ユーザー行動の多様化をはじめ、ブームやトレンドといった流行の短期化が進む昨今において、市場や競合他社の動向をもとに自社の商材やサービスを常にブラッシュアップしていくことは重要です。
商材やサービスの価値に差がなくなることは、コモディティ化といわれ、市場がにぎわうとともに起こりうる事象でもあります。
今回は、コモディティ化の基本的な概要から、原因やビジネスにおける影響、対応策などについてポイントを中心に紹介していきます。
コモディティ化とは?
そもそもコモディティ化とは、自社に関する類似品や類似サービスなどが競合他社によって多く登場し、市場における商材やサービスの違いがなくなる状況のことを指します。
強みや特徴といった違いがなくなれば、ユーザーからどの商品を買っても同じと判断され、価格競争に発展する傾向に陥ります。
そのため、新たに差別化する特徴を生み出さない限り、価格を下げることしか優位性を保つことができず、売上や利益に大きな影響を及ぼします。
コモディティ化の例
現在、BtoCやBtoBにかかわらずコモディティ化の事象は存在します。
それぞれの例について紹介していきます。
① BtoCにおけるコモディティ化の例
BtoCの例でいうと、牛丼屋はコモディティ化が進んでいます。
チェーン店化が進み、安く食べられる代表格として牛丼屋は重宝されていますが、味や量など多少の違いはあれど、価格競争に追い込まれています。
また、近年コンビニエンスストアでセルフのコーヒー販売が注目されましたが、現在ではコンビニ各社がコーヒーを提供するようになり、これもコモディティ化が進んでいます。
② BtoBにおけるコモディティ化の例
IT技術の発展に伴い、BtoB向けのシステムやソリューションツールなどは常に開発・販売されています。
とはいえ、このようなBtoBサービスであってもコモディティ化に陥るケースも存在します。
例えば、CRMやマーケティングオートメーションツールなどは、各社様々なサービスを展開しています。
ただ、基本的な顧客管理やメール配信などの機能は特に変わらないため、最終的には価格による判断になるケースも多く、コモディティ化が進んでいます。
コモディティ化の原因とは?
このようなコモディティ化が起こる原因には、様々な要素が考えられます。
① 商材の供給過多
商材やサービスが市場に多すぎると、コモディティ化につながる可能性が高まります。
ユーザーのニーズに対応したり、市場における優位性を得るためには、既にある商材やサービスを真似て開発するケースが少なくありません。
このような場合には、人気の商材やサービスに似たものが多くなり、結果的に供給過多に陥ります。
独自性や優位性を生み出そうとしても、一定のクオリティから更に付加価値を追加することは難しい場合も多々あります。
そのため、コモディティ化につながる傾向が高くなります。
② 企業の技術力の向上
従来のビジネスシーンにおいて、市場における優位性を担保するような商材やサービスを開発できる企業は、大手を中心に限られていました。
そのため、「この商材はA社だからこそ作れる」「このサービスはB社ならではだ」といった傾向が一般的でした。
ところが、現在では企業の技術力も向上し、中小企業であっても一定の品質を担保した商材やサービスを開発・展開できるようになりました。
そのため、類似品や類似サービスが増え、コモディティ化が進む原因にもなっています。
③ 商品のモジュール化
モジュール化とは、商材における部品やサービスの要素などが規格化されたものを指します。
開発にかかるコストや工数を効率化させ、パッケージやテンプレートのように展開する手法のことを意味します。
このようなモジュール化によって、リソースやコストの効率化を図ることは可能ですが、一方でパッケージやテンプレートを活用した商材・サービスは類似しやすく、コモディティ化の原因につながっています。
④ 低価格な海外からの輸入品
グローバル化が進む昨今において、海外企業の存在もコモディティ化の原因となっています。
従来の日本独自の精巧さやおもてなしのような強みは、商材やサービスによっては効果が薄くなるケースも存在します。
また、海外で開発・製造されている商材やサービスは、コストを抑えて販売価格を下げることも可能です。
そのため、類似品でクオリティが遜色ないのであれば、海外からの輸入品を好む傾向も高く、結果としてコモディティ化につながることも多々あります。
⑤ 容易な情報収集
最後に、インターネットの普及に伴う容易な情報収集もコモディティ化を引き起こす原因になっています。
スマートフォンをはじめ情報化社会が進む昨今において、必要な情報はネットからすぐに入手することが可能です。
これは企業側にとっても、競合他社の動向を注視し、新商品や新たなサービスのリリースがあれば、すぐに対抗策を取る傾向も高く、コモディティ化が進む原因にもつながっています。
コモディティ化による影響
自社の商材やサービスがコモディティ化に陥ると、以下のような影響につながる可能性が高まります。
① 価格競争の激化
コモディティ化が進むと、商材やサービスにおける独自性や優位性が弱まるため、価格競争が激化してしまいます。
販売価格は、自社の利益を加味して設定されており、これを下げることは単純に利益が減ることにつながります。
部品単価やサービス提供までの工数削減など、利益を維持しつつコストをカットしていくことも可能ですが、これには限界も生じます。
また、部品や工数のカットによって商材やサービス自体のクオリティが下がる可能性も起こり得ます。
品質やクオリティが低ければ、価格を下げたとしても売上減少につながる可能性もあります。
また、売上が期待できなければ当然ながらマーケティングや広告・プロモーションにかけられる予算も減少します。
このように、コモディティ化による価格競争の激化は、負のスパイラルに陥ることで最終的に撤退せざるを得なくなるリスクも生じてきます。
② 消費者にとっては利便性が高くなる
コモディティ化による影響は、マイナス面だけではありません。
消費者にとっては利便性が高くなるといった利点も考えられます。
例えば、多くの企業が同様の商材やサービスに着手してコモディティ化につながれば、価格競争といった経営上のリスクは生じるものの、その中から新たな独自性や優位性が生まれる可能性も高まります。
例えば、スマートフォンの普及は、従来のフューチャーフォンから脱却し、グローバル社会における市場の開拓につながったともいえます。
このような競争力の強化は新たなビジネスチャンスにもつながり、結果的にそれを扱うユーザーにとっては利便性が高まる好循環が期待できます。
コモディティ化の対応策とは?
コモディティ化に陥ると、価格競争につながり売上や利益に影響を及ぼします。
ただ、企業としてはそのまま価格競争に巻き込まれるだけではなく、そこをチャンスと捉え対応策を講じていくことが重要です。
① 商材以外の付加価値で差別化を図る
コモディティ化における一番の対応策は、商材やサービスに新たな付加価値をつけ、競合他社に負けない差別化を図ることにあります。
どれだけ似通った商材や類似サービスだとしても、少しの付加価値で他社にはない独自性や優位性を生み出すことも可能です。
あらためて自社の特徴や強みなどを可視化し、ユーザーニーズと照らし合わせながら負荷すべき価値を見出すことが重要です。
② 消費者の特徴を理解する
差別化を図るためには、消費者の特徴を理解することも欠かせません。
ユーザー行動の多様化や、ブームやトレンドといった流行の短期化が進む昨今において、ユーザーニーズは日々変わっていきます。
このような傾向は、いち早くユーザー心理をくみ取り、商材やサービスに活用していくことでコモディティ化から脱却させることも期待できます。
アンケートなどをもとにユーザーの声を収集するとともに、定期的にヒアリングを行い、悩みや不安、要望といったニーズを可視化していくと効果的です。
③ 購入までのプロセスに目を向ける
また、購入までのプロセスを可視化し、マーケティングや広告・プロモーション施策を見直していくことも、コモディティ化の対応策として効果的です。
例えば、店頭販売からオンライン上のECに切り替えることで、新たな顧客層の開拓につながり、価格競争から脱却できる可能性もあります。
国内ではなく海外に目を向け、同様の商材やサービスをグローバル展開したところ、売上増加や利益拡大につながったケースも少なくありません。
このように、自社の商材やサービスに対し付加価値をつけなくても、販売ルートやプロセスを見直すことで、新たなマーケットに対して展開し、コモディティ化に対応することも効果的です。
まとめ
市場の活性化や企業技術の向上、グローバル化、IT化に伴う情報収集の速さなどによって、業種業態問わずコモディティ化が注目されています。
コモディティ化が進むと、消費者の利便性は高まるものの、企業としては価格競争に追い込まれ、売上や利益に大きな影響を及ぼします。
このようなコモディティ化から脱却するためには、いかに自社の商材やサービスに独自性や優位性といった付加価値をつけられるかが求められます。
今回紹介した内容も参考に、コモディティ化に関する理解を高め、マーケティングやプロモーション施策に活かしていきましょう。