新規と既存の顧客に応じたアプローチを行う上で、1:5の法則と呼ばれるマーケティング理論が存在します。
これは、業種業態問わず新規顧客の獲得にかかるコストが、既存顧客の維持よりも5倍労力がかかることを意味しています。
この法則を理解し、日々のマーケティング活動に活かすことで効果的な戦略立案につなげることが可能になります。
今回は、1:5の法則における基本的な概要からマーケティングに活用すべきコツなどについてポイントを中心に紹介していきます。
1:5の法則とは?
1:5の法則とは、新規顧客の獲得にかかるコストは、既存顧客よりも5倍労力がかかるということを表すマーケティング理論です。
自社の売上増加を図るためには、既存顧客へのアプローチだけでなく新規顧客の獲得にも努めなければなりません。
とはいえ、新規顧客を獲得するためには、商品やサービスを認知してもらい、興味関心を高めなければコンバージョン獲得にはつながりません。
一方で既存顧客は、商品やサービスを認知しているため、新商品の販売や既存サービスのアップセルやクロスセルなどにつなげやすい特徴があります。
1:5の法則では、このようなターゲットにおけるアプローチの違いを表すことで、マーケティング戦略につなげやすくなります。
5:25の法則
また、1:5の法則に近しいものとして、5:25の法則と呼ばれるものも存在します。
これは、顧客の離脱を5%改善すれば、利益が25%改善することを表すマーケティング理論です。
一度顧客につながったユーザーは、ずっと自社のファンでいるとは限りません。
購入後のサポートやファン化につなげなければ、他社に離脱してしまう可能性も高まります。
売上増加を図るためには、新規顧客の獲得だけでなく既存顧客の維持にも努める必要があります。
そのため、1:5の法則と合わせ5:25の法則も活用し、離脱防止にも意識を向けることが重要です。
新規顧客を獲得することの重要性
1:5の法則と5:25の法則は、ともにアメリカのフレデリック・F・ライクヘルドによって提唱された理論となります。
ライクヘルドは、コンサルティング会社のBain & Company社に勤める中で、顧客のロイヤリティについて着目し、企業に対する信頼性や愛着度などとあわせ生涯価値を算出する上でこの理論を導き出しています。
1:5の法則は、自社のマーケティング戦略を立てる上で効果的に活用することが可能です。
売上増加を図るためには、新規顧客の獲得は欠かせません。
とはいえ闇雲に実施しても労力だけがかかり、無駄に終わってしまうケースも少なくありません。
そのため、あらかじめユーザー心理を把握するとともに、戦略的なマーケティングにつなげることが重要です。
特に、近年ではユーザー行動の多様化や流行の短期化が進み、1:5の理論以上に新規顧客の獲得にはコストや労力がかかる場合もあります。
そのため、中長期的な視点にて新規顧客と既存顧客に対しバランスよくアプローチしていくと効果的です。
新規顧客獲得の代表的なアプローチ手法
続いて、新規顧客獲得の代表的なアプローチ手法について紹介していきます。
新規顧客の獲得には、主にプッシュ型とプル型の営業方法に分類されます。
それぞれについて紹介していきます。
① プッシュ型営業
プッシュ型の営業アプローチとは、企業側から主導的に訴求を行う方法のことを指します。
テレビなどのマスメディアにおける広告や、メルマガの発信などが挙げられます。
また、営業がテレアポを行ったり、訪問販売など飛び込みでアプローチすることもプッシュ型に含まれます。
短期的に認知を高めたり、売上の即効性を高める上では効果が期待できますが、アプローチ手法や営業担当のスキルなどに依存もするため、自社の体制や予算、リソースなどをふまえ展開することが重要です。
② プル型営業
これに対してプル型の営業アプローチとは、ユーザーの心理や行動などをもとに能動的にアプローチする方法のことを指します。
代表的な手法としては、検索キーワードに応じたリスティング広告や、SNSなどでの運用型広告などが挙げられます。
また、展示会やセミナーなどを開催し、興味を示して集まったユーザーに対して営業を行う手法も、プル型営業には含まれます。
プル型営業は、興味を示したユーザーに対してアプローチするため、コンバージョン獲得につなげやすい特徴があります。
プッシュ型に比べて運用コストを抑えることも可能なため、費用対効果を高め効率的に売上増加につなげることが期待できます。
1:5の法則をマーケティングに活用する方法
次に、1:5の法則をマーケティングに活用する方法について紹介していきます。
新規顧客の獲得は、既存顧客へのアプローチよりも労力がかかります。
そのため、以下の手順を参考に効率的にマーケティング活動を進めることが重要です。
① 目的をふまえたターゲットの精査
まず、目的をふまえアプローチ先のターゲットを精査することが重要です。
新規顧客の獲得は、ただでさえ既存顧客に比べ労力がかかります。
そのため、予算内で効率的に訴求を行うためには、ターゲットを明確化しておく必要があります。
年齢や性別、地域などといったユーザー属性だけでなく、過去の行動履歴やニーズなども想定しながら精査していくと効果的です。
② 見込み顧客の収集
ターゲットを明確化したのであれば、そのターゲットに応じたアプローチを行うことで、見込み顧客化につなげていきます。
基本的にターゲットとなるユーザーは、いきなり新規顧客になるのではなく、自社の商材を認知し、興味関心を示すことでまずは見込み顧客につながります。
この見込み顧客に対してさらに訴求していくことで、新規顧客の獲得に至ります。
そのため、新規顧客の獲得には、まず見込み顧客を増やしていくことが重要です。
いきなり購入や申し込みにつなげるのではなく、資料請求や会員登録、メルマガ登録などをはじめ、ホワイトペーパーやアプリのダウンロード、SNSのフォロワー獲得なども指標として活用していくと効果的です。
③ 再アプローチとクロージング
見込み顧客化につながれば、再度アプローチしていくとともにコンバージョン獲得に向けクロージングを行います。
一口に見込み顧客といっても、そのユーザーの購買意欲などは多岐に渡ります。
そのため、購買意欲の高さなどから優先度をつけアプローチしていくと効果的です。
再アプローチの手法には、リマーケティング広告やステップメールなど様々な方法が存在します。購買意欲の高いユーザーには、熱量の高いタイミングを逃さずアプローチすることが重要です。
再アプローチの期間が空きすぎると、ユーザーの熱量も下がり機会損失につながる可能性もあるため注意が必要です。
新規顧客獲得におけるコストを削減する方法
最後に、新規顧客獲得におけるコストを削減する方法について紹介していきます。
1:5の法則では、新規顧客獲得にかかる労力やコストは既存顧客の5倍かかるといわれています。
とはいえ、この理論をもとに戦略的にマーケティングを行うことで、労力やコストを削減することも可能です。
① 確度の高い見込み顧客へのアプローチ強化
1:5の法則をマーケティングに活用する方法でもふれたように、新規顧客の獲得にはその対象となる見込み顧客に対して優先度をつけることが重要です。
例えば、会員登録したユーザーの中には、興味関心を持って会員登録したユーザーだけでなく、とりあえず情報収集のために会員登録したユーザーも含まれます。
このようなニーズを可視化し、優先度をつけて再アプローチすることで、効率的に売上増加につなげることが可能になります。
確度の高さを見つけるためには、アンケートなどでヒアリングを行うことも重要です。
よりユーザー情報を細分化して把握することができれば、1:5の法則以上の効果につなげることも可能になります。
② PDCAサイクルをもとにした定期的な効果検証
どのようなマーケティング手法であれ、定期的に効果検証を行いブラッシュアップしていくことは重要です。
新規顧客の獲得に向けたアプローチも、定期的にPDCAサイクルをもとに改善していく必要があります。
ユーザー行動の多様化や流行の短期化が進む昨今においては、見込み顧客が1ヵ月後には競合他社に離脱してしまう可能性も起こり得ます。
逆に、属性やニーズを可視化していくことで、新たなアプローチ手法や戦略を見出しやすくもなります。
例えば、特定の見込み顧客に対しては、リマーケティング広告よりもメルマガの方が効果につながりやすいケースもあります。
このように、見直しと改善を繰り返すことで、効率的に新規顧客を獲得できるようになり、1:5の法則における労力やコストを削減できるようにもなります。
まとめ
企業において売上増加や利益拡大を図るためには、新規顧客や既存顧客に向けたアプローチが重要となります。
とはいえ、この新規顧客と既存顧客におけるアプローチは1:5の法則と呼ばれ、新規顧客の獲得は既存顧客の5倍労力やコストがかかるといわれています。
特に新規顧客の獲得は、企業が成長していくためにも欠かせません。
今回紹介した内容も参考に、1:5の法則を意識し、効率的なマーケティング戦略にて新規顧客の獲得につなげていきましょう。