マーケティングに携わっている人の中にはオムニチャネルという用語を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
昨今のマーケティングにおいて重要な言葉としてよく挙げられますが、具体的な意味やメリットについて理解できていない人も多いです。
そこで、本記事では、オムニチャネルの意味やメリット・デメリットとともに、事例についても解説していきます。
オムニチャネルとは
まずは、オムニチャネルの意味や必要とされる理由について解説していきます。
オムニチャネルの具体的なメリットやコツについて触れる前に、基本的な情報について理解を深めていきましょう。
オムニチャネルの意味
そもそも、オムニ(omni)は、ラテン語で すべての や 全体 といった意味を表しています。
また、マーケティングでは 顧客との接点 をチャネルと呼びます。
チャネルの具体的な例としてあげられるのは、カタログや実店舗、ECサイトなどです。
2つの言葉を合わせたオムニチャネルは、 購入経路を意識させないように、顧客接点を統合する戦略 のことを指した用語になります。
オムニチャネルが必要とされる理由
オムニチャネルが重要視されているのは、SNSやスマートフォンなどの普及によって、消費者の購買行動の形態が変化していることが要因です。
ネットやデバイスが普及したことで、昨今ではいつでもどこでも最安値で商品を購入できるようになりました。
現代のユーザーの中には、店舗で商品を見てネットでより安く手に入れる人もいるため、チャネルが統合されていないと機会損失につながることもあります。
オムニチャネル戦略を取り入れて、ユーザーの購買活動を容易にしつつ、店舗のショールーム化を阻止することが求められているのです。
オムニチャネルと他の言葉との違い
オムニチャネルとよく比較される言葉として以下の3つがあります。
• マルチチャネル
• クロスチャネル
他の言葉と混同して活用しないように、オムニチャネルと他の言葉の違いを確認しておきましょう。
O2O
O2O(Online to Offline)はオンラインからオフラインまたはオフラインからオンラインへと顧客を誘導することを目的としています。
オムニチャネルは、最終的な決定権をユーザーに任せているため、誘導を目的としない点が主な違いです。
マルチチャネル
企業が実店舗やECサイトなど、複数のチャネルを持って顧客にアプローチする戦略のことをマルチチャネルと呼びます。
マルチチャネルは、複数のチャネルを持つ戦略のことであり、オムニチャネルと違って各チャネルが統合されていません。
クロスチャネル
クロスチャネルはマルチチャネルから発生したチャネルを連携させたもののことです。
オムニチャネルと近い意味を持っていますが、オムニチャネルはクロスチャネルをさらに強化して、総合的に質の高い購買体験を実現させることを指しています。
オムニチャネルのメリット
オムニチャネルのメリットは以下の3つです。
• 顧客満足度の上昇
• 顧客分析の簡易化
オムニチャネルを取り入れることでどんな得があるのか確認していきましょう。
オムニチャネルのメリットについてひとつずつ解説していきます。
機会損失の減少
オムニチャネル戦略によって各チャネルを統合すると、システムや情報も統合されるので、在庫管理を適切におこなうことができます。
在庫があるのにお客様に商品が行き届かないなどのトラブルを回避できるようになることが大きなメリットです。
また、消費者が購入まで至らず、代替商品に移ってしまう可能性も減らせるので、機会損失を極力減らせるようになるでしょう。
顧客満足度の上昇
オムニチャネル戦略が実現できれば、実店舗とECサイトとの連携が可能になり、在庫が足りない際はその場でオンラインサイト経由の注文や支払いができます。
店舗に在庫がない場合でも、ユーザーが自ら調べてオンラインサイトで購入する手間を省けるので、顧客側にもメリットが大きいです。
今まで以上にスムーズな購入体験ができるようになるため、満足度の向上が期待できるでしょう。
顧客分析の簡易化
オンラインとオフラインを独立させるのではなく、統合することで、各チャネルごとのデータを採集して活用しやすくなるメリットがあります
総合的な観点からデータを分析できるので、新しいマーケティング手法を生み出しやすくなるでしょう。
オムニチャネル戦略を実行する手順
オムニチャネル戦略を実行する手順は以下の4つです。
2. カスタマージャーニーマップの制作
3. データ連携とシステムのリンク
4. 効果検証
オムニチャネルを取り入れる際は、闇雲に実行するのではなく、具体的な戦略方法の理解から始めることが大切です。
オムニチャネル戦略を実行する手順について順番に解説していきます。
戦略行程を整理する
オムニチャネルを取り入れる際は、まずは戦略の行程を整理することが始めていきましょう。
最終的な到達点を意識しつつ、誰がどこで何を担当するのかについて確認していくことが重要です。
オムニチャネル化を効率的に進めるために、具体的にどんな行動を起こしていくのかを明確にしておいてください。
カスタマージャーニーマップの制作
カスタマージャーニーマップは顧客が購入に至るまでの流れを可視化したものです。
カスタマージャーニーマップができれば、どのタイミングでどんなアプローチをすれば現状を改善できるのか分かるようになります。
製作したカスタマージャーニーマップと現状を見比べて、顧客との関係性がうまく築けていないタッチポイントがあれば改善していきましょう。
データ連携とシステムのリンク
オムニチャネルでは、タッチポイントを統合し、データ連携とシステムをリンクさせていく必要があります。
各チャネルからデータを連携できるようにするためには、それぞれのシステムも合わせる必要があるため、別のものを使っている場合はシステムを変えることもあるでしょう。
顧客にとって便利な購買体験を提供するには、どのチャネルからでも最新かつ同じデータにアクセス可能な状態にすることが大切です。
効果検証
データやシステムの連携が完了した時点でオムニチャネル戦略は終わりではなく、PDCAを回して改善を施していく必要があります。
実際のカスタマージャーニーマップを確認しながら、顧客のニーズの変化なども加味して、戦略のアップデートをしていきましょう。
オムニチャネル戦略のコツ
オムニチャネル戦略のコツは以下の3つです。
• ブランドイメージを崩さない
• チャネルごとの役割をわかりやすくする
それぞれのコツについて解説していきます。
ツールを適切に使う
オムニチャネル化した後に分析を行うには、ツールを効率的に使うことが大切です。
マーケティングオートメーション(MA)を活用すると、SFAで管理されている購入履歴やWeb上の行動履歴を一貫して管理できるようになります。
自社の現状や目標を加味して、適切なツールを選択するようにしてください。
ブランドイメージを崩さない
オムニチャネル化では、店舗やECサイト、SNSなどのチャネルを全てシームレスに繋げる必要があります。
したがって、それぞれのチャネルでブランドイメージを合わせてチャネルの違いをあまり認識させないことが重要です。
ブランドイメージに差異があると顧客も混乱するので、チャネルごとにブランドイメージを変えるのは避けることをおすすめします。
チャネルごとの役割をわかりやすくする
各チャネルごとの役割を明確に決定しておき、総合的に売り上げをアップしていくことが大切です。
それぞれのチャネルの特徴や目的を事前に策定しておき、顧客の取り合いをするのではなく、相乗効果を発揮できるようにしておきましょう。
オムニチャネルの事例
オムニチャネルを活用した事例は以下の3つです。
• 無印良品
• イオン
事例も確認することで、オムニチャネルについての理解がより深まります。
3つの事例について紹介していきます。
セブン&アイ・ホールディングス
セブン&アイ・ホールディングスではオムニ7というネットショップを運営しており、さまざまな商品を購入できるように工夫しています。
セブン旅ネットの旅行予約サービスにも対応可能で、購入した商品を店舗で受け取ることもできるので、便利なサービスとして顧客に活用されていることが特徴です。
画像引用:オムニ7|セブン&アイ・ホールディングス
無印良品
無印良品では、スマホアプリのMUJI passportを活用して、在庫検索やニュースの配信を行なっています。
MUJI passportはポイントカードとしても利用できることから、実店舗に訪れる人も増え、販路拡大に大きく貢献しています。
画像引用: MUJI passport|無印良品
イオン
イオンではイオンお買い物アプリで 撮って!インフォ というサービスをリリースし、チラシやPOPをスキャンしてレシピ情報を取得できるようにしています。
レシピに必要な食材を調べてその場で購入できることから、利便性が高く、多くの顧客に活用されているサービスです。
また、店舗では取り扱いのない商品を検索したり、端末上で発見した商品の代金をそのままレジで支払ったりできるA touch Ru*Runというタブレットも配置しています。
画像引用:イオンお買物アプリ | イオン
まとめ
いかがでしたか?
顧客の購買行動が多様化している現代では、オムニチャネルは重要なマーケティング戦略です。
オンラインとオフラインの各チャネルを統合して、顧客に良質な購買体験をしてもらうことが重要視されています。
オムニチャネルを取り入れると、企業にとっても情報の分析が容易になったり、機会損失を減らせるメリットが存在したりします。
オムニチャネル化を進めるときは、全体的な行程の策定からカスタマージャーニーマップの作成など、順を追っていくことが大切です。
また、実際にデータの連携やシステムの統合ができたとしても終わりではなく、引き続きPDCAを回して適切な状態を維持しつつ、アップデートしていくことも重要になるでしょう。