ビジネスオーナーの方や、マーケティング担当者の方は、自社商品がもっと売れるようにするために、日々様々な壁にぶつかっていることと思います。
「売るためのプロモーションに予算を多く割いているのに……」
「店舗の立地は良いのに……」
などなど、施策を投じても集客に関する悩みは尽きません。
実は商品やサービスそのものに問題がある訳ではなく、売っていくための戦略に問題があるケースが多いのです。
そこで、新商品の新規参入や既存商品のマーケティングを見直そうと考えている方必見の、「4P分析」を紹介していきます。
1.4P分析とは
2.Product(製品)
3.Price(値段)
4.Place(流通)
5.Promotion(プロモーション)
6.4P分析の事例
6-1.ヘルシア緑茶
6-2.ハズキルーペ
6-3.スターバックスコーヒー
7.まとめ
1.4P分析とは
4P分析とは、マーケティングに関わる以下の4つの要素を分析するフレームワークのことです。
- Product(何を作るか)
- Price(いくらに設定するか)
- Place(どこで売るか)
- Promotion(どうやって商品を知ってもらうか)
これらの頭文字が「4P」の由来であり、別名「マーケティングミックス」とも呼ばれています。
商品の新規参入を計画、もしくは既存商品のマーケティングを見直すときにこれら4つの領域で情報をまとめることで、自社商品が持つポテンシャルを把握するのに役立ちます。
各項目を考えるにあたり、「ターゲット」の選定、「ペルソナ」の作成といった“誰に売るのか”を明確に決めておく必要があります。
「ペルソナ」についてはこちらの記事で説明しています。
【入門】ペルソナを究極に分かりやすく解説!マーケティング関係者必見
4Pの各項目を説明していきます。
2.Product(製品)
まず、売り出す製品について考えなければなりません。
Product(製品)の要素として、例えば以下が挙げられます。
- 商品名
- 機能・品質
- デザイン
- パッケージ
商品を構成する要素はこれら以外にもたくさんあるでしょう。
これらの要素が重なってひとつの商品の形となった時に、ターゲットにとってどのような価値が提供できるのか、またそれは競合の商品と比較した時の優劣はどうか、といった視点で分析をしましょう。
3.Price(値段)
Productのつぎに、価格設定(Price)を考えます。
よくある発想として、「競合がこの値段で売っているから、それよりも安く売ろう!」
「原価や人件費を考えて、利益が出るギリギリの価格で売っていこう!」という“安い=売れる”に基づいた価格設定を行いがちですが、本来のマーケティングの考え方は違います。
なぜなら、価格は「信頼感」や「ブランド力」の一指標にもなるからです。
例えば、化粧水やサプリなどの“使ってみないと違いが分かりにくい”ものでも、高価な商品が売れているケースが多くあります。
“安かろう悪かろう”という言葉があるとおり、低価格の商品は品質も悪いのではないかという印象を与えることもあります。
それに、利益を削って自社事業の首を絞めてしまい、マーケティング施策のための費用が少なくなっては本末転倒です。
ここでも、誰に対して商品を売っていくのかが大切になります。
例えば、金銭的余裕のある主婦層をターゲットに商品を販売するとき、商品の品質自体が素晴らしいものであっても、安価な価格設定にしてしまうとチープ感が出てしまい手に取ってもらえない可能性が高まります。
商品のブランドとターゲット、自社の利益も考えた上で価格設定を行いましょう。
また、期間限定の割引やキャンペーンなどもPriceの項目で考えていきます。
4.Place(流通)
つぎに、商品を“どこで売るのか”をPlaceの領域で分析します。
商品の売上は、どこで売るかがたいへん重要です。
例えば、俗に言う高級商品を販売する時に、まずコンビニに展開しますか?
順当に考えれば、高級商品を買うモチベーションが高い人の多い百貨店などへ展開すべきでしょう。
また店内のどこに配置されるかも売上に直結する重要な要素で、販売店との交渉を上手くやり、競合の商品よりも良いポジションを確保しなければなりません。
自社の店舗を構えていく場合は、立地や内装も大きなポイントです。
5.Promotion(プロモーション)
各項目が決まったら、最後にターゲットと商品を引き合わせる=商品を認知してもらう方法を考えます。
一口に「プロモーション」と言っても、その内容は様々です。
大別すると以下の3つのジャンルに分けることができます。
- 広告・宣伝
- 広報(PR)
- 販促
その中の広告一つをとっても、TVCM、OOH、新聞、インフルエンサー、運用型広告……と、多岐にわたります。
すべてを同時に実施できるような巨大なプロモーション予算を持つ企業であれば話は別ですが、なかなかそうもいきません。
検索エンジンの普及以前は、情報収集の手段が多くなかったため、幅広いユーザーへ情報を画一的に届けられるマス広告が有効でした。
しかし、今は検索エンジンやSNSなどの客観的な情報が手軽に手に入るようになり、企業は商品を認知してもらう方法を工夫しなければなりません。
一方アドテクの発展により、企業はテクノロジーを駆使して柔軟にターゲットを指定する広告をインターネット上で配信できるようになりました。
プロモーションも、“誰に対して行うのか”を念頭に置かなければ成功はありません。
ユーザー行動を想定して、親和性の高いプロモーションをリストアップし優先順位をつけましょう。
6.4P分析の事例
4P分析は企業の大小を問わず様々に活用されています。
今回は、差別化に成功した有名ブランドでの事例を3つご紹介します。
6-1.ヘルシア緑茶
「ヘルシア緑茶」は、花王が展開する特定保健用食品(トクホ)認定の緑茶ブランドです。
「痩せたいが運動が続かない人」や「お腹周りが気になっているサラリーマン」をターゲットとし、飲むだけで「内臓脂肪を減らすのを助ける」とうたって一時期お茶飲料で不動の売れ筋1位でした。
接待などの飲み会が多く、しかし運動する時間もないため楽して痩せたいと思っている中年男性を中心に、絶大な人気を手に入れました。
このヒットの要因を、4P分析に当てはめて見ていきましょう。
Product
- 通常苦いお茶は飲みたくないが、強い苦味が高濃度の茶カテキンを連想させ、効き目があるものと理解させる
- パッケージも350mlと小さめで効果が凝縮されていると感じる
- 更に効能を権威付けるためにトクホを所得している
Place
- 通常の緑茶飲料よりもやや高めに設定。ただの飲み物としては高いが、薬やサプリメントより安価に手に入れることができる
Place
- 誰でも手に届くコンビニや薬局。痩せたいサラリーマンをターゲットとしており、やや高級感を出しているため自動販売機での販売は控えめ
Promotion
- テレビCMには過去に香川照之、現在は柳沢慎吾を起用。サラリーマンの共感を呼ぶ広告となっている。
- 柳沢慎吾のコミカルな動きで印象に残りやすい。
緑茶飲料の市場全体を狙うのではなく、その中でも“痩せたい中年男性”にスポットを当て、ダイエット飲料として販促を行ったため成功に繋がったのではないでしょうか。
現在はサントリーの「伊右衛門特茶」など競合他社が追随する商品を発売しており、「トクホ緑茶」市場の激化が進んでいます。
各社のつぎの仕掛けが見ものですね。
6-2.ハズキルーペ
ここ最近、「ハズキルーペ」の名前を全く聞いたことがないという人は少ないのではないでしょうか。
それもそのはず、広告費になんと年間100億円もの投資をしているため、知名度が一気に伸びています。
ハズキルーペのターゲットは、40~50代の“老眼鏡を使う(か迷っている)層”です。
新聞や小さな文字を見るのに対してストレスを感じる反面、老眼鏡を使うことへの抵抗がある人向けのメガネ型ルーペです。
ハズキルーペは、高齢化する社会において伸びる市場に注目しています。
日本国内のみならず、先進国は軒並み高齢化傾向にあり、海外進出にも期待できる市場に乗り込んで成長していると考えます。
ハズキルーペの4P分析をしていきましょう。
Product:
- ハズキルーペはメガネではない。ルーペ(虫眼鏡)をメガネ型にした商品
- “お尻で踏んでも壊れない”ほどの頑丈さ
Place:
- 約1万円と一般的な眼鏡と変わらず手に届きやすい価格設定。老眼になるユーザーは全員がターゲットであるため、高価すぎるプライシングは機会損失。
Place:
- 店舗に実物を置くことで試着してもらい、メリットを実感したうえでの購入を促す
家電量販店:若年層のEC利用が増加し、ターゲットの年齢層の来店割合が高い
書店:上記の年齢セグメントに加え、本を読みたいが老眼を気にして活字を読むのを避けている人に対してのソリューションとして陳列
Promotion:
- インパクトのあるCM広告、電車広告を大量展開。特にCMは代表自ら“総監督”として指揮を執るこだわりようで、話題を呼ぶ
- ターゲット年代ごとにタレントを起用(50代以上:渡辺謙、30~40代:松岡修造、20代:武井咲)し、「老眼鏡」の古くさいイメージをなくす
「本当に世の中の文字は…小さすぎて読めない!」と叫ぶ渡辺謙さんのイメージは一度見たら忘れられません。
特にプロモーションの領域において上手くいった事例と言えるでしょう。
6-3.スターバックスコーヒー
営業先で空いた時間に仕事をしたい人、家ではかどらない勉強を外でしたい人、落ち着いた雰囲気でおしゃべりをしたい主婦などがターゲット。
皆さんご存知“スタバ”を4P分析します。
Product:
- 業態はカフェであるが、価値の本質はコーヒーではなくサードプレイスとしての場所・時間
Place:
- コーヒー1杯の価格帯は400円前後と高め。その高さゆえに長居しても気まずくなく、スタバの利用に対するブランド体験を保証している
Place:
- クオリティ維持のため、ほぼ全ての店舗が直営店。フランチャイズ戦略をとるコンビニなどと違って店舗展開しにくい
- 人材の確保(店長は必ず正社員)、土地の確保(会社が買い上げる必要がある)が難しい
Promotion:
- CM広告は今まで一度も実施したことがない。立地や内外装に投資し、利用者のSNS投稿や口コミが広がっていくことでブランド認知度を高める
あれほど有名なスタバがCMを一度も実施していないのは意外でした。
直営店中心の高品質なサービスがファンを獲得している構図が分かります。
7.まとめ
4P分析を、事例を踏まえて説明しました。
売れる商品を作るにあたって、誰に対して販売するのか(ターゲット、ペルソナ)をまず明確に設計し、それに対して現在の4Pを照らし合わせて買ってくれるかを考えれば、何かしらの改善点が見えてくるはずです。
価格を安くして、CM広告をたくさん打って、店舗からネットまで様々な流通経路を設けて色んな人に買ってもらおうという戦術は現実味がありません。
4P分析で、今すぐ実行すべき施策を見える化できるでしょう。
4Pの中の「プロモーション」においてお悩みの方は、インフィニティエージェントまでご相談ください。