Web広告を出稿する際には、Webで広告を出す場合のルールを定めた法律である特定商取引に関する法律や景表法、薬機法、医療広告ガイドラインなど、様々な法律を守る必要があります。広告出稿の際には必ず確認するようにしましょう。
本記事では、代表的な特定商取引に関する法律、景表法、薬機法、医療広告ガイドラインの4つの法律について解説していきます。
現在、違法インターネット広告が野放しになっている
インターネットに広告を掲載して、集客、売り込みなどをするのは現代においてよく行われる手法ですが、これが違法な形で行われ、野放しになっていることが分かっています。
インターネット広告に適用される法律はいろいろあります。しかし、それを守らずに、自由勝手に広告を掲載している例が後を絶たないのです。
法律には罰則がある場合もありますが、規制が行き届いていない状態です。その具体例を以下で見てみましょう。
違法広告の例
ある角栓に関する広告で違法ではないかと見られる例がありました。その広告では、体験談を使って効果保証をしているのですが、これは薬機法に違反する恐れがあります。
また、Yahoo! ニュースのような画面に商品のニュース表示をしているもの、実際にはYahoo! ニュースは表示されていない、というようなケースもあります。偽りのニュースということになり、これは景表法上の優良誤認表示に当てはまり、景表法違反になる可能性があります。
さらに、「キャンペーン終了まであと何分」という表示について実際の状況を示しているのかが不明です。これも景表法上の優良誤認表示に当たるかもしれません。
ここに示したのは違法なWeb広告の一例ですが、同じような例があちこちにあります。
あのメディアにも違法広告が
社会的に信頼されているメディアにも違法広告が掲載されている例があります。
時事ドットコムの例ですが、「絶対使った方がいい」というような大げさな表現を使った広告があります。このような表現に則って勧誘行為が行われ、契約がされた場合は、消費者契約法に違反している場合があります。
時事ドットコムではこのような違法広告による契約でも収益を得ているようです。
Web広告に関わる法律の種類
Web広告については規制をする法律がいくつか用意されています。その中から4つ選んで、特徴の解説をしていきます。
特定商取引法
特定商取引法では、通信販売などの広告について次のような規制を行っています。
▼表示すべき内容
販売業者、及び役務提供事業者は通信販売の広告に表示すべきことがあります。
・代金支払時期・方法
・返品特約
・販売業者の情報(氏名・住所・電話番号など)
・代金送料以外の費用
・商品の種類・品質に関する契約不適合の責任
・定期購入契約の内容
・数量制限や特別な販売状況
・電子メールアドレス
▼禁止される表示
特定商取引法では、次のような表示は禁止されています。
・優良誤認(実際のものより著しく優れている)
▼違反した場合
特定商取引法に違反した場合、民事効や罰則の定めはありませんが、主務大臣が必要な措置を取るように指示したり、業務の停止を命じられることがあります。
景表法(不当景品類及び不当表示防止法)
Web広告に関する景表法の規制は次のようになっています。
▼禁止される表示
Web広告関連で景表法が禁止している表示は以下の通りです。
・有利誤認(実際よりも、あるいは競争業者よりも有利であると偽って宣伝する)
▼広告媒体
景表法で規制される対象は販売者であり、口コミサイトなどの広告媒体は含まれません。
▼違反した場合
景表法に違反した場合、民事効はありませんが、措置命令や課徴金の納付命令の対象となります。
薬機法(医薬品、医療機器などの品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)
健康を謳う商品などについては、薬機法によるWeb広告の規制があります。その規制によると、未承認・未認証の医薬品、医療機器、再生医療等製品については、名称・製造方法・効能・効果・性能に関する広告が何人も禁止となっています。
承認・認証されたものでも、上記の項目について虚偽または誇大な広告を出すことは禁止です。
薬機法に違反したWeb広告を掲載した場合は中止命令の対象であり、刑事罰が科されることがあります。
医療広告ガイドライン
医療広告ガイドラインは医療機関の広告に関するルールを定めたものです。現在は、Web広告も対象になっています。
医療広告ガイドラインで禁止されている広告は次のようなものです。
虚偽広告
・他の医療機関との比較優良広告
・患者の主観に基づく治療の体験談など
・患者を誤認させる可能性のある広告
・公序良俗に反する広告
ただ、禁止表現であっても、条件によっては「限定解除」が適用され、ホームページなどに掲載できる場合もあります。
景表法や薬機法により規制されている広告表現を見てみよう
景表法や薬機法などのWeb広告規制で禁止または制限されている広告表現があります。どのような表現か確認してみましょう。
最上級表現の使い方に注意
広告において最上級表現を使いたくなることもあるでしょうが、この点についてはかなり注意が必要です。「日本一」「最高の」「No.1」などの広告表現は明確な根拠なしで使ってはいけません。
根拠があるのなら、その事実を合わせて表示する必要があります。
比較表現は使い方によっては禁止されている
競合他社よりも優れているという比較広告表現も根拠なしで使ってはいけません。具体的なデータがある場合などの時のみ、使用することができます。
偽りの激安表現は禁止
激安表現を使った広告をよく目にすることがあるでしょうが、偽り表現は禁止です。「激安」「格安」「破格」「超特価」などの表現を使いたい場合も、明確な根拠がないといけません。
完璧表現は事実と異なることが多い
完璧表現を広告で使うことは禁止です。「絶対」「完璧」「完全」「永久」と言っても、そのような商品は存在しないでしょう。事実とは異なることになりますから、使うのはやめましょう。
効果・効能をうたう表現をしてはいけない
食品や健康食品を売り込む場合、効果・効能を謳った広告を使いたくもなるでしょうが、これは禁止です。体にいい影響がある、病気の治療や予防ができるなどと広告に表示してはいけないことになっているのです。
医薬品や化粧品の場合は、承認された効果・効能のみ表示できます。
体験談やお客様の口コミを広告に載せる場合も、効果・効能を含めることはできません。
業界でも広告規制ルールを設けている
各業界でも独自の広告規制を設けています。その内容を見てみましょう。
不動産業界の場合
不動産業界の広告に関しては宅建法の規制があるほか、業界独自の「不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)」があります。
まず宅建法では、次のようなルールを定めています。
・広告開始時期の制限
・取引態様の別を明示
表示規約では、かなりきめ細かいルールが定められています。例えば、物件までの距離・所要時間の表示の仕方、広告文字の大きさなどです。
そのほか、消費者を誤認させる恐れのある用語の使用を禁じています。
化粧品や健康食品の場合
化粧品の広告や薬機法の規制対象になります。そのほか業界独自の自主規制として「化粧品等の適正広告ガイドライン」もあります。
健康食品の広告は健康増進法や薬機法の対象です。ただ、健康食品そのものは薬機法の対象ではありませんが、広告で効果・効能を謳うと薬機法違反になります。
健康食品では、機能性表示食品に独自の適正広告自主基準があります。
酒類の場合
酒類については、「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」というものがあります。法律を逸脱せず、適正な飲酒環境を醸成するための広告規制です。
マスメディアの場合
マスメディアの広告自主規制には次のようなものがあります。
・日本新聞協会の新聞広告倫理綱領
・日本雑誌広告会の雑誌広告倫理綱領
テレビについては、民放連放送基準がCMの細かい規制を設けています。
貸金業界の場合
日本貸金業協会では、協会員の広告に関して自主規制基本規則第43条に基づいた事前出向審査を行っています。
まとめ
この記事では、Web広告に関する法律についての説明をしました。
現時点では違法なWeb広告を出そうと思えば、出せないことはありません。
しかし、責任ある企業として消費者から信用される活動を行うためには、法律の基準に則った適正なWeb広告を掲載する必要があります。
それが企業のイメージアップにもつながり、集客や売上向上にも寄与するでしょう。