Web集客やマーケティングに関わらず、ビジネスにおいて「ターゲットへの理解」は必須です。
今回は、ビジネスのターゲットの行動や思考を捉えて施策を明確にする「カスタマージャーニー」について、いま一度振り返ってみたいと思います。
言葉自体は聞いたことがあっても、なかなか実行に移せていなかったり、作成したは良いもののあまり活かせてないという方も多いのではないでしょうか。
また、数年前に作成したカスタマージャーニーと現状に乖離があるため機能しておらず、作り直す必要があるケースも多いです。
そこで、この記事ではカスタマージャーニーの概要から作成する際の注意点、テンプレートのご紹介まで一挙に行います!
マーケティングの戦略策定にお役立てください。
1.カスタマージャーニーとは
1-1.カスタマージャーニーが生まれた背景
1-2.カスタマージャーニーのメリット
1-3.カスタマージャーニーを作成するタイミング
2.カスタマージャーニーの作成方法
2-1.カスタマージャーニーの具体例
2-2.ペルソナの作成が必須
2-3.ペルソナの行動をフェーズ分けし、列挙する
2-4.行動の裏にある思考をリストアップする
2-5.ペルソナの行動パターンを整理する
2-6.ペルソナが抱える課題をピックアップする
3.リスティング広告運用へのメリット
3-1.目的、必要性がより明確になる
3-2.キーワード選定が容易になる
3-3.ランディングページの方向性が見えてくる
3-4.広告のアイデア出しが容易になる
4.カスタマージャーニーが作成できるテンプレート
4-1.ferret
4-2.innova
4-3.experiencefellow
4-4.Lucidchart
5.まとめ
1.カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーとは、直訳すると「顧客の旅」で、顧客が“どのようにして商品やサービスを知り、最終的に購入やリピートをするのか”という一連の流れを指します。
カスタマージャーニーを図式化した表のことを「カスタマージャーニーマップ」とも呼びます。
顧客が商品を認知してから購買するまでの間には、調査、比較といった下調べの行動から、購入の決め手となる要素のとの接触など、複数のプロセスが存在します。
これらを“見える可”するために便利なのが、カスタマージャーニーなのです。
1-1.カスタマージャーニーが生まれた背景
先述のとおり、顧客が商品やサービスを購入するまでには様々な過程があります。
その過程のひとつひとつが、インターネットやデバイスの発展によってより複雑になっているのです。
提唱される消費行動のモデルがAIDMA→AISAS→ULSSASと変容、多様化していることからも現状が伺えます。
AIDMAとは
AIDMAとは、1920年代にアメリカで提唱され始めた、消費行動の一般的なプロセスのモデルです。
その名称の文字は各プロセスの頭文字となっています。
I:Interest(興味)
D:Desire(欲求)
M:Memory(記憶)
A:Action(行動)
新聞やテレビなどのマスメディアで商品を認知し、「欲しい!」と思ったイメージを保持したまま店舗で購入する時代のスタンダードな消費モデルでした。
AISASとは
AISASは、1995年に電通が提唱を始めた、インターネットの普及に合わせた人々の消費行動の過程モデルです。
2005年には同社の商標としても登録されています。
AIDMAと同じく、各プロセスの頭文字を表しています。
I:Interest(興味)
S:Search(検索)
A:Action(行動)
S:Share(共有)
DesireとMemoryがあった位置にSearchが置き換わり、情報収集に検索エンジンを使うことが一般的になりました。
また、Actionの後にShareが追加され、購入後のインターネット上の発信がさらなる認知に影響を持つようになりました。
ULSSASとは
ULSSASは、2019年3月頃に株式会社ホットリンクが提唱し始めた“SNS時代のマーケティングフレームワーク”です。SNS、スマートフォンネイティブ世代が台頭する昨今、インターネットの活用法も大きく変化しています。
例のごとく、以下のプロセスの頭文字を取った単語です。
L:Like(いいね)
S:Search1(SNS検索)
S:Search2(検索エンジンの検索)
A:Action(購入)
S:Spread(拡散)
2つともA→I→D→M→Aというような一方向の「ファネル(ろうと)型」であるのに対して、ULSSASはSpreadされたコンテンツに更にLikeが付き、ユーザー同士のコミュニケーションが循環していきます。
画像参照:SNS時代のマーケティングフレームワーク、「ULSSAS(ウルサス)」とは #ホットリンク
Instagramでの「いいね」の数が表示されなくなるなど、直近でSNSの状況も変化していますが、企業の情報発信だけでなくユーザー起点のコンテンツが重要になるという根幹の考え方はこれからのスタンダードになっていきそうです。
1-2.カスタマージャーニーのメリット
カスタマージャーニーマップを作成することで、得られるメリットは大きく3つです。
施策を検討するための視野が広がる
Web集客やマーケティングの担当者は、業務範囲の関係上「どの広告メニューが良いか」「どんなターゲティング機能を使うか」という“手段”を起点とした施策立案になりがちです。
カスタマージャーニーを用いることで、顧客の行動や思考の文脈から適切な施策を思いつくことができるようになります。
様々な指標をまとめて俯瞰できる
先述のとおり、顧客が認知から購買に至るまでには様々なプロセスが絡み合っていて、マーケティングのチーム内ですら共通の視点を持つことが難しいです。
カスタマージャーニー上では、顧客の「目的」「行動」「接点」「思考・感情」など様々な要素をひとつの表に集約できるため、これらを俯瞰して見ることができるだけでなく、ミーティングやプレゼンに活用することで、認識のすり合わせがシンプルに行えます。
施策立案が容易になる
カスタマージャーニーは、顧客体験の中でも「行動と媒体」にフォーカスします。
どの行動がどの媒体にどのように関係したかを可視化するため、新しい媒体や施策を導入する際にどの行動に影響が出るのかが予測しやすくなります。
1-3.カスタマージャーニーを作成するタイミング
カスタマージャーニーを作成するタイミングは、大きく分けて2つです。
新規商品・サービスの戦略を立案するとき
言わずもがな、これから新たに商材を売っていく戦略を考える際にカスタマージャーニーはほぼ必須と言えます。
ターゲット層の行動や思考とこちらの思惑がずれていた場合、修正に大きな負担がかかることになります。
商品・サービスの規模に変化があったとき
一度作成して終わりではなく、商品・サービスが拡大すれば新しい機能やメリットが増えることもありますし、販促費用が増えれば認知経路も多様化することでしょう。
随時、リアルな顧客体験に合わせてカスタマージャーニーマップの内容を調整する必要があります。
2.カスタマージャーニーの作成方法
カスタマージャーニーの作成方法をご紹介する前に、見本となる事例をいくつか挙げていきます。
2-1.カスタマージャーニーの具体例
世界最大級の民泊プラットフォーム「Airbnb」をイメージしたカスタマージャーニーを見てみましょう。
画像参照:カスタマージャーニーマップを正しく活用するには「おもてなし」と「カスタマーエクスペリエンス」の理解から
上から、6つの要素で構成されています。
- ペルソナ
- フェーズ
- タッチポイント・行動
- 思考
- 感情
- インサイト
これらを書き込んでカスタマージャーニーを完成させるための方法をご紹介していきます。
2-2.ペルソナの作成が必須
カスタマージャーニーを作るには、「ペルソナ」を作る必要があります。
商材のターゲットの定義を書き入れましょう。
例では「友人と2人で海外旅行に行く計画をしている日本人」「旅行先の宿泊先選びに初めてAirbnbを利用する」とあります。
「旅行を計画している人」程度の設定では顧客の行動や思考が読みづらいため、ある程度具体的に定義することが最重要事項です。
2-3.顧客の行動を列挙する
顧客が商材を認知してから購買に至るまでのプロセスを、複数のフェーズに分類します。
例では「宿泊候補を探す」「宿泊先を決める」「宿泊地に行く」「宿泊地を評価」の4つに分類しています。
ゴールを「宿泊地を評価」に設定していることから、サービス体験後のシェアに重きを置いていることが伺えます。
サービスの内容やゴールの位置にもよりますが、細かすぎずまとめすぎずの分類が良いでしょう。
その後、フェーズごとに考えられる顧客の行動をリストアップしていきます。
最初は、とにかく思いつく行動を列挙し、その後どのフェーズに分類されるのかを振り分けましょう。
2-4.行動の裏にある思考をリストアップする
行動の整理が終わったら、フェーズごとに顧客が考えていること、感じていることを挙げていきましょう。
例では、宿泊候補を探すときに「安全なのかな?」「料金はいつ払うの?」などの疑問が生まれると想定しています。
2-5.ペルソナの行動パターンを整理する
分類後、フェーズ内で行動を整理する際に便利な行動記述の3つのパターンをご紹介します。
時間軸がない行動群(Ongoing, non-linear)
目的のために行う、時系列に沿わない複数のプロセスは、円状に記述することでそれを表します。
例では、宿泊候補を探すときに「サイトで候補検索」「友達に相談」「他の利用者のレビューを見る」という3つのアクションを順序を決めずに行っている、という分析をしています。
そしてそれらの情報が十分に収集できたら次のフェーズである「宿泊先を決める」が実行されるのです。
何かが終わって何かが始まる行動(Linear process)
時間軸があり、「Aが終わってBを行う」というような関係の行動は、シンプルに直線でつなぎます。
例の、宿泊先を決める際には「複数のオーナーとやり取り」を経て、「宿泊先決定」に至ります。
時間軸がある行動群(Non-linear, but time based)
時間軸がある行動が3つ以上存在する場合、曲線でつなぎましょう。
今回の例では曲線を用いてませんが、「宿泊先に行く」「宿泊地を評価」内の行動は「時間軸がある行動群」と呼ぶことが出来ます。
行動パターンを活用した事例
以下のカスタマージャーニーマップは、『新規事業を創出できる人材を獲得すること』を目的として作られています。
画像参照:2時間で作るカスタマージャーニーマップ――実例とともに考える新しい「おもてなし」のカタチ
行動の数が多く関係性も複雑ですが、3つのパターンをうまく使い分けることで可視化に成功しています。
2-6.ペルソナが抱える課題をピックアップする
最後に、顧客が購入に至るまでにぶつかるであろう課題を挙げましょう。
行動に合わせて、感情(≒モチベーション)のグラフを書き入れると課題の重要度がより明確に見えてきます。
そして、それらを解決できる視点を「インサイト」部分に書き込みます。
以上、6つのステップでカスタマージャーニーマップの完成です。
繰り返しになりますが、カスタマージャーニーを作成するだけでは意味がなく、それをもとに施策立案へ役立てるなど、目的を明確に持ちましょう。
3.リスティング広告運用へのメリット
カスタマージャーニーを作成することによる、リスティング広告の運用にもたらされるメリットを挙げていきます。
筆者の考えになりますが、ご参考になれば幸いです。
3-1.目的、必要性がより明確になる
前提として、リスティング広告はコストがかかるものです。
「Web集客の手段のひとつ」というような荒い粒度で広告を始めてしまうと、目的や、目標のCPAなどもブレてしまい積極的な投資ができなくなってしまうケースが散見されます。
カスタマージャーニーを設定することで、リスティング広告で集客したい層がどの段階のユーザー層なのか、コンバージョンから購入までどれほどの距離があるのかが明確になることで、“そもそもコストをかけてリスティング広告に投資する意味”を明確にすることができます。
マーケティング全体の中でのリスティング広告の立ち位置が明確になることで、運用も円滑になるでしょう。
3-2.キーワード選定が容易になる
カスタマージャーニーを作成することで、見込み顧客によるフェーズごとの行動・思考を想定できるため、検索クエリを予測しやすくなります。
顧客の行動を整理することで、新たなキーワードの発見があるかもしれません。
3-3.ランディングページの方向性が見えてくる
ランディングページの作成の重要なポイントのひとつに「ストーリー構成」があります。
- どんな人が
- 何に悩んでいて
- 商品・サービスはそれをどう解決するのか
以上の3点はマストで掘り下げるべきポイントですが、カスタマージャーニーを参照することでこれらの具体性がぐっと上がります。
3-4.広告のアイデア出しが容易になる
カスタマージャーニーを作成することで、ペルソナ像と、その行動や思考のルートが明確になっているため、広告テキストやバナーのキャッチコピーなどのアイデア出しが容易になります。
広告クリエイティブは定期的に検証を続けたり、商材を取り巻く環境の変化によっても差し替えていく必要があります。
詳細なカスタマージャーニーがあれば検証の“弾数”を多く持っておくことができ、効果も改善しやすい印象があります。
4.カスタマージャーニーが作成できるテンプレート
カスタマージャーニーはアイデア出しが重要なため大きな紙を広げてチームでアナログに作業を行うのが良いのでが、オンラインでの作成をサポートするツールやテンプレートもあります。
今回は4つご紹介します。
4-1.ferret
マーケティングメディアとして名高いferretでは、以下の記事からカスタマージャーニーマップのテンプレートがパワーポイント形式でダウンロードできます。
カスタマージャーニーマップとは【無料テンプレート付】〜知っておきたい基礎知識
※ダウンロードには会員登録(無料)が必要です
4-2.innova
オウンドメディア支援を行う株式会社イノーバが運営するメディアでも、カスタマージャーニーマップのテンプレートをパワーポイント形式でダウンロードできます。
カスタマージャーニーマップ テンプレート
※ダウンロードに際して個人情報の入力が必要です
4-3.experiencefellow
experiencefellowは、オーストリアの企業が提供するカスタマージャーニーの自動生成ツールです。
テンプレートに情報を入力することでカスタマージャーニーマップが自動生成されるだけでなく、ユーザー調査のデータとの突合ができる点が特徴です。
ユーザーの生の声をカスタマージャーニーに組み込むことで、より現場感覚を反映した施策の立案、実行が期待できます。
外部による解説記事は存在しますが、日本語版インターフェースが存在しておらず扱いづらいのがデメリットです。
また、月額はミニマムプランで1,000円とリーズナブルな設定になっています。
4-4.Lucidchart
ビジネスワークフレーム作成ツールのLucidchartには、カスタマージャーニーにも対応しています。
カスタマージャーニーのみならず、様々なマーケティングフレームに対応しているため、便利です。
有料版も存在しますが、会員登録することで無料版を利用できます。
参照:Lucidchart
5.まとめ
カスタマージャーニーを設定することで、マーケティング全体はもちろん、手段としてのリスティング広告の目的意識も明確になり、適切な目標が設定しやすくなることを説明しました。
皆さんも今一度、担当商材のカスタマージャーニーを見直してみてはいかがでしょうか。
運用だけではなく、マーケティングや広告全体の戦略策定レベルから支援を必要としている方は、インフィニティエージェントまで一度ご相談ください。