少子高齢化が進む昨今において、高齢者をターゲットとしたマーケティングを行う企業は少なくありません。
内閣府の調査によれば、2055年には65歳以上の人口の割合は38%に達するといわれ、高齢者を対象とした市場は広がりつつあります。
とはいえ、高齢者に向けたアプローチは、従来のマーケティング戦略では上手くいかないケースも起こり得ます。
例えば、訴求する商材によってはSNSよりは新聞、メールよりはチラシの方が効果につながる可能性もあります。
このような高齢者に向けたマーケティングは、シニアマーケティングと呼ばれています。
高齢者と一括りにしてもその種類は様々存在するため、高齢者の特性を正しく理解し、適切にアプローチしていくことが求められます。
そこで今回は、シニアマーケティングの基本的な概要から、重要性、シニア世代の特徴、成功につなげるコツなどについてポイントを中心に紹介していきます。
シニアマーケティングとは?
そもそもシニアマーケティングとは、高齢者に向けたマーケティングのことを指します。
高齢者の基準は様々ですが、一般的には60歳以上のユーザーが対象として含まれます。
近年の日本では、医療技術の進歩や健康志向の高まりなどから少子高齢化の動きが加速しています。
内閣府の調査では、65歳以上の人口の割合は、2055年に38%に達するといわれ、シニア層をターゲットとしたビジネスを展開する企業も増加しつつあります。
この動きは今後も増加する傾向にあるため、シニアマーケティングは売上増加や利益拡大につなげる上で多くの企業が注目しています。
シニアマーケティングの重要性
シニア向けのビジネスを行う企業は、年々増加傾向にあります。
特に、健康食品や健康グッズ、美容、旅行、趣味などに関する業種はシニア向けにサービス展開する動きが強く、競合他社も増えつつあります。
このような中でシニアマーケティングを行うことは、自社の売上増加や利益拡大を図る上で欠かせません。
とはいえ、シニア層のニーズを把握することは意外と難しいのが現状です。
例えば、高齢者は若年層のようにPCやスマートフォンを扱ってはおらず、テレビや新聞、ラジオといったマスメディアで情報収集する傾向にあります。
このような場合、仮に広告を出稿してもWeb広告のように数値やデータによって傾向を把握することは難しく、ニーズや効果を具体的に可視化することができません。
そうなると、広告・プロモーション施策は数少ない情報や予測をもとに行うしかなくなり、費用対効果を高めることが難しい場合も多々あります。
また、高齢者に向けて訴求できる媒体も限定される可能性が高く、競合他社とぶつかり合うケースも少なくありません。
そのため、目的に応じた適切なシニアマーケティングが重要になり、その手法には多くの企業が注目しています。
シニア世代の特徴
シニアマーケティングを成功に導くためには、まずシニア世代の特徴を押さえておく必要があります。
シニア世代は、単に高齢者といっても一括りにはできません。
近年では、定年退職の年齢が増加傾向にあり、60歳以上であっても働くユーザーは多くいます。
このようなシニア世代と在宅で健康に暮らす世代では、考え方や生活スタイルなどが異なるため、アプローチ手法を変える必要も出てきます。
シニア世代は、一般的に以下の4つに分類されます。
① 現役シニア
現役シニアとは、60歳以上であっても仕事を続けている高齢者の層のことを指します。
定年退職が伸び、従来まで60歳が定年だったものが2025年には65歳以上に引き上げられます。
また、昨今の円安による物価高などの背景から、定年退職した後にアルバイトやパートとして働く高齢者も少なくありません。
そのため、広告・プロモーションに関しては、まだまだ現役という点を考慮したアプローチを行うことが重要です。
② アクティブシニア
アクティブシニアは、定年退職した高齢者の中でもアクティブな層のことを指します。
旅行やスポーツなど趣味に楽しむ健康で元気なユーザーが対象となります。
アクティブシニアは、比較的裕福な傾向も高いため、興味関心を惹く商品やサービスには高額であっても購入につながる可能性も高くあります。
③ ノンアクティブシニア
ノンアクティブシニアは、アクティブシニアとは逆に積極的に外出などは行わず、家で過ごすことが多い層のことを指します。
健康で元気がないわけではありませんが、在宅時間が長いため、訴求する商材やサービスによっては注意が必要です。
例えば、旅行やスポーツ用品の訴求よりは、インドアな商材やサービスの方が効果につながる可能性も高まります。
④ パッシブシニア
パッシブシニアとは、身体的や精神的な理由で療養している層のことを指します。
自宅療養や介護施設などに入っている高齢者も対象として含まれます。
何かしら問題を抱えているユーザーでもあるため、訴求としては健康グッズや介護用品などの方が効果につながる可能性が高い傾向にあります。
シニアマーケティングを行う上で押さえておくべき要素
次に、シニアマーケティングを行う上で押さえておくべき要素について紹介していきます。
シニアマーケティングを成功に導くためには、先ほどふれたシニア世代の特徴をふまえ、以下の点を考慮しておく必要があります。
① 対象となるシニア層の興味関心の把握
まず、対象となるシニア層の興味関心を把握しておく必要があります。
一口にシニアといっても先ほど区分したようにシニア世代によって興味関心は異なります。
例えば、シニア世代のすべてが必ずしも健康食品や健康グッズに興味があるかというとそうでもありません。
現役シニアであれば仕事に絡む内容に関心があり、ノンアクティブシニアに旅行を訴求しても興味が低いため反響にはつながりにくくなります。
このように、世代別のシニア層に応じて興味関心は異なるため、あらかじめ対象となるシニア層の興味関心を把握しておくことは重要です。
② 対象となるシニア層の価値観の理解
続いて、対象となるシニア層の価値観を正しく理解しておくことも重要です。
一般的に若年層であれば先進性や話題性を重視する傾向にありますが、シニア層では安心感や信頼性が求められます。
このような価値観を、広告クリエイティブやアピール手法などに活用していくことで、その効果を高めることが可能になります。
とはいえ、この価値観も対象となるシニア世代によって異なります。
アクティブシニアであれば、先ほどの先進性や話題性が興味の対象となる可能性もあります。
そのため、興味関心とあわせ価値観を深掘りしていくことが重要です。
③ 対象となるシニア層における情報源の把握
シニアマーケティングにおいて、従来の一般的なマーケティング戦略は適応しない場合が多くあります。
それは、多くの高齢者が収集する情報源は一般とは異なるからです。
一般的にシニア層では、テレビやラジオ、新聞、雑誌といったマスメディアを重視する傾向にあります。
スマートフォンを活用する高齢者も増加傾向にありますが、SNSや口コミサイトなどを使いこなすユーザーはまだまだ多くありません。
また、伝達手段もメールよりは電話や郵便の方が浸透しているため注意が必要です。
広告・プロモーションにおいては、出稿先の媒体選定が重要になります。
その効果を高めるためにも、対象となるシニア層がどういった情報源を活用しているのか把握しておくと効果的です。
シニアマーケティングを成功に導くコツ
最後に、シニアマーケティングを成功に導くコツについて紹介していきます。
シニアマーケティングは、高齢者特有の心理やニーズがあり、且つ世代別に異なることから、適切にアプローチすることが求められます。
これからシニアマーケティングを検討する際には、以下の点を押さえておくと効果的です。
① 徹底的なペルソナ分析
シニアマーケティングでは、徹底的なペルソナ分析が重要になります。
単にシニア層といってもその種類は4つに分類され、それぞれ興味関心や価値観などが異なります。
そのため、高齢者だから健康関連の商品は響くだろうといったイメージだけでは効果にはつながりません。
シニア世代の種類とともに、年齢や性別、地域、生活スタイルなどを深掘りしていき、どういったニーズがあるのかペルソナを設定した上で、マーケティング戦略に落とし込んでいくことが重要です。
② ターゲットの年齢層は広くしすぎない
ペルソナ分析とあわせ、ターゲットとなる年齢層は広げすぎない方が効果的です。
例えば、60歳以上としても65歳までは働いているユーザーも含まれますし、80歳以上はノンアクティブシニアやパッシブシニアの可能性も含まれます。
自社の商材やサービス、目的などによっても異なりますが、このように年齢層が広くなりすぎるとターゲットがブレてしまい、無駄なコストにつながる可能性も高まります。
とはいえ、年齢を絞り込みすぎるあまり、機会損失につながるケースも少なくありません。
そのため、年齢層は広げすぎず、且つ絞り込みすぎないよう調整することが重要です。
③ 安心感や信頼感、共感を適切にアピールする
シニア世代の多くは、先進性や話題性よりも安心感や信頼感を重要視する傾向にあります。
そのため、シニアマーケティングでは安心感や信頼感を訴求軸として活用していくと効果的です。
例えば、専門機関からの表彰や大手メディアに取り上げられたような実績は、それだけで安心感や信頼感を高める傾向にあります。
また、様々なユーザーからの声など口コミ情報も、ユーザーの共感を高める効果が期待できます。
これらを広告クリエイティブや訴求ポイントとしてアピールしていけば、効果につながる可能性も高まります。
④ アナログなマーケティング手法も積極的に活用
シニアマーケティングにおいては、デジタルだけでなくアナログの手法も積極的に活用していくことが重要です。
近年では、高齢者もPCやスマートフォンを活用する傾向は増えていますが、それが必ずしも全てではありません。
そのため、デジタルとあわせアナログの手法も積極的に活用していくことで、さらに効果を高めることが期待できます。
例えば、チラシやハガキによるDMをはじめ、電話営業や訪問販売なども効果的です。
いずれもペルソナ分析をもとに対象となるシニア層の情報源などを把握した上で、適切にアプローチしていくことが重要です。
まとめ
少子高齢化社会が進む昨今の日本において、シニア層をターゲットにしたビジネスは増加傾向にあります。
健康や旅行、美容などのジャンルは既に多くの企業が取り組むようになってきており、いかに差別化を図り展開できるかが重要になっています。
このような中で、シニアマーケティングはビジネスを成功に導く上で注目されています。シニアといっても対象によって興味関心や価値観、情報源などが異なるため、ターゲットに応じて適切にアプローチする必要があります。
今回紹介した内容も参考に、自社の目的をふまえ効果的なシニアマーケティングにつなげていきましょう。