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シェアNo.1以外は局地戦で勝つべし!【ランチェスター戦略】を解説

2020年02月13日

シェアNo.1以外は局地戦で勝つべし!【ランチェスター戦略】を解説

この記事では「ランチェスター戦略」について解説していきます。
ランチェスター戦略を端的に表すと、「弱者が強者に勝つためのビジネス戦略」です。

ここで言う弱者とは、市場2位以下すべての企業のことを指すため、ほとんどの企業がランチェスター戦略を起用すべきということになります。
このランチェスター戦略の特徴、なりたち、メリット、具体例などを紹介します。

「どこかで聞いたことがある単語、だけどどういうものか分かっていない」
「経営の用語でしょ、マーケティング関係なくない?」
「『ランチェスター戦略』と『ランチェスターの法則』って何か違いがあるの?」

上記のような疑問や意見もすべてこの記事でクリアになります!

1.ランチェスター戦略とは

ランチェスター戦略とは、企業を「強者」と「弱者」に分類し、それぞれの取るべき戦術を示した理論です。
元は「ランチェスターの法則」という軍事戦略理論で、日本でビジネス戦略として発展した経緯があります。

1-1.『ランチェスターの法則』とは

「ランチェスターの法則」は、かつては精神論、哲学、宗教観によって統制されてきた戦闘を、数学的・科学的なアプローチで理論化しました。
第一次世界大戦下、イギリスで戦闘機を開発するエンジニアだったフレデリック・ランチェスターは、自身の著作”Aircraft in warfare: The dawn of the fourth arm.”(戦闘における航空機 – 4番目の兵器の夜明け)の中で、戦闘に勝利するための戦闘力を算出する法則を発明します。
これがのちに「ランチェスターの法則」として広く知られるようになりました。

ランチェスターの法則には、第一法則と第二法則があります。

第一法則

戦闘力=武器効率×兵力数
古代~中世の近接戦闘、一騎打ちの戦闘スタイルの場合、1人が攻撃できる対象が1人のみのため単純に人数の差が戦闘力の差に直結します
例えば500人の軍と300人の軍が戦闘をしたとすると、500人の軍が200人を残して勝利します。

これでは少数の軍に勝ち目がないと思われますが、戦い方を変えることで勝機を見出すことができます
例えば、相手の500人の軍を何らかの方法で200人と300人に分け、200人の部分を集中的に攻撃すれば勝利することができます。

自分たちより資本を持つ企業に真正面から勝負を仕掛けても勝ち目はないですが、「局地戦」を展開することでチャンスが見えてくるのです。

第二法則

戦闘力=武器効率×兵力数の2乗

近代に入り、銃や大砲、戦闘機などの広範囲の攻撃手段が増えると一人あたりの攻撃回数が増えるため、兵力が占める戦闘力への影響度は更に高まります

先述の例を当てはめると、500の2乗=250,000 VS 300の2乗=90,000 の戦いとなり、戦闘力にして160,000の差が生まれます。
そして500人の軍は√160,000=400人を残して大勝するのです。

つまり、テクノロジーが進歩するほど頭数(=資本力)の差が顕著に勝敗に直結すると言えます
やはり現状シェアや企業規模で上回る相手に対しては「局地戦」を挑むしかありません。

1-2.企業戦略としての『ランチェスター戦略』

軍事戦略の理論は、企業同士の戦いにも活用されるようになります。
マーケティングコンサルタントの田岡信夫氏などにより販売戦略として「ランチェスター戦略」が提唱され、多くの企業が取り入れるようになります。

ビジネス戦略としてのランチェスター戦略の内容は以下のとおりです。

戦略 強者 弱者
基本戦略 ミート戦略 差別化戦略
商品戦略 総合主義(物量戦) 一点集中主義
地域戦略 広域戦 局地戦
流通戦略 遠隔戦 近接戦
顧客戦略 確率戦 一騎打ち戦
戦法 誘導戦 陽動戦

初めて聞く単語もあると思いますので、次の章から説明していきます。

2.強者/弱者の定義

最初にランチェスター戦略とは「弱者が強者に勝つためのビジネス戦略」と表現しましたが、「強者/弱者」の定義とは何でしょうか。

「強者」とは、ズバリシェア1位の企業を指します。
市場シェア2位以下はすべて「弱者」の扱いです。

そして「強者」の中でも、2位以下が「射程圏内」に位置しているかどうかで評価が異なります。
2位のシェアを√3=1.73倍しても1位に届かない場合は、圧倒的な強者であり安全圏にいると言えます。

そして、「ランチェスターの法則」にあったとおり、もとからシェアを多く持っている「強者」と、そうでない「弱者」では戦い方が異なります。
「ランチェスター戦略」において企業が行うアクションは以下の3つです。

  • 特定の市場で強者になる(2位は射程圏外)
  • 一点集中主義(地域、販路、顧客、商品を絞る、特化する)
  • 足下の敵からシェアを奪う

それぞれについて説明する前に、「マーケットシェア理論」について解説します。

3.マーケットシェア理論を活用する

マーケットシェアとは、そのまま「市場の占有率」を指します。
もちろんマーケットシェアは高い方が良いのですが、具体的な数値による評価基準があります。

シェア 目標値 意味
73.9% 上限目標値 独占的となり、その地位は絶対的に安全となる。
一方で、一社独占のマーケットは外部要因により大きく縮小する危険がある。
41.7% 安定目標値 地位が圧倒的に有利となり立場が安定する。
首位独走の条件として多くの企業の目標値。
26.1% 下限目標値 トップの地位に立つことができる強者の最低条件。
安定不安定の境目。これを下回ると1位であってもその地位は安定しない。
19.3% 上位目標値 ドングリの背比べ状態の中で上位グループに入れる。
弱者の中の強者と言える。
10.9% 影響目標値 市場全体に影響を与えるようになり、シェア争いに本格参入できる。
6.8% 存在目標値 競合者に存在を認められるが、市場への影響力はない。
これ未満を撤退の基準として使われる場合もある。
2.8% 拠点目標値 存在価値はないに等しいが、今後の展開の足がかりになりうる。

担当されている商材は、それぞれの目標値に届いているでしょうか。
最終的にどのマーケットでどの目標値を狙うのかを決め、短期・中期の目標を設定しましょう

4.ランチェスター戦略の活用法

ランチェスター戦略を活用して、どのようにビジネスの方向性を決めていくかを説明します。

4-1.地域戦略論

ランチェスター戦略はもともと軍事戦略です。戦争の主な目的は土地の奪い合いであるため、地域戦略は親和性が高いと言えます。
「地域戦略」とは、総合的なシェアでは弱者であっても特定地域のシェアで強者になるということです。

例えば、ハンバーグレストランの全国的なシェアは「びっくりドンキー」や「ビッグボーイ」が上位を占めています。
しかし“静岡県に限って言えば”、「さわやか」がまず思い出されるはずです。

また、筆者はJリーグを見るのが好きなのですが、どのクラブにも「ホームタウン」があります。
(ex. 「浦和」レッズ、ガンバ「大阪」、FC「東京」など)

その地域に根付いたクラブであることを強調し、ホームタウンのファンを獲得していきます。
そして地縁というのは強力で、「地元が同じ」だと初対面の人でも会話が弾むように、親しみを生みやすいものでもあります。

このように地域密着でマーケティングを進めていくことは実現性の高い勝ち筋の一つと言えます。

4-2.流通戦略

販促戦略を考えるときには、流通を抑えることが必須で販売店に効率的に露出していなければなりません
取り扱い先の対象となる販売店や代理店のターゲットのうち、自社商材の扱いのある店舗はどの程度あるか(カバレッジ)を把握しましょう。

また、流通網を更に詳細に分析するための指標に「Aa店率」というものがあります。
「Aa店率」とAグループの中のは、「Aグループ」の中の「a店」が全体の売上に占める確率を指します。

Aグループとは

Aグループとは、商材の売上を取引先・売上額順に並べたとき、全体の70%を占める取引先のグループのことを言います。
つまり、全体の売上に対するインパクトが大きい取引先のグループです。

a店とは

a店とは、自社製品を30%以上扱っている店舗を指します。
つまり自社の製品を積極的に販売している、注力すべき店舗と言えます。

Aa店率の公式

Aa店率は以下の公式で導かれます。

Aa店率 = Aa顧客数 ÷ Aグループ顧客数 × 100

このAa店率が高いほど、大口顧客の中での社内シェアが大きくなっている状態を表します。
当然、Aa店率が上がれば売上も上がります。

Aa店率を上げるという手段は、弱者の戦い方です。
新規取引先を拡大するという方法は、多大な労力を使うため弱者は強者に負けてしまいます。

それならば、既存の売上が高い顧客がもっと自社商材をプッシュしてくれるように努力した方がシェアを伸ばしやすいのです
対象顧客も一点集中した方が良いとされ、これは「一点集中主義」とリンクします。

逆に強者が他社を射程圏内から遠ざけたい場合は、「総合主義」にのっとり取引先を網羅的に増やすのが良いでしょう。

具体的な指標としては、マーケットシェア10%を確保するためにはAa店率20%以上を目指していきましょう。

4-3.営業戦略

マーケットシェアを上げるための営業を推進する必要があります。
営業を行うにあたっては、当然取引額の大きな商談や、先述の“Aa店率”を向上できる商談に積極的にリソースを使うべきです。
訪問や電話など、コミュニケーションに費やす時間を取引先ごとに分類し、Aa店へのリソースを高められるように調整しましょう。

近年MAやCRMツールを導入する企業も増え営業業務の分析もしやすくなった背景もあり、積極的に活用したいところです。

5.ランチェスター戦略の事例

ランチェスター戦略は、あらゆる業界の企業で活用されています。
代表的な事例を挙げていきます。

5-1.HIS

裕福でなければ海外旅行に行けない時代、HISは「格安の海外航空券」を展開して急成長します。
パックパッカー経験のある社長の澤田氏は、マイナー航空会社や閑散期の不人気な航空券を格安で手に入れるノウハウを持っていたのでした。

JTBを始め大手はハワイなどの定番スポットを重点的に販売していた頃、HISはバリやセブ、プーケットなどの新興リゾート地のツアーを格安で展開し、お金はないが時間のある学生や若者を中心に支持を受けます。

加えて、チラシ配りによる営業戦略が奏功し、2005年、ついに海外旅行取扱数でJTBを抜き国内1位になります。

「海外旅行」で正面突破をしようとしても大手の資本力の前では勝てません。
「格安海外旅行」から風穴を開け、「旅行地の差別化」を図り、人件費効率が多少悪くてもチラシ配りの「接近戦」で顧客の検討テーブルに確実に乗せるという、数々のランチェスター戦略のポイントを抑えたことで勝ち得たトップシェアと言えるでしょう。

5-2.ハウステンボス

ハウステンボスは創業以来、18期連続の赤字という危機的状況でした。
これを救ったのが、先述のHIS創業者の澤田氏だったのです。

当時のテーマであった「オランダ村テーマパーク」は、以下の2つの理由で破綻していました。

  • 開業当初よりもオランダに渡航しやすくなった現状
  • 東のTDL、西のUSJに大幅に劣るテーマパークとしての資本力

「本物のオランダ」「日本の2大テーマパーク」と正面で打ち合っても勝ち目はありません。
そこで澤田氏はハウステンボスのテーマを「東洋一美しい観光ビジネス都市」と再定義し、ランチェスター戦略を軸に改革に踏み切ります。

テーマパークではなく「都市」になることで“MICE”を始めとする「ビジネストラベル」の需要を満たすことができると考えました。

MICEとは、Meeting(会議・研修・セミナー)、Incentive tour(報奨・招待旅行)、Convention またはConference(大会・学会・国際会議)、Exhibition(展示会)の頭文字をとった造語

参考:MICE(マイス)とは・観光用語集 – JTB総合研究所

また、ハウステンボスのある佐世保は東京からは遠くても、上海からは東京よりも近く、ソウルからは関西と等距離です。
不利に思われていた東京からのアクセスの悪さは、実はインバウンド観光には適している立地だったのです。

このように、戦う領域を限定し得意領域で戦略を構築するのがランチェスター戦略の基本です。

そして、戦う領域に資本を集中させます。
当時のハウステンボスは、敷地面積こそ2大テーマパークを大きく上回るものの、テナントが埋まっておらず閑散とした雰囲気が漂っていました。
そこで思い切って全敷地の1/3をフリースペースにし、有料エリアを圧縮しました。

その結果、有料エリアは盛況を取り戻し、広大な無料エリアも新たな層の呼び水となりました。

5-3.トヨタの「プリウス」

「敗者」が差別化領域で突き上げることをランチェスター戦略と呼ぶことが多いですが、「強者」がその王座を守るのもまた「ランチェスター戦略」です。
自動車業界の有名な事例としてトヨタの「プリウス」が挙げられます。

ホンダが「インサイト」を発売すると、安価であることも併せて人気を博し、「ハイブリッドカー」としての立ち位置を確立しました。
対抗するトヨタは、同じくハイブリッドカーのプリウスをモデルチェンジし、インサイトの更に下を行く価格帯で発売。

インサイトの人気を抑え、2009年の新車販売台数国内1位を達成しました。

このように、資本体力のある「勝者」は、突き上げようとする「弱者」の強みを消す「同質化」が常套手段となります。
「弱者」は、これに負けないブランドメッセージや販売戦略を考慮する必要があるでしょう。

5-4.セブンイレブン

1974年、1号店を東京都江東区にオープンしたセブンイレブンは急速に店舗拡大をしますが、関西地域への進出に課題を感じていました。
当時の関西はローソンの知名度が高く、セブンイレブンは大きく出遅れていました。

そこで採用したのが、「ドミナント戦略」です。
一部の地域に集中的に出店を行うことで、その地域内のシェアを挙げ、知名度の向上にもつなげます。
これもランチェスター戦略の地域戦略論と見なせるでしょう。

こうして段階的に出店地域を増やしていったことで、現在セブンイレブンは関西シェアでもナンバーワンを獲得しています。

6.まとめ

  • ランチェスター戦略とは「市場シェアを上げるための事業戦略論」
  • 市場シェア1位は「強者」、それ以外は「弱者」。それぞれとるべき戦術が異なる
  • 弱者は「差別化」「一点集中」「局地戦」「近接戦」「一騎打ち」「陽動戦」を仕掛ける
  • 局地的な市場で「強者」になったとき、更に広い市場を目指すことで事業が拡大する

ランチェスター戦略について解説しました。
今、マーケティングを担当している商材は、どんな市場で戦っているでしょうか?
強者はどの企業でしょうか?
この先取るべき戦略が少しでも見えてきたら幸いです。

インフィニティエージェントでは、マーケティング戦略からぶらさず運用型広告の施策に落とし込むことを得意としています。
「CPA目標は達成しているけど、リードの質が良くない…」などといったお悩みのある方は、ご相談ください。

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