告」についてPEST分析を行ってみましょう!

5-1.インターネット広告と政治

ここ数年のインターネット広告市場では、プライバシーを重視する傾向にあります。
「GDPR(General Data Protection Regulation/一般データ保護規則)」において、ターゲティングに用いられるCookieも規制対象となるなど、個人情報を利用したターゲティングに制限がかかっています。

GoogleがGDPR違反としてフランスに対し約62億円の罰金を支払ったニュースが記憶に新しいと思います。
またこの流れを受けてかAppleは「ITP(Intelligent Tracking Prevention)」を打ち出し、iOSにおけるCookieの利用を大きく制限しています。

このように、個人情報に基づいた高精度なターゲティングにより効率的な広告配信を実現してきたプラットフォーマーは、若干苦しい立場にあります。

5-2.インターネット広告と経済

日本国内のインターネット広告費は前年比115%伸長と、堅調な伸びを見せています。
2020年は国内でもTVCM広告費をも抜くと言われており、インターネットが“マスメディア”となる日も近いです。

画像参考:モバイル広告費が初の1兆円超え/2019年の動画広告は2,651億円まで拡大見込み【電通他調査】

5-3.インターネット広告と社会

広告の配信量が増える一方で、インターネット広告に対して3/4もの人たちが「不快」と感じています。
過激なテキストや画像で低CPAを実現する広告は、実は商材のブランド毀損にも繋がっているかもしれません。
広告自体の成果と、ブランド向上のバランスが今後更に大事な要素となってきます。

参考:ネット広告「不快になったことがある」75%。意図せぬ広告クリックは68%が体験【イーライフ調べ】

また、インターネット広告市場で最も多くの収益を上げているのはGoogleですが、「若年層の検索エンジン離れ」が度々話題となっています。

ただし、10代に限ってみると「TwitterなどのSNS」(69.4%)を使って情報収集する人が最も多く、「Googleなどの検索エンジン」(54.1%)や「インターネットの情報サイト(アプリ版を含む)」(37.8%)を上回った。

参考:若者たちが、検索エンジンよりもSNSを信頼する理由

仕事柄「“ググる”から“タグる”へ」などと耳にしますが、このようにインターネット上で信頼を置く情報源が年代によって異なる傾向は今後更に強まると思われます。

5-4.インターネット広告と技術

5Gが日本にも上陸するに伴って、動画関連市場が更に拡大すると見込まれています。
事実、ネット広告全体の伸長率が115%であるのに対して、動画広告市場は175%伸長と破格の数値です。
静止画よりも動画のほうが広告効果が高いという検証も各所で進んでおり、確実に広告市場の鍵を握る存在と言えます。

また、Webブラウザからアプリへの移行も年々進んでおり、大手・中堅企業を中心にアプリマーケティングを戦術に組み込む企業が増えています。

5-5.分析まとめ

分析の結果、以下のようにまとめることができます。

動画を中心とした新技術が続々と登場し適応が必要である一方で、個人情報を用いた行動ターゲティングは規制される。
「誰に見せるか」は制限されるが、「何を見せるか」は充実していくため、広告の訴求内容を動画ないしその他クリエイティブに落とし込める高い制作能力が求められる。

ブランド毀損のリスクを考えられていない従来のターゲティングありきのクリエイティブは、この先淘汰されることが想定されます。
先述のとおり、インターネット広告の”マスメディア化”が進んでいる過程の傾向とも言えるでしょう。

6.まとめ

今回は「PEST分析」についてご紹介しました。
マーケティングの準備段階の分析の中でも、最初に行うべきPEST分析はとても大事です。

市場分析を広告施策まで落とし込んで運用していきたい方は、インフィニティエージェントにご相談ください。

この記事を書いた人

変化に負けない男になることを目標に入社を決意。 得意なSNS発信(インスタとTwitter)での経験を活かしInstagramアカウントの運営を務めています! 趣味は海外一人旅、新しい人との出会いが大好きで象を操れるのが自慢です!

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