ROASは、広告運用を実施する際、効果を確認するための重要な指標として認識されています。
しかし、なかにはまだROAS運用のポイントやメリットについて把握できていない方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ROASの意味やメリット、運用時のポイントについてそれぞれ詳しく解説していきます。最後まで読むことで、ROAS運用について理解を深めて、今後のマーケティング活動に役立てることができるでしょう。
1.ROAS運用について
ROAS運用について具体的に理解する前に以下項目について確認しておきましょう。
- そもそもROASとは
- CPAやROIとの違い
それぞれの情報について詳しく解説します。
1−1.そもそもROASとは
ROASは「 Return On Advertising Spend」の略称です。
広告の費用対効果を確認するための指標で、売上から算出されることが特徴として挙げられます。
ROASを導き出した際、数値が高いほど広告による売上への貢献度も高いことがわかります。広告手法を実施する際は、内容やターゲティングに問題ないか判断し、PDCAを回す必要があるため数値を元にすることが大切です。
ROASを参考に運用を行えば「より効果の高い手法に予算を追加する」など、判断をする際の明確な指標ができます。
1−2.CPAやROIとの違い
マーケティング界隈では、ROASの他にも重要な指標が数多く存在しているため、それぞれの用語を混同しないように注意しましょう。
ROASとよく比較される指標として代表的なのは「CPA」や「ROI」などです。
CPAはコンバージョン一件あたりの費用を表した値のことで「Cost Per Action」の略称です。
「資料請求・お問い合わせ」や「購入」など、1件ごとのアクションに広告費がどれくらいかかったがわかります。
CPAが低いほど、投じた広告費の成果が高いと判断できるので、Webサイトの運用を行う際は参考にすることがおすすめです。
また、ROIは「 Return On Investment」の略で、日本語に変換すると「投資収益率」という意味です。
ROASが売上を表した指標であるのに対して、ROIは利益を元にしています。
広告による利益を示す数値として参考にできるので、ROASと合わせて有効活用していきましょう。
2.ROAS運用で数値を算出する方法
ROAS運用では、単純に現在の数値を求めるだけでなく、適切な目標を設定することも大切です。
ROASを計算する式
ROASを設定する方法
上記2つについてそれぞれ解説していくので、どのようにROASを算出していくのか見ていきましょう。
2ー1.ROASを計算する式
ROASを算出したい場合「売上÷広告費×100」の式で計算可能です。
例として、売上が100万円で広告費が25万の場合、次の式のようになります。
- 100万÷25万×100=400%
上記の場合、25万円の広告費に対して、400%の売上を獲得していると判断可能です。
2−2.ROASを設定する方法
ROASを設定する際は、以下2つの指標を確認する必要があります。
- 利益が出ないROAS
- 目標にするROAS
たとえば、1万円の商品のうち、人件費や材料費が50%である場合、購入されたときの利益は5千円になります。
1件の購入を獲得するための広告費として5千円かかっている場合は、手元に利益がほとんど残らない計算です。
「1万÷5千×100=200%」となるので、利益がギリギリ出ないROASは200%であることが分かりました。
次に、仮に目標とする利益が2千円である場合、広告費を3千円にする必要があるので「1万÷3千×100=333%」の式となり「目標にすべきROASは333%である」と算出できます。
3.ROAS運用のメリット・デメリット
ROASは、広告運用を実施する際に指標として活用できますが、メリットやデメリットも存在します。
どんな利点・欠点があるのか理解できていないと、導き出した数値を元に誤った判断をしてしまうこともあるので注意が必要です。
ROAS運用のメリットとデメリットについてそれぞれ解説していきます。
3−1.メリット
ROAS運用を実施すると、広告による売上への貢献度を洗い出し、効果が見込めない施策を発見できます。
広告による成果を可視化するには、指標を用いることが大切です。
予算の変更や施策の刷新など、次の行動に移しやすくなることが大きなメリットだといえるでしょう。
ROASの値が低い場合は、広告内容の変更やターゲティングの見直しを図ることがおすすめです。
ROAS運用でのポイントについては後述で詳しく解説します。
3−2.デメリット
ROASは広告による売上を元にしているため、利益については計算できません。マーケティングでは「売上」と「利益」はどちらも重要な指標の1つです。
売上が高くても、費用を差し引いた利益の値が低ければ、施策の方向性は悪いといえるでしょう。
利益率が低い商品ばかり購入されていることもあるので、広告の施策を行う際はROASだけでなく、ROIも参考にすることが推奨されます。
4.ROAS運用と商材の関係性
ROAS運用を行う際は、向いてない商材と向いている商材についても把握しておくことが大切です。
自社で扱っている商材にROASが合っているのか確認していきましょう。
4−1.ROAS運用が向いてない商材
ROAS運用が向いていない商材は、店舗販売などによって売上が発生する商材です。
Webサイト上でユーザーのアクションが完結しない場合、発生したコンバージョンの価値は判断しづらくなります。
店舗経営を行なっているのであれば「来店率」などの指標を活用して運用を行なった方が良いでしょう。
また、ROASは売上を元にした指標なので、問い合わせや資料請求などのコンバージョンを設定している場合はCPAを元にすることがおすすめです。
4−2.ROAS運用が向いている商材
ROASは店舗で売上が発生する商材に向いていない一方で、Web上で売上が決まる商材に適しています。
代表的な例として挙げられるのはECサイトです。ECサイトではさまざまな商品を扱っているため、ROASを元に成果を判断するのが適切だといえます。
CPAでも発生した購入1件あたりの広告費用を導き出すことができますが、複数のジャンルや値段を設定しているECサイトでは不向きです。
また、ECサイトではユーザーが何点かの商品を一度に購入することもあるため、コンバージョン1件あたりの価値が変動します。
コンバージョンの価値が変わる場合は、ROAS運用がおすすめです。
5.ROAS運用のポイント
ROAS運用のポイントとして以下5つが挙げられます。
- ツールの活用
- 出稿媒体の選定
- クリエイティブの改善
- ターゲティングの策定
- 顧客単価の向上
実際にROAS運用を実施する際は、どうすれば効率的に活用できるのか考えながら試みることが大切です。
5つのポイントについて順番に解説していきます。
5−1.ツールの活用
ROASを元にした運用を進める際、ツールを活用することでより効率的な改善を実施できます。
たとえば、Webサイトの改善を行う場合は、アクセス解析ツールがおすすめです。
「Google Analytics」や「Google Search Console」などを利用すれば、ユーザーの流入経路やクリック率などを把握できます。
Microsoftの「clarity」では、ヒートマップを確認して「サイト上でどこが離脱率が高いのか」や「最もクリックされたリンクはどれか」を簡単に理解できるので便利です。
クリエイティブに関する効果を判断したい場合は「Google オプティマイズ」などのABテストツールも活用しましょう。
現在では、各企業から無料で提供されているツールが豊富にあり、ネット上にも利用方法についての情報が溢れています。
最初は使い方が分からなくても徐々に慣れていけば問題ないので、まずは気になるツールに触れてみることが大切です。
5−2.出稿媒体の選定
現在、Web広告の出稿先はSNSや動画配信サイトなどさまざまあります。
それぞれの媒体はユーザー層や提供している広告メニューが異なるため、広告の利用を検討している際は適切な出稿先を選択することが推奨されます。
たとえば、主要なSNSの1つである「Instagram」は比較的女性の利用者が多いです。
ショート動画で一躍人気になった「TikTok」は若い世代を中心に活用されているため、Z世代に向けた訴求で効果を発揮しやすいでしょう。
また「LINE」は国内において、生活インフラとして幅広い年代に活用されているため、多くのユーザーにアプローチできます。
ROASの算出から現在の状況を加味して、効果が望める媒体を選択することが重要です。
5−3.クリエイティブの改善
ユーザーの目に留まりやすいようにクリエイティブを改善することで、コンバージョン率を改善できる可能性が高まります。
クリエイティブ内で利用するデザインやコピーに変化を加えて、ABテストなどを行なってみましょう。
ユーザーに刺さるクリエイティブには決まりがないため、季節や時代に合った成功法則を発見していくことが大切です。
地道な道のりではありますが、クリエイティブは広告の成果を大きく左右する要素なので、特に力を入れてください。
5−4.ターゲティングの策定
良質なクリエイティブを作成できても、適切なターゲットを設定していないと意味がありません。
カスタマージャーニーマップの確認やペルソナ設定を通して、適切なターゲティングを実施できるようにしましょう。
カスタマージャーニーマップは、ユーザーが商品やサービスについて認知してから購入までの流れを可視化したものです。
ユーザーがどのような流れを辿ってアクションを行うのか把握できるため、発生する接点に合わせて適切な施策を打てるようになります。
また、ペルソナ設定では、ユーザーの年齢・性別以外にも、住んでいる場所や趣味など細部まで想定することが重要です。
ターゲティングを正しく策定して、広告による情報を伝えたい相手に行き届くようにしましょう。
5−5.顧客単価の向上
ROAS運用を進めていく場合、顧客単価の向上を図ることもポイントの1つです。
クロスセルやアップセルを実施して顧客単価を上げていきましょう。クロスセルは購入を検討している商品とは別に、関連した商品も検討してもらう手法です。
多くの人に利用されている「Amazon」などのサイトでは、今でも積極的に取り入れられています。
アップセルは、現在購入してもらってる商品よりもさらにグレードの高い商品を購入してもらう手法のことです。
クレジットカードのアップグレードや、よりスペックの高いPC機材などを提供することが該当します。
新規開拓も重要ですが、誰でも情報を獲得して商品の検討ができるようになった昨今では、顧客単価を上げる施策も取り入れることがおすすめです。
クロスセルとアップセルを実施して売上の底上げを行なっていきましょう。
6.ROAS運用時の注意点
ROAS運用時には、以下の注意点を把握することが大切です。
- ROASだけに頼りすぎない
- 直近の数値を参考にする
- 重要視する基準を決める
ポイントだけでなく、注意事項にも目を向けて運用を行なっていきましょう。
それぞれの事項について詳しく解説していきます。
6−1.ROASだけに頼りすぎない
ROASを参考にして広告の運用を行なっていく場合、ROASの数値だけに頼りすぎないことが重要です。
先述したように、ROASはあくまでも「売上」を元にした指標であるため、利益や他の数値を図ることはできません。
ROIやCPAなどの他の指標も参考にしないと、実は効果が出ている施策を止めてしまうこともあるので注意が必要です。
マーケティング業界では利用される指標が多岐にわたるため、それぞれの意味を理解して適切な場面で使えるようにすることが推奨されます。
6−2.直近の数値や昨年の数値を参考にする
ROAS運用を行なっていると、季節的なイベントなどによっても売上は変わるので、直近の数値や昨年の数値を参考にすることがおすすめです。
数値を固定してしまうと、キャンペーンを行なったときや繁忙期に広告予算を十分に割けず、機会損失が発生することもあります。
また季節的な要因があると考えられるのであれば、昨年の同じ時期はどうであったのか数値を比較するのがおすすめです。
今までのデータから先を見越してROASを活用しましょう。
6−3.重要視する基準を決める
ROAS運用を実施する際は、LTV(顧客生涯価値)の向上を目指すのか、一度の売上を伸ばすのか決めることがおすすめです。
LTVの向上を目指す場合は、長期的な目線での投資が重要になるので、広告費に対して初回の売上が少なくなることもあります。
初回の売上を元にROASを計算すると導き出される数値は低くなりますが、四半期や年間で計算すると目標を達成していることもあるでしょう。
基準に合わせて初回の売上か期間を設定して計算するのか決めてください。
四半期や年間でROASを計算したい場合は「LTV(期間)÷広告費×100」の式で算出できます。
7.まとめ
いかがでしたか?
ROASは広告運用を実施する際に、効果を確認するための重要指標のひとつです。
ROIやCPAなど、他の指標と混同しないように意味を理解しておくことをおすすめします。
ROASは売上を元にした数値であるため、利益などについて知りたい場合は他の指標を使い分けることが大切です。
ROASの数値だけに頼りすぎた状態で広告運用を行わないようにしてください。
実際にROASで運用を行う際は、ツールの活用やクリエイティブの改善などを行なって最適化を図っていきましょう。