ファストファッションブランドとして確立した地位を築くユニクロ(株式会社ファーストリテイリング)は、2021年に時価総額が10兆円を超え、アパレル業界で1位となりました。
この背景には、ユニクロが実施する独自のマーケティング戦略が影響しています。
徹底した競合他社との差別化や、コストリーダーシップ戦略などは、ユニクロに限らず中小企業であってもマーケティング施策として活用することが可能です。
マーケティングを成功に導くためには、他社の事例を参考にすることが重要です。
そこで今回は、ユニクロのマーケティング戦略について、成功事例とあわせポイントを中心に紹介していきます。
ユニクロのマーケティング戦略とは?
画像引用:ユニクロ
ユニクロを展開する株式会社ファーストリテイリングは、自社で商品の企画開発から製造、販売までを一気通貫して対応することで、高品質ながら低価格な商品を販売しています。
多くのファッションブランドが、デザインなどに注力するのに対し、機能性や低価格に特化した商品を取り扱うことで、市場における優位性を確立しています。
例えば、ヒートテックという商品は、薄い生地なのに暖かく、且つ安いという点から多くのユーザーに支持され、防寒インナーとして冬の必需品となっています。
また、一般的にファッションブランドでは商品の統一感を持たせる傾向にありますが、ユニクロでは多種多様なアイテムを取り扱っています。
いずれも高品質且つ低価格が売りではありますが、他のアパレル業界が真似できない経営戦略が、成功につながった要因とも言えます。
ユニクロが実施したマーケティング戦略
続いて、ユニクロが実施したマーケティング戦略について紹介していきます。
ユニクロでは、徹底的な競合他社との差別化と、コストリーダーシップ戦略を行っています。これが市場における優位性につながっています。
それぞれについて紹介していきます。
① 競合他社との差別化戦略
ユニクロは、Made for Allというキャッチコピーがあるように、年齢や性別問わずだれでも着られる衣類を多く取り扱っています。
ターゲットを絞らないということは、一見すると非効率に思われがちですが、全てのユーザーがターゲットになり得るという点では他社との差別化が図れます。
例えば、3世代の家族でユニクロを訪れたとしても、それぞれが求める商品を販売することができます。また、デザイン性を追求するのではなく、ある程度割り切った商品開発を行っている点も差別化につながっています。
通常、ファッションにはユーザーごとに好みが存在します。
とはいえ流行の短期化が進む昨今において、それを深掘りしながら開発・販売し続けるには限界も生じます。
一方で、ユーザーの中にはファッションにおいて割り切ったニーズも存在します。
「インナーは安ければなんでもいい」といったニーズには、ユニクロはマッチした商品が多く存在します。
このように、マーケティングにおいて徹底的に競合他社との差別化を図ることで、市場における優位性を確立することができています。
② コストリーダーシップ戦略
ユニクロは、先ほども触れたように商品の企画開発から製造、販売までを一気通貫して対応しています。
このようなSPA化とも呼ばれるビジネスモデルによって、ユニクロでは商品の低価格化を実現しています。
多くのアパレル業界では、製造と販売の間に卸売業者が絡みます。
そうなると、当然ながらマージン(手数料)が発生し、商品の単価は高くなります。
ユニクロでは、このようなプロセスが間に入らないため、低価格且つ企画・開発から販売までをスピーディーに対応することが可能です。
また、ユニクロでは老若男女問わず商品を取り扱っています。
これにより、同一商品のサイズ展開をはじめ、大量に生産することでコストダウンにつなげることも可能になります。
さらに、ユニクロでは低価格にもかかわらず高品質という点にもこだわっています。
例えば、もともと登山用として流通していたフリースを、ユニクロではカジュアルウェアとして展開しました。その結果、低価格且つ高品質なアイテムとして注目を集め、大ヒットにつながりました。
このように、価格面だけでなく品質にもこだわったコストリーダーシップ戦略が、ユニクロのマーケティング効果を高める要因につながっています。
③ 海外に向けたオンライン戦略
ユニクロは、今や世界的に見ても有名なファッションブランドです。
これには、ユニクロの海外に向けたオンライン戦略が影響しています。
ユニクロでは、海外での認知度拡大を図るために、世界で活躍するスポーツ選手とのアンバサダー契約を行っています。
例えば、テニスの錦織圭選手や、スノーボードの平野歩選手など世界的に注目されている選手とアンバサダー契約を結ぶことで、ユニフォームにユニクロのロゴを表示させ、認知度拡大につなげています。
これによって、対象の選手が世界大会などで活躍するたびに、自然とユニクロのブランド価値を高めることに成功しています。
また、仮に選手が活躍したとしても、ユニクロの価値が高まるかはその国や地域によって異なります。
そこでユニクロでは、各国のターゲット層を分析し、そのユーザーニーズに合わせたSNSやWebを活用しながら訴求することで、ブランド価値を高めています。
ユニクロのマーケティング戦略が成功した要因とは?
続いて、ユニクロのマーケティング戦略が成功した要因について紹介していきます。
ユニクロでは、闇雲にマーケティング施策を行うのではなく、綿密な戦略をもとに認知度拡大や売上増加につなげています。
具体的には以下の要因が効果につながっていると考えられます。
① 顧客ニーズを捉えたターゲティング設定
一般的にターゲティングというと、年齢や性別、地域などのユーザー情報をもとにターゲットを絞ることが多くなります。
これに対してユニクロでは、あえてターゲットを絞らず、全ユーザーに対してアプローチすることで成功につなげています。
例えば、先ほどふれたユニクロの大ヒット商品のフリースは、カラーが50色用意されています。
これにより、流行に影響されることなく、ユーザーが今必要なものを適宜選択できる価値観を提供することが可能になり、結果として顧客ニーズを捉えたターゲティング設定につながっています。
② 低コストで高品質なブランディング訴求
もう一つ、ユニクロでは高品質且つ低価格というブランディングに成功しています。
これは、先ほどふれたSPAとも呼ばれる自社内での企画開発から製造・販売までの一気通貫が影響しています。
価格を追求して大量生産を行うと、品質が劣るケースも少なくありません。
ところが、ユニクロでは徹底的に品質にこだわることで、大量生産しつつも機能性やクオリティなど、ユーザーが求める以上の品質を提供しています。
また、ユニクロでは接客スタイルに関しても他社とは一線を画しています。
通常アパレル業界では、積極的にユーザーとコミュニケーションを取る傾向にありますが、ユニクロでは受動的で、ユーザーからの質問に対して初めて対応するスタイルとなります。
とはいえ、声をかけられたら細かなサポートができるような社員教育は行っており、業務効率化を図ることでコスト削減にもつなげています。
ユニクロのマーケティング戦略に見るSTPの重要性
最後に、ユニクロのマーケティング戦略に見るSTPの重要性について紹介していきます。
今回紹介したユニクロのマーケティングには、ユニクロならではのSTP戦略が成功の要因として挙げられます。
そもそもSTPとは、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)から成る市場における自社の立ち位置を確立するフレームワークのことを指します。
ユニクロでは、流行に左右されないファッションを、全世代のユーザーに満遍なく提供するという価値観において、アパレル業界で確固たる地位を築いています。
その結果、市場における優位性を保持し、安定した収益化につながっています。
これは自社においても展開でき、市場を再分解して顧客を絞り込み、自社の立ち位置を確立できれば、認知度拡大や売上増加につながる可能性が高まります。
まとめ
今や世界的にも注目されているユニクロは、徹底的な競合他社との差別化とコストリーダーシップ戦略をもとにアパレル業界をリードしています。
この背景には、企画・開発から製造、販売までを一気通貫して対応することも挙げられますが、マーケティング戦略においては老若男女に対応するターゲティング設定なども要因として考えられます。
とはいえ、これらは自社のマーケティング戦略に落とし込んで活用することも可能です。
今回紹介した内容も参考に、ユニクロの事例を自社のマーケティング活動に効果的に活かしていきましょう。