Webマーケティングにおけるユーザーの心理や行動パターンは、心理学や行動経済学などを活かすことで法則を導きだすことが可能です。
人間の行動には原理や法則が多く見受けられ、これらをマーケティング戦略に落とし込むことで、プロモーション施策を効率的に且つ効果的に運用していくことができます。
そこで今回は、押さえておくべき代表的な法則についてポイントを中心に紹介していきます。
マーケティングに活用できる法則とは?
マーケティングは、ユーザーの悩みや不安、要望などといったニーズを深掘りし、自社の目的に応じてアプローチしていく必要があります。
このユーザーニーズは、その時々の心理や感情によって異なるため、タイミングに応じて読み取ることが重要です。
人間の心理や行動には一定の法則があるともいわれています。
この法則を理解し、目的やターゲット、タイミングなどに応じてマーケティングに活用していくことで、効果につながる可能性も高まります。
心理学や行動経済学との関係性
ユーザーの心理や感情、行動は、心理学や行動経済学によって法則を見つけ出すことが可能です。
そもそも心理学や行動経済学では、古くから人間の心情や行動を研究しており、一定の原理や法則が体系化されています。
統計学なども活用しながら数値などで客観的に分析しているため、導き出された原理や法則は、実際のユーザー動向に照らし合わせても十分参考にすることが可能です。
そのため、自社のマーケティングやプロモーション施策に心理学や行動経済学によって導き出された原理・法則を活用する企業は少なくありません。
もちろん、全てが適合するわけではありませんが、心理学や行動経済学をもとにマーケティング戦略に落とし込むことで、効果につながる可能性を高めることは期待できます。
マーケティングに活用できる法則一覧
心理学や行動経済学をもとにした原理・法則は多岐に渡るため、何でもマーケティングに活用すれば効果につながるわけではありません。
効果につなげるためには、それぞれの法則を正しく理解し、自社の目的に応じて活用していくことが重要です。
① 5:25の法則
5:25の法則とは、企業側が既存顧客の離脱を5%改善すれば、利益率が25%改善するという法則になります。
1対5の法則とも呼ばれています。
一般的に新規顧客の獲得にはコストがかかります。
このコストは、既存顧客に対するアプローチよりも5倍かかるといわれています。
そのため、1人の新規顧客を取るよりも、1人でも既存顧客を流出させない方が利益率を高める上で重要になります。
その結果、中長期的な利益拡大につなげることが可能です。
② ピークエンドの法則
ピークエンドの法則とは、終わり方にこだわることで、ユーザーに対して良好な印象を与えることができるという法則になります。
終わり良ければ総て良しという格言があるように、人間は最後が面白かったり、鮮やかだったものの方が印象に残りやすい傾向にあります。
そのため、終わり方にこだわることで、効果につなげることが期待できます。
例えば、広告動画を制作する場合には、最後に盛り上がりを用意し、ユーザーに対してインパクトを与えると効果的です。
③ パレートの法則
パレートの法則とは、結果の大半を決めるのは実はごく一部の要素ということを表す法則となります。
8対2の法則や80:20の法則などとも呼ばれています。
例えば、自社の商品における購入者の大半は、特定の2割の層で賄われているケースは多くあります。
2割という数字は少ないように見えますが、この小さな要素が大きな影響を与えるという点を表す法則となります。
この法則は、マーケティング領域においてはターゲットの選定や絞り込みとして活用することが可能です。
自社の顧客層を分析する際に活用すれば、その後のアプローチ手法に役立てることで効果を高めることも期待できます。
④ マーケティングシェア理論(ランチェスターの法則)
マーケットシェア理論とは、対象となる市場における自社のシェア率を表す指標となります。
このシェア率が高い方が、市場において有利にビジネスを進められるようになります。
シェア率によって取るべき施策は異なるため、市場調査や競合分析などを行う上で、マーケティングシェア理論は欠かせません。
このシェア率の優劣をもとに戦略に落とし込む法則は、ランチェスターの法則と呼ばれています。
ランチェスターの法則には、弱者の法則(第1法則)と強者の法則(第2法則)があり、シェア率が低い場合には弱者の法則をもとに戦略を構築する必要があります。
例えば、競合他社が強い業種であっても、品質やサポートなど別の側面で強化することで、競合他社にはない強みを備え、マーケティングを有利に進めることも可能です。
⑤ ザイアンスの法則
ザイアンスの法則とは、ユーザーは何度も繰り返し接触することで、警戒心を薄れさせる効果があるという法則になります。
熟知性の原理とも呼ばれています。
人間は、最初は不信感を感じていたとしても、何度も目にすることで親近感を覚え、自然と興味が高まることがあります。
これは、単純接触効果とも呼ばれており、マーケティングに活用することで認知度拡大やコンバージョン獲得につなげることも期待できます。
例えば、リマーケティングによって特定のユーザーに対して何度も広告訴求を行うことは、ザイアンスの法則を利用したアプローチといえます。
ただ、繰り返しアプローチしすぎることで、マイナスにつながる可能性も高まるため実施には注意が必要です。
⑥ 好意の返報性
好意の返報性とは、好意に対してお返しをしたくなる心理を表す法則となります。
人間は、本能的に好意に対して恩返しをしたくなる傾向にあります。
特に日本人には、好意を受けたのに何もしないのでは申し訳ないという心理が強く働きます。
その心理をマーケティングに活用することで、コンバージョン獲得につなげることも期待できます。
例えば、無料でサンプルを付与すると、好意の返報性から購入につながる可能性が高まります。
あくまでユーザーのためという前提をもとに、好意の返報性をマーケティングに活用すると効果的です。
⑦ 一貫性の原理
一貫性の原理とは、ユーザーが自身で決めた決断や発言内容などに一貫性を持たせたいと感じる原理のことを指します。
例えば、一度無料で体験した商材やサービスは、有料になっても続けたいと感じるユーザーは多くいます。
この心理・原理をマーケティングに活用したのが、サブスクリプションなどのプランになります。
基本料金は無料で、その後に一定レベルのプランになった場合に課金対象とする施策は、ローボールテクニックとも呼ばれ多くの企業で活用されています。
このような施策は一貫性の原理を効果的に活用したマーケティング手法ともいえます。
⑧ エンダウド・プログレス効果
エンダウド・プログレス効果とは、まったくゼロの状態より多少進んだ状態からの方が目標達成に向けチャレンジしやすいという心理を表す法則となります。
例えば、最初にある程度ポイントが付与されていた方が、その後のポイントを貯めようというモチベーションが高まります。
このような効果をマーケティングに活用することで、購買意欲を促し、売上増加や利益拡大につなげやすくなります。
⑨ 希少性のバイアス
希少性のバイアスとは、何か失うと感じた瞬間に、その対象に対して愛着や興味関心を持つという法則となります。
例えば、特に興味が無い商品だとしても、「残りわずか」などと訴求されると購入しなければという気持ちが強くなります。
マーケティングにおいては、この希少性のバイアスを活かし、商材やサービスに対して限定性を持たせた広告を掲載するケースが多くあります。
その結果、ユーザーの購買意欲を駆り立て、売上増加や利益拡大につなげる効果が期待できます。
⑩ アンカリング効果
アンカリング効果とは、時系列において先に提示された条件が、その後の判断基準につながりやすいことを表す法則です。
例えば、あらかじめ正規価格を提示し、その後に割引価格を示すと、多くのユーザーは安いと感じる傾向にあります。
これをマーケティングに活用し、キャンペーンや割引といったワードとともに訴求することで、安さやお得感を際立たせることができます。
その結果、ユーザーの購買意欲を高める効果が期待できます。
⑪ 系列位置効果
系列位置効果とは、ユーザーに対して与える情報には時系列によって差があることを表す法則となります。
人間は、何か情報を記憶する際に与えられた順番で覚えていくものの、数が多くなればなるほど中盤は忘れやすい傾向にあります。
これに対し、最初と最後に与えられた情報は記憶している傾向が高くなります。
そのため、広告動画などにおいては最初と最後に要点を伝えると、記憶に残りやすくその後の効果にもつながりやすくなります。
系列位置効果は、先ほどふれたピークエンドの法則とあわせて活用すると効果的です。
⑫ MAYA理論
MAYA理論とは、新しさと親しみやすさのバランスを表す法則となります。
MAYAは「Most Advanced Yet Acceptable」の頭文字からなり、先進的であるものの受け入れられる段階のことを意味します。
人間は、新しいものに対して興味を示すケースと、急な変化を好まないケースに分かれます。
そのため、新商品の開発や既存サービスのリニューアルや機能拡充などには注意が必要です。
保守的なユーザーが多い場合には、機能が増えたとしても受け入れられず、離脱してしまう可能性も高まります。
⑬ 奇数の法則
奇数の法則とは、偶数よりも奇数の方が興味を示しやすいと感じる法則です。
偶数は、割り切ることができるため、あまりユーザーの印象に残らない傾向にあります。
これに対し奇数は、割り切れないことのもどかしさなどから記憶に残りやすく、興味も示しやすい傾向があります。
価格をはじめ、広告クリエイティブなどに数字を活用する際には、奇数を絡めることでクリック率を高める効果が期待できます。
⑭ プロスペクト理論
プロスペクト理論とは、損失を回避するためであれば期待値が低くても現実的な方を選ぶ心理を表す法則となります。
人間は、利益につながるのであれば確実な方を選択し、損失につながる場合にはできるだけ被害を抑える方を選ぶ傾向にあります。
例えば、「これを行うことで10万円儲かります」というよりも「これを行えば10万円損しません」と伝えた方が効果につながる可能性が高くなります。
表現方法を変えるだけで効果に差が出るため、広告文やページ内のキャッチコピーに活用する企業も多くいます。
⑮ カリギュラ効果
カリギュラ効果とは、禁止された行為の方が興味を示しやすい特性を表す法則となります。
「絶対に内緒にしてください」といわれると、誰かに伝えたくなるのが人間の心情としてあります。
それをマーケティングに活用することで、興味関心を促す効果が期待できます。
この手法はネタとして活用されるケースが多く、エンタメ系の業種で多く見られる傾向にあります。
まとめ
マーケティングにおいて、ユーザーの心理や行動を把握することは、プロモーション効果を高める上で欠かせません。
とはいえ、日々情報が増えつつある昨今において、ユーザーニーズをつかむことは難しい傾向にもあります。
このような中で、心理学や行動経済学にもとづく法則を活用することは有効です。
統計などをもとに客観的に分析された原理・法則は、マーケティングに活かすことで効果を高めることが期待できます。
今回紹介した様々な原理・法則を参考に、自社のマーケティング効果を高めていきましょう。