近年、マーケティング戦略を行う上で、グロースハックという概念が注目を集めています。
アメリカではFacebookやAmazon、Microsoftといった大手を中心に、自社の事業拡大を図る上でこのグロースハックの概念を取り入れており、日本においてもグロースハックを取り入れ事業の成長に繋げる動きが加速化しつつあります。
実際に、「グロースハックって何?」「グロースハックにはどういったメリットがあるの?」「グロースハックの進め方が分からない」などといった声も多々あります。
そこで今回は、グロースハックの基本的な概要からメリット、成功に導くコツなどについてポイントを中心に紹介していきます。
グロースハックとは?
そもそもグロースハック(growth hack)とは、2010年にアメリカのQualaroo社のCEOでもあったショーン・エリス氏が提唱した概念となります。
英語で成長を意味する「Growth」と、プログラムの記述を表す「Hack」を掛け合わせた造語で、自社の商材やサービスを成長させるため、数値やデータを集めながら改善していくマーケティング手法のことを指します。
自社の商材やサービスの改善のためには、使用ユーザーの属性や声、継続率など様々な数値・データを客観的に分析していく必要があります。
この結果、問題点や改善要素が可視化でき、それをもとに仮説を立てながらブラッシュアップしていくことで、ユーザビリティの向上をはじめ商材やサービスの成長に繋げることが期待できます。
このような一連の流れを開発とマーケティングなど一体となって展開することを重要とした概念が、グロースハックとなります。
グロースハックが重要視される背景
グロースハックが重要視される背景には、様々なビジネス要素の変化が挙げられます。
近年ですが、インターネット技術の発展に伴い、ユーザーの価値観や行動変容は多様化し、ブームやトレンドといった流行の短期化も進んでいます。
このような市場の変化が加速化する中にあって、自社の商材やサービスも日々成長させていかなければ競合他社との優位性を維持できず、シェアを奪われる可能性も起こり得ます。
また、時代の流れやニーズに適応していくためには、よりスピーディー且つ効率的な成長が求められます。
技術の発展によりビックデータを活用したマーケティングも一般化しています。
より客観的且つ効率的にブラッシュアップしていく上で、グロースハックの手法を効果的に活用することができます。
時代の変化に対応したマーケティングを進めるためにも、グロースハックの概念は自社のビジネスを成長に繋げる上で期待できます。
従来のマーケティングとの違い
グロースハックの概念は、広義の意味ではマーケティング領域に含まれます。
ただ、従来のマーケティングとは異なる要素もあります。基本的に従来のマーケティングの概念では、商材やサービスをどう販売していくかに特化した傾向にありました。
いかに効率よく効果的に売上増加に繋げるかに重点を置き、広告手法や顧客育成といった点に終始する傾向にありましたが、グロースハックの概念では、商材やサービスの開発段階も含めて検討する考え方となります。
開発後には販売だけ注力すればいいという意識とは異なり、売上増加や利益拡大を図るためには開発も含めブラッシュアップしていく必要があるという点が、従来のマーケティングと異なる点となります。
グロースハックを実施するメリット
続いて、グロースハックを実施するメリットについて紹介していきます。
グロースハックを取り入れることで、以下の効果が期待できます。
①効率的な事業の成長
数値やデータをもとに客観的な視点で効果検証、改善に繋げていくグロースハックは、自社の商材やサービスをはじめ事業を効率的に成長に繋げることが期待できます。
闇雲に商材を改善したり、自社内の意見だけによるサービスの効果検証では効果的な成長には繋がりません。
その点、グロースハックであれば根拠をもとに検証から改善に繋げることができるため、無駄な工数を極力減らし、効率化を図ることが可能です。
また、マーケティング施策とあわせトータルで検証できれば、余計なコストが発生することもなく、費用を抑えながら事業を成長に導くことも期待できます。
②商材やサービスの質の向上
事業の成長、売上増加や利益拡大に繋げるためには、自社の商材やサービスの質やクオリティの向上が求められます。
ただ、マーケティングに注力しすぎるあまり、開発環境に力を入れられないケースは少なくありません。
グロースハックでは、開発から販売までを一連の流れとして捉え、検証・改善していくことができるため、数値やデータ、ユーザーの声などを活かして質の向上に繋げることも可能です。
顧客ユーザーの本質的な悩みや課題、不安などのニーズを汲み取り、商材やサービスに活かすことができれば、その分だけ売上増加にもつなげやすくなります。
このサイクルを早くし、競合他社に無い優位性を確立させる上でもグロースハックの概念は有効活用することができます。
③マーケティング精度の向上
グロースハックによる開発から販促までの強化は、結果的にマーケティング精度の向上にも繋がります。
商材やサービスの課題を可視化し、ユーザーニーズを明確化できれば、自ずとマーケティングすべき手法も確立できます。
様々なニーズに対して的確なアプローチができれば、コンバージョン獲得にもつなげやすくなり、売上増加も期待できます。
また、コンバージョン後のユーザー行動も明確化できれば、ファン化にもなり中長期的な成長や利益拡大も期待できます。
グロースハックの効果的な進め方
次に、グロースハックの効果的な進め方について紹介していきます。具体的な手順は以下となります。
①商材やサービスの開発
まず、事業を開始するにあたって商材やサービスの開発を行います。
目的や目標、ターゲットを明確化するとともに、市場ニーズや顧客の悩みを解決できる商材やサービスを開発していくことが求められます。
②現状分析や課題の洗い出し
開発を成功させるためには、市場調査や競合分析などを行う必要があります。数値やデータをもとに情報を取集し、現状の課題や問題点を洗い出していきます。
③現状をふまえた仮説立て
ある程度の分析データや課題などの情報が集まれば、それをもとにマーケティングに繋げるための仮説を立てていきます。
漠然とした仮説や現実離れしたものは、その後の実践や検証においてマイナスに作用する可能性もあるため、客観的な視点にて根拠にもとづく現実的な仮説を立てることが重要です。
④実践と検証
仮説が立てられれば、その仮説にもとづいて実践していきます。実践には広告費などのコストも発生します。いきなりMAXで実践するのではなく、小規模でテスト的に実践することも効果的です。
実践後には数値やデータをもとに検証し、この検証においても客観的に効果を見ていく必要があります。
⑤見直しと改善
効果検証した結果は、数値やデータをもとに見直しを図り、改善に繋げていきます。商材の使用感などは数値やデータで図れない場合も多々あります。
そのような場合には、ユーザーにアンケートやヒアリングを行いながら、肌感を確認し改善に繋げていくと効果的です。
その後、また①の開発工程に戻りブラッシュアップしていきます。
この一連の流れをスピーディー且つ効率的に回していくことが重要です。
グロースハックの成功事例
続いて、グロースハックの成功事例について紹介していきます。
冒頭でふれたFacebookやAmazon、Microsoftをはじめ多くの企業がグロースハックを取り入れています。
その中でも成功に至った事例をピックアップの上で紹介していきます。
①アップロア社の事例
オンラインゲームを提供するアップロア社は、サイトの運営者に対して、アップロア社の無料ゲームをサイトにアップロードしてくれたら50セント支払うという提案をしたところ、多くのサイトに掲載され、自社のゲームの認知度拡大に繋がりました。
グロースハックの手法を用いて、サイト側と自社、そしてユーザーの3者がWin-Winとなる仕組みを活用したことで成功に至っています。
このアップロア社は、グロースハックの提唱者であるショーン・エリス氏がもともと勤務していた会社で、この結果グロースハックの概念が世に広まるきっかけにもなりました。
②ドロップボックス社の事例
オンラインストレージサービスを展開するドロップボックス社も、グロースハックを活用して利用者の拡大に繋がりました。
ユーザーの伸び率が頭打ちになっている状況を打破するため、グロースハックをもとに顧客分析を行いました。
そうすると、利用者の多くが他の利用者からの紹介であることに気が付き、紹介キャンペーンを行うことで60%の新規ユーザーの獲得に繋がりました。
さらに、サービスの改善を定期的に行い、継続率を高めていくことで、当初10万人だったユーザー数を400万人まで伸ばすことに成功しました。
グロースハックを成功に導くコツ
最後にグロースハックを成功に導くコツについて紹介していきます。
これからグロースハックの実践を検討している場合には、以下の点をおさえておくと効果的です。
①PDCAサイクルの活用
グロースハックを成功に導くためには、徹底的なPDCAサイクルの活用が欠かせません。
PDCAサイクルとは、Plan(計画)>Do(実行)>Check(評価)>Action(改善)の頭文字を取った言葉で、この流れに沿って実践していくことで効率的にグロースハックを展開していくことが可能です。
それぞれの工程ごとに仮説を立て、数値やデータをもとに客観的な視点で分析・実行していくことが重要です。
②定期的な仮説の見直し
グロースハックの中で仮説は重要な意味を持ちます。
この仮説は、あくまで仮説であるため間違いが生じるケースもあります。仮説自体も定期的に見直し、状況に応じた最適な仮説を立てていくことが重要です。
③精度とスピードにこだわる
グロースハックを成功に導く上で、客観的な数値・データの分析は重要です。この精度が高くなればなるほど開発や販促の面で効果に繋がりやすくなります。
とはいえ、精度の向上には時間を要す場合もあり、ユーザーの声を聞こうとアンケートを行うと、数を集めることや集計に数ヶ月かかるケースも起こり得ます。
ただ、一方でグロースハックの成功にはスピードも求められます。
時間がかかりすぎると競合他社に市場を奪われてしまう可能性も高まるため、精度にこだわる一方で、スピーディーな対応も心掛けておくと効果的です。
まとめ
近年のIT技術の発展、それに伴うユーザー行動の多様化、ビックデータの活用などによって、マーケティングを成功に導くためにグロースハックの概念が重要視されています。
PDCAサイクルをもとに開発から販促までの一連の流れを効率化できれば、よりスピーディーに商材やサービスの改善に繋がり、売上増加や利益拡大も期待できます。
今回紹介した内容も参考に、グロースハックの手法を取り入れながら、効果的な自社のマーケティング活動に繋げていきましょう。