今回は、Googleが提唱する概念である3Aについて説明します。
広告効果を最大化するために自動化が必須とされていますが、手動入札で効果を出すテクニックと、自動化を円滑に運用するテクニックは異なります。過去にもGoogleは、HagakureやGORINを発表し、獲得効率を上げる運用方法を啓蒙してきましたが、3Aはそれらの更なる更新版と言えます。
そもそも3Aを実施するにあたって、大切になるHagakureなどの初期設定についても併せて振り返っていきましょう。
1.3Aとは何か?
1-1.3Aとは?
3AとはGoogleが2018年以降に推奨している広告運用の指標で、Automation(スマート自動入札)、Attribution(アトリビューションモデルの変更)、Audience(オーディエンスリストの活用)、この3つの頭文字を取ったアカウント構造戦略のことを指します。
1-2.3A発表までの経緯とGoogleの課題
リスティング広告のクリック課金制が始まって以来、手動入札による細かい運用が重要であると言われてきました。
むしろ自動入札は精度が低いから選んではいけない、というルールがあった広告代理店も少なくなかったのではないでしょうか。
それは”当時は”正しい考え方でした。リスティング広告は2002年から開始された、まだ歴史の浅い広告メニューです。Google広告(当時はGoogle AdWords)開始当時は、確実に入札したキーワードに最適な広告文を表示させるため、1キャンペーン・1広告グループ・1キーワードのような構成が一般的でした。
つまり、キーワードの数だけキャンペーンと広告グループが存在するというような構成です。
このような”工数主義”がもたらした結果は、運用現場の疲弊と広告表示の機会損失でした。
例えば、100個のキーワードを登録したアカウントを運用した時に、その数だけキャンペーンや広告グループがあれば、その都度確認して、日予算や入札単価を調整して……という手間がかかります。
特に、代理店での運用の場合その作業を複数クライアントで行うことになります。仮に、1人10社のクライアントを担当した場合、Google広告、Yahoo!スポンサードサーチの2メニューで、200キーワード×10社で2000個ものキャンペーンを調整することになります。
……その工程にかかる人的リソースを考えると、広告代理店のビジネス的な費用対効果が良くないことは明らかです。(筆者がリスティング運用を始めたのはHagakure推奨後だったので、以前の運用に関する話を聞くとゾッとします……)インハウス運用の担当者にとっても、他のマーケティング施策に充てる時間を奪うものでありました。
また、運用結果の面では、CPAが抑えられる一方で、細かな日予算不足の積み重なりによるインプレッションシェアの損失が生まれやすく、これも健全な状態とは言えませんでした。
Hagakure
これらの課題を解決すべく、Googleが定めた推奨アカウント構成がHagakureです。
今回は3Aがメインのため割愛しますが、1つのキャンペーン、広告グループに情報を集約するという運用方法を推奨しました。具体的には、検索広告なら指名キーワード/ブランドワードのキャンペーン、それ以外の一般的なキーワードのキャンペーンの2つで十分であると言えるでしょう。この2つを統一して、キャンペーンは1つで良いとする説すらあります。
なぜなら、予算管理以外の要素は、大体がグルーピングで解決できる内容となっているからです。入札や日予算調整等の細かい作業を行うよりも、自動入札を上手く操縦する運用が求められていると言えます。
GORIN
Hagakure構造のアカウントの効果を更に改善していくために、Googleが推奨したGORINのゴールは、ユーザーが求めた情報を正しく・適切なタイミングで届けることです。GORINを構成する主な要素は下記の6つです。
- 自動入札の導入
- 広告ローテーションの自動最適化
- 表示オプションの充実
- 検索広告向けリマーケティングの導入(RLSA)
- 検索パートナーへの配信設定
- 予算によるインプレッションシェア損失率の低減
GORINの実装には、Hagakure構造が必須となります。
例えば、自動入札(拡張CPC含む)を導入することで、入札金額が低かったためにリーチできなかったユーザーへの広告表示が可能となりますが、これはHagakure以前の細かいキャンペーン構成では予算の制限が頻発するために導入しづらい施策でした。
このようにHagakure構造に加えてGORINを実装することで、機械学習に必要なインプレッション数を最大化させることができます。この時、Googleは次なる壁に直面します、それは広告のスケールアップでした。
様々な機能が実装され、それらは主にCPAを下げることに使われてきました。リスティング広告業界全体にCPA至上主義…アカウントの縮小最適化が定着する恐れがあったのです。
もちろん広告の費用対効果は重要ですが、利益化の基準をクリアしているキャンペーンは同予算で更にCPAを下げることよりも、CPAをキープしてCV数を増やした方が事業の拡大に繋がりそうであることは自明です。そこでGoogleは、現状効果が出ている広告をスケールアップさせる意味で3Aを発表し、各アカウントでの導入を進めています。
2.3Aの機能詳細
2-1.Automation(スマート自動入札)
現在、Google広告の自動入札(スマート自動入札戦略)は主なラインナップは以下となっています。キャンペーンの状態や、月のコンバージョン数に合わせて選択してください。
拡張クリック単価
推奨:全てのキャンペーン、予算による制限なし
コンバージョン数の最大化
推奨:CV15以上/月、IMPシェア90%以上
目標コンバージョン単価
推奨:CV30以上/月、予算による制限なし
目標広告費用対効果
推奨:CV100以上/月、予算による制限なし
必須:CV15以上/月
スマート自動入札では、管理画面上では調節できない微細なシグナル(OS,ブラウザ,検索パートナー,過去の検索語句etc)も用いて最適化を図るため、ポテンシャルを引き出せれば手動入札以上の結果が得られるはずです。
2-2.Attribution(アトリビューションモデルの変更)
ユーザーが複数の検索によってコンバージョンした場合、ラストクリックのキーワードのみを評価するのではなく、過去の広告接触も評価することによって見込みのあるユーザーとの接触機会を最大化し、自動化のためのデータ蓄積にも活かそうという機能です。
アトリビューションモデルもいくつかある中で、データドリブンモデル(貢献度を自動最適化)が推奨されていますが、30日で15,000クリック、600コンバージョンが必須条件であるため、導入できるアカウントは限られます。参考までに、弊社で活用することが多いのは、ラストクリックに近いほど貢献度が大きいとする減衰モデルです。ほかのモデルと比較してラストクリックに近い評価となり、スムーズに導入できるのが利点です。
2-3.Audience(オーディエンスリストの活用)
GORINを推奨し始めた時期と比べると、ターゲティング可能なオーディエンスも増えました。検索広告では、検索広告向けリマーケティングのみならず、検索広告向け類似ユーザーリスト(SAS)が検索広告向け購買意向の強いユーザー(IMSA)など、設定できるオーディエンスが増え、設定することで入札のシグナルも増え、改善のヒントとなります。
3.まとめ
今回は3Aの概要の説明と、その基礎にあたる初期設定についてお伝えしました。
Googleが目指す未来は、広告運用の作業は機械学習で最適化、最大化する。その分、運用者やマーケターはクリエイティブな作業や事業戦略に時間を使うというものです。しかし、手放しでアカウントの効果が改善するようになるのはまだまだ先のことですので、自動入札をコントロールできるように行う設定や、日々確認すべき事項があることもまた事実です。
3Aの導入に疑問やお悩みがある方は、お気軽にご相談下さい!