自社のマーケティングやプロモーション施策を考える上で、ターゲティングの設定は重要です。ターゲティング設定には、男女の価値観の違いも重要な指標となります。
例として20代女性と50代男性では当然ながら心理や行動傾向が異なりますよね。
これは、同じ年代だとしても女性と男性では価値観が変わってくるため、それぞれの消費行動をふまえてアプローチすることが求められますが、このような男女の価値観の違いをマーケティングに落とし込んだ理論は、プリンセスマーケティングと呼ばれています。
今回は、プリンセスマーケティングの基本的な概要から、押さえておくべきポイントを中心に紹介していきます。
プリンセスマーケティングとは?
画像引用:プリンセス・マーケティング 「女性」の購買意欲をかき立てる7つの大原則 | 谷本 理恵子 |本 | 通販 | Amazon
そもそもプリンセスマーケティングとは、男女の価値観の違いなどについて、消費行動などをもとに比較しながら分析するマーケティング手法のことを指します。
コピーライターなどとしても活躍している谷本理恵子氏が、「プリンセス・マーケティング 「女性」の購買意欲をかき立てる 7つの大原則」という著書とともに提唱された理論です。
マーケティングにおいてターゲットの明確化は欠かせません。
このターゲティング設定を行う上で、年齢や地域といったユーザー属性だけでなく、過去の購入履歴や閲覧履歴といった行動を参考にするケースは多くあります。
これに対しプリンセスマーケティングでは、そこに男女の心理状態の違いを加え、消費行動を分析することで精度を高めます。
特に、女性特有の心理や考え方に焦点を当て、女性向けのマーケティング施策をより可視化することで、プロモーション効果を高めることが期待されています。
プリンセスマーケティングで押さえておくべきポイント
プリンセスマーケティングにおいて重要視している考え方は以下となります。
①求めるストーリーに関する違い
消費行動に関するストーリーは、男女間では少々異なります。
例えば、男性の場合には失敗や経験を重ねながら成長していくヒーロー的なストーリーが好まれますが、これに対して女性では新しい世界で自分らしく生きていくプリンセスストーリーが好まれる傾向にあります。
そのため、女性向けに失敗や挫折、困難を乗り越えるストーリーを訴えても響かず、自分らしく輝く未来をアピールした方が効果的となります。
②登場人物の設定に関する違い
男女間では登場人物の設定も異なります。
マーケティングやプロモーション施策の中では、商材やサービスを訴求することで、ターゲットとなるユーザーがどう変わるかを示すベネフィットが欠かせません。
このベネフィットに対する感じ方も男女間では異なり、それが登場人物における設定にも影響してきます。
例えば、男性はベネフィットによって成長を感じますが、女性はこれまでと違う自分に生まれ変わることを感じる傾向にあります。
仮にファッション通販の商材を取り扱っている場合、男性には「できるビジネスマンに見える服」の方が響きやすいが、女性には「新しい自分が見つかる服」の方が効果に繋がりやすくなります。
このように、ユーザー属性に加えて登場人物の設定をペルソナ分析に落とし込むことで、ターゲティング精度を高めることが期待できます。
③モチベーションの違い
モチベーションに関連する心理状態も男女間では異なります。
男性は、社会的なステータスや権威性を好む傾向にありますが、女性は自分自身の満足感を求め、モチベーションとする傾向にあります。
例えば、モテるという考えは男性に強く、女性は男性にモテるためといったモチベーションで商材やサービスを選ぶことはあまりありません。
あくまで自分のためという要素が消費行動にも表れるため、客観的な指標よりも主観的かつ自分事として認識させることが求められます。
④意思決定の違い
男性と女性では、最終的なコンバージョンに至る意思決定にも違いが存在します。
一般的に男性は情報収集や比較検討を重ね、十分吟味した上で購入や申し込みに至る傾向にあります。
これに対して女性は、とりあえず試してみようという考えに至る傾向が強く、衝動買いを行うケースも多くあります。
まず試してみるという心理は、実際のマーケティングにも活用されており、化粧品やコスメ商材などに試供品が多く用意されているのは、女性特有の心理状態を意識したアプローチといえます。
⑤評価方法の違い
商材やサービスを購入・申し込みするにあたって、評価の方法も男女間では異なります。
男性は、比較検討していく上で加点法を活用するのに対し、女性の場合には減点法が重要視されています。
また、このような評価の判別には、機能面を重視する男性に対して女性は感覚や共感できるイメージを重視する傾向にもあります。
例えば、同じ化粧品であっても、男性の場合には「〇〇の成分が20%配合」や「容量500ml」といった機能や効能など信用できる数値などを重要視する傾向にあります。
これに対して女性の場合には、「肌に馴染む」「潤いが続く」などの感覚的な表現の方が響きやすくなります。
キャッチコピーは広告・プロモーション施策において重要になります。
⑥周囲との関係性の違い
男女間では周囲との関係性の築き方に関しても違いが存在します。
男性は同じ仲間であってもライバルと感じる縦の関係性を重視する傾向にありますが、女性の場合、横の関係性を重視し、価値観を仲間どうしで共有する傾向があります。
そのため、「ライバルに負けないように」「周りに差をつける」といった表現は、男性には響くものの女性には響きにくくなります。
また、上記のような表現は、女性から見ると「上から目線」と捉えられ、マイナス影響に繋がる可能性もあります。
女性の場合遠回しの表現になるケースもありますが、「私たち」「みんな」といった横を意識したアプローチを行うことが重要です。
⑦未来に関する違い
未来に対する考え方も男女間で異なります。広告のキャッチコピーやベネフィットに関連して、商材やサービスを活用した後の未来を訴求するケースは少なくありません。
ただ、この訴求に関してもアプローチ方法を間違えると効果を高めることには繋がりません。
例えば、男性は根拠のない自信を持っているケースが多いため、成功体験をもとにした訴求であれば効果に繋がりやすくなります。
一方で女性は自信が無く失敗を恐れる傾向にあるため、失敗に対する不安を徐々に埋めていくようなアプローチの方が効果的です。
このような解釈の違いも男女間で異なるため、心理状態とあわせ押さえておくことが重要です。
プリンセスマーケティングの活用事例
続いて、プリンセスマーケティングの活用事例について紹介していきます。
化粧品メーカーである株式会社アルビオンは、「本当の“ジブンらしさ”診断」という診断コンテンツをWeb上で展開しました。
フラルネというスキンケア商品のプロモーション施策の一環として行われましたが、女性向けのデザインと分かりやすいコンテンツによって多くのユーザーにアプローチすることができました。
特に、タイプごとに診断結果が表示されることで、ユーザーが自分事と捉えやすくなり、プリンセスマーケティングが効果的に実施された事例となります。
また、診断後には化粧品が貰えるキャンペーンも行い、試してみたい女性の心理を突くことでシェアを拡大させることもできています。
プリンセスマーケティングを活用する上での注意点
これから自社のマーケティングやプロモーション施策に活用する際には、以下の点を考慮しておくと効果的です。
①女性向けのマーケティングに活用する
プリンセスマーケティングは、男女間での比較をもとに女性の消費行動を可視化するマーケティング手法となります。
自社の商材やサービスが明確に女性向けとターゲティング設定できるのであればまだしも、男女の区別が無ければ実施するには注意が必要です。
また、プリンセスマーケティングはユーザーの心理状態を経験にもとづいて体系化した手法となり、数値やデータによる裏付けがある訳ではありません。
あくまで多くの女性にはこのような性格や傾向が見られるとされていますが、一概に全ての女性に当てはまるわけではありません。
②短絡的な決めつけは控える
プリンセスマーケティングによって可視化する女性の消費行動は、あくまでマーケティングにおける指標の一つとなります。
例えば、女性の中にも社会的なステータスを求め、成功を追求する心理を持つ方は多くいます。
短絡的な決めつけは、間違ったターゲティング設定に繋がりマイナスに作用する場合もあります。
近年では多様性を重要視し、男女の二択ではなく様々な考えや行動が尊重されてきています。
プリンセスマーケティングによる可視化は、一歩間違えればレッテル貼りとしてチーム内で不快感を与えてしまう可能性もあります。あくまでマーケティング理論の一つとして捉え、適切に活用していくことが重要です。
③「プリンセスマーケティング」は商標名登録されている
最後に、プリンセスマーケティングというワードは、谷本理恵子氏によって商標名登録されています。
マーケティング理論として自社の運用に役立てていくことは問題ありませんが、その他の利用に際しては法的リスクもあるため注意が必要です。
まとめ
プリンセスマーケティングは、男女の消費行動における違いに着目し、可視化することでターゲティング精度を高めることが可能です。
多様性が進む昨今においても、男女の行動や心理状態による違いはまだまだ存在するため、ポイントを押さえマーケティングに活用することで費用対効果を高めることも期待できます。
今回紹介した内容も参考に、男女における心理状態を正しく理解し、日々のマーケティング活動に役立てていきましょう。