ステマの問題点や炎上は、SNS・ニュースでもたびたび話題に上がります。最近規制も開始され、内容を把握したい人は多くなっているのではないでしょうか?
なかには「ステマって何が問題なの?」と疑問に思っている方や、「ステマ」の意味を知っていても、具体的に内容までは知らない、という方が多いのではないでしょうか。
この記事では、ステマについて手法や問題点などを解説していきます。現在の規制状況なども紹介するので、ステマの全貌について知りたい方はぜひご一読ください。
1.ステマとは?
2.ステマの規制状況について
3.ステマの代表的な手法
4.ステマの問題点はどんなところにある?
5.ステマのリスクはどんなところにある?
6.ステマはなぜなくならない?
7.ステマの疑惑を防ぐための対策は?
8.ステマの基準とは?
9.ステマの事例
10.まとめ
ステマとは?
ステマとは、「ステルスマーケティング」の略です。
ユーザーに気づかれないように商品の宣伝や口コミを行う手法のことを言います。日本では「やらせ」や「サクラ」とも同様の意味で利用されています。
ステルスマーケティング(英語: stealth marketing)とは、消費者に広告と明記せずに隠して、非営利の好評価の口コミを装うなどすることで、消費者を欺いてバンドワゴン効果・ウィンザー効果を狙う行為。「ステマ」の略語で知られる。やらせやサクラなどもこの一例に分類される。映画などの映像の中に目視では認識できない短時間の画像などを挿入して脳内に刷り込む宣伝方法で、ステルス機のように相手に気づかれずに宣伝する手法が語源とされる。ステマによって宣伝された商品を購入したユーザーは「騙された」と疑念を抱くようになってしまうため、インフルエンサーマーケティングなどを実施する際は細心の注意が必要です。
引用:ステルスマーケティング|Wikipedia
ステマが問題視されている背景
ステマが問題視されるようになったのは、ソーシャルメディアの普及により「口コミ」が消費者の購買行動に大きく影響するようになってからです。
今や企業の広告やマーケティングにおいて「口コミ」は多く活用されています。
「話題」「拡散」の効果を求めるあまり、ソーシャルメディア上で影響力を持っている人インフルエンサーなどに依頼をし、広告であることを伏せながらネット上で好意的な投稿を作成してもらうという消費者の期待を裏切る事件が頻発しました。
「第三者情報は宣伝よりも信頼性が高い」ことをいいことに、グルメサイトの口コミ操作やオークションサイトでの偽口コミによる事件が多発し、一般的に「ステマ」という言葉が認知されるようになりました。
ステマの規制状況について
ステマの規制は、海外と日本の両方で実施されています。マーケティングに従事している方や興味がある方は、現在どのような規制が行われているのかも把握しておきましょう。
日本国内のステマ規制状況(2023年10月から取り締まり開始)
日本では、景品表示法の「不当表示」において、2023年10月からステマが追加されます。
口コミを投稿したインフルエンサーなどは対象となりませんが、広告を配信した広告主は規制の対象となります。
広告という事実を隠して宣伝を行うと違反してしまうので、インフルエンサーマーケティングなど実施する際は注意が必要です。
海外のステマ規制状況
海外では、すでにステマへの規制が進められています。
例えば、アメリカでは2009年に「連邦取引委員会(Federal Trade Commission:FTC)」にガイダンスが改定され、ステマへの規制が実施されました。
また、イギリスでも2008年に「不公正取引からの消費者保護に関する規制法」が施行されており、ステマを違法なものとして扱うようになっています。
ステマの代表的な手法
ステマの手法としては、以下2つが代表的です。
・インフルエンサーへの依頼
それぞれの内容について見ていきましょう。
なりすまし
なりすましは、商品を開発・販売している会社と関連している人物が、その事実を隠して宣伝を行う手法です。
非関係者を装うことでユーザーに怪しまれる心配がなく、商品についても熟知しているため効果的な宣伝が可能になります。
また、自社だけでなく、関連したサービスを提供している他社の悪評について発信するケースも「なりすまし」に該当します。
インフルエンサーへの依頼
ステルスマーケティングは、インフルエンサーを通して実施されることもあります。
インフルエンサーはSNSでフォロワーを多く獲得しているため拡散力に優れており、ファンからの信頼度も高いです。
「あの人が本当に好んで使っている」と判断すれば、たとえ高額な商品であっても購入してもらえる可能性が高くなります。
売上向上を見込める点が大きなメリットですが、宣伝を依頼する際は方法について発信者と熟考する必要があります。
ステマの問題点はどんなところにある?
ステルスマーケティングには以下のような問題点が存在します。
・業界全体の信頼に影響するという点
上記2点について確認し、なぜ問題視されてしまうのか理解を深めていきましょう。
消費者をだます行為であるという点
消費者は、ネット上の口コミや評価を参考にしてサービスを選択します。
実際、飲食店に行くときや家電を買うときなど、あらゆる場面で口コミサイト・SNSをチェックする人は多いでしょう。
ネット上の口コミや評価は信頼できる情報源として参考にされますが、それが企業によって作られたものだった場合、消費者は「だまされた」と認識してしまいます。
業界全体の信頼に影響するという点
ステマによって消費者が「だまされた」と認識すると、業界に対しても不信感を抱くようになります。
特に、ECサイトなど通販業界の口コミは必ずと言っていいほどチェックされるため、操作されていたら信頼に悪影響が及ぶでしょう。
一度信頼を崩してしまうと再度構築するのは難しく、消費者に「どのサイトも危ない」というイメージを植え付けてしまいます。
業界全体に対してダメージを与えかねないので、意図的な印象操作は避けることがおすすめです。
ステマのリスクはどんなところにある?
ステマには、以下のようなリスクが存在しています。
・企業の信頼が下がる
・企業側(広告主側)は罰則を受ける可能性がある
ステマを実施することによって、どのような危険性があるのか把握しておきましょう。
炎上する可能性がある
本来、信頼できるはずだった情報源が企業によって作られたものだと知られると、炎上してしまう確率が高いです。
ネット上で事実が掘り下げられ、企業名や一連の出来事が拡散される可能性があります。
特に近年ではTwitterやYouTubeなど数多くのSNSが存在するため、拡散される速度が速く、事態の収拾まで時間を要します。
企業の信頼が下がる
ステマが露見したり炎上に繋がったりした場合、企業の信頼は著しく下がります。
ステルスマーケティングと気づかずに商品を購入した人だけでなく、見込み顧客や他の商品を定期購入していたユーザーにも悪影響が及ぶでしょう。
ネット上に情報が残り続ける以上、企業名などで検索すれば一連の出来事は認知されてしまいます。
一度信頼が下がれば取り返すことは困難なので注意が必要です。
企業側(広告主側)は罰則を受ける可能性がある
2023年10月以前、景品表示法ではステマに関する独自の項目は設けられておらず、あくまでも「不当表示」の一環として規制されていましたが、法改正により不当表示の一部にステマが表示されるようになりました。
不当表示とは、商品やサービスの品質や価格を実際とは違うものにみせかけ、消費者の適正な判断をできないようにするような表示のことです。
今回の規制の対象となるのは、商品やサービスを依頼する事業主(広告主)で、依頼された側のインフルエンサーやアフィリエイター、広告代理店などの企業は規制の対象外となります。
違反した場合は、再発防止を求める措置命令が出され、広告を依頼した事業者名が公表されます。
措置命令に従わない場合は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金などが科される可能性もあり、かなり重い罰則になっています。
参考:令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。|消費者庁
ステマはなぜなくならない??
ステマがなくならない理由としては、以下の2つが考えられます。
・低コストで効果的な宣伝を期待できる
予防を実施するためにも、上記について確認しておくことがおすすめです。
ステマだと認識していない
ステマがなくならない大きな理由として、そもそもその施策がステマだと認識していないことが挙げられます。
あくまでも宣伝の一環としてインフルエンサーに依頼し、契約について明示しないまま施策を行っているケースが多いです。
インフルエンサーを活用したマーケティング自体は問題ないですが、必ず宣伝方法について相談をしてやらせにならないように工夫しましょう。
低コストで効果的な宣伝を期待できる
ステマは、企業の関係者が率先して実施しているケースが多いです。
サービスについて熟知している人物が外部の人間に口コミや評価を依頼すると、低コストで効果的な宣伝ができます。
一から広告を流すよりも工数が少なく費用対効果も高いため、ステマと知っていて手を出してしまう企業も少なくありません。
ステマの疑惑を防ぐための対策は?
ステマは問題視されているものの、拡散による認知の拡大が期待できることから、非常に優秀なマーケティング手法であると言えます。
どのようにすれば、規制に違反しないステマを取り入れることができるのでしょうか。下記で確認していきましょう。
・事実と異なることは発信しない
・インフルエンサーの投稿は必ず確認する
ステマの基準とは?
ステルスマーケティングにおいては、2023年10月1日より日本においても規制が開始されますが、規制の対象については下記のページにて詳細に説明されています。
別紙2 「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準
この告示のポイントは下記のとおりです。
・「事業者が表示内容の決定に関与したとされるもの」の「事業者が自ら行う表示」には、事業者と一定以上の関係性があり、事業者と一体としてみなされる従業員や、事業者の子会社などの従業員が行ったものも含まれます。
・告示の対象は、第三者による発信と思われるものが、事業者の発信であることが前提です。
事業者が表示する内容の決定にかかわった場合に規制の対象となります。
そのため、明確な指示をしていないとしても、発信する人とのやり取りや、対価提供の内容によっては規制の対象となります。
一方で、客観的に第三者が自らの意思で表示する内容を決定したと認められるものであれば、規制の対象にはなりません。
ステマの事例
ステマについて理解を深めるには、過去の事例についても把握しておくことが大切です。有名なものを紹介していきます。
【大手グルメ口コミサイト】業者によるランキング操作
飲食店の情報を掲載している大手グルメ口コミサイト「食べログ」では、業者によってランキングが操作されていたことが2012年に指摘されました。
一般の消費者を装って、報酬をもらった業者が高評価の口コミを投稿し、ランキングを上位に上げていたのです。
チェック体制の強化など対策は進められていますが、消費者としては信頼できる情報が操作されているものだったとして、信用に悪影響を与えています。
グルメ系の口コミサイトとして、一定期間ユーザーからの信頼がガタ落ちしてしまったといえますね。
【世界最大規模のスーパーマーケット】ブランドイメージ向上の為の偽のブログが炎上
ウォルマートは、アメリカ合衆国に本部を構える世界最大規模のスーパーマーケットです。
ブランドイメージを向上させるために、PR会社のエデルマンに良い策がないか依頼していましたが、エデルマンはそれに対し、「一般人カップルがウォルマートに対して肯定的な記事を投稿する」という偽ブログを立ち上げました。
始めの方はウォルマートが批判されていましたが、しだいにPR会社エデルマンへの信用問題へと発展しました。
5日間沈黙を貫いたエデルマンでしたが、その後事実を認め謝罪をする事態になりました。
【人気ゲーム機】宣伝のために作った架空個人ファンサイトが炎上
マーケティング会社のZipatoni社が、米ソニーコンピューターエンターテイメントの商品であるPSPを宣伝するため、架空個人ファンサイトを立ち上げた事例です。「Zipatoni社事件」とも知られています。
このサイトでは、PSPを持っていない友人といとこのために、親にPSPを買わせる方法が紹介されていました。
そのほかにも、「all I want for xmas is psp(クリスマスにはPSP以外いらない)」というキャッチ―なサイト名にしたり、商品を絶賛するような内容を書いたりと、宣伝をしていましたが、
若者が書いたとは思えないようなネット用語の使い方だったり、印刷可能のコンテンツが存在していたことにより不自然であると判断されました。
このサイトを怪しく思ったユーザーが調査したところ、Zipatoni社の社員がサイトの登録者や連絡先としてあがり、ステマが発覚したとのことです。
【大手電子機器メーカー】アカデミー賞授賞式の撮影で意図的に製品を使用
2014年のアカデミー賞にて、電子機器メーカーのサムスンはスポンサーの契約をしていましたが、意図的に商品を使わせたことでステマだと発覚しました。
当時のアカデミー賞の司会をしていたエレン・デジェネレスは、サムスンのスマートフォンでブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリー、メリル・ストリープ、ブラッドリー・クーパーなどの人気ハリウッドスターたちと一緒に撮った自撮りをTwitterに投稿しました。
司会者は授賞式の途中もサムスンのスマートフォンを使用していましたが、普段はiPhoneユーザーであり、他の写真がiPhoneで撮影されていたことが発覚、指摘を受けました。
サムスンはこの件に対し、「撮影に自社のスマホが使用され、リツイートされて多くの人の話題になったことは喜ばしいことである」とコメントしました。
【人気ディズニー映画】PRなしのTwitterマーケティング
ウォルト・ディズニー・ジャパンは、映画「アナと雪の女王2」の公開後、7人の漫画家にTwitter上で映画の感想漫画を投稿するよう依頼しました。
しかし、SNS上で複数の漫画家がほぼ同時に映画の宣伝投稿をしたことで炎上しました。その際のTwitter投稿には「PR」表記はついていなかったとのことです。
企業側は一旦ステマであることを否定しましたが、後日、金銭のやり取りが行われていたことが発覚しました。
マーケティング施策として行われていたにも関わらず、「PR」という表記が漏れてしまっていたことを、ウォルト・ディズニー・ジャパンが公式Webサイトで謝罪しています。
「意図していなかった」とは言えども、人気シリーズの映画であったことは間違いなく、多くの消費者がショックを受けた事件であったと言えます。
まとめ
いかがでしたか?
ステマは、費用を抑えながら効果的に売上・知名度向上を得られる手法ですが、消費者を欺くような行為がバレてしまった場合、炎上や信頼を失うような事態にも陥ってしまいます。
国内でも規制が進められているため「バレなければ問題ない」という考えで無作為に取り入れるのはやめた方が良いでしょう。
インフルエンサーマーケティングを実施する際にも、お互いに協議を重ねて問題に発展しない取り組みを行うことが大切です。