
GA4でデータ分析をしていると、
「過去のレポートを開くたびに数値が少し違う」
「年間データと月別データを合算しても一致しない」といった経験はありませんか?
この現象は「サンプリング」という仕組みが原因かもしれません。
本記事では、
GA4のサンプリングの仕組み、発生条件、および回避策を実務に役立つよう解説します。
1. サンプリングとは?
サンプリングとは、
膨大なデータの中から一部を抽出して分析する仕組みです。
すべてのデータを処理するには時間がかかるため、
代表的なサンプルを使って全体の傾向を推測します。
例えば、
全国1万人のアンケート結果があるとき、全員分を集計して分析するのは大変です。
そこで、
1,000人分だけを抜き出して集計・分析し、その傾向を全体に当てはめる、
これが「サンプリング」の考え方です。
GA4では、
データ量が非常に多い場合や、探索レポートなどで複雑な条件を指定した場合に、
自動的にサンプリングが適用されることがあります。
これによりシステムへの負荷を軽減し、レポートを素早く表示できるようになります。
ただし、
サンプリングが適用されると全データではなく抽出された一部のデータをもとに
数値が計算されるため、厳密な分析や正確な比較を行いたい場合は注意が必要です。
2. サンプリングが発生する条件
GA4では、
処理するデータ量が一定の基準を超えると、
自動的にサンプリングが行われることがあります。
イベントレベルのクエリ(分析処理)上限は、標準のGA4プロパティで1,000万件、
Google アナリティクス 360(有料版)では、最大10億件が目安とされています。
そのため、1回のレポートや探索で処理するイベント数がこの上限を超えると、
サンプリングが発生して一部のデータのみで集計される可能性があります。
特に、以下のようなケースでは、サンプリングが発生しやすくなります。
- 長期間のデータを一度に分析するとき:
1年間や複数年にわたるデータを一度に分析しようとすると、
処理するイベント数が膨大になるため、サンプリングが発生しやすくなる - 複雑なセグメントを使うとき:
複数のディメンションや条件を組み合わせた複雑なセグメントを使用すると、
データ処理の負荷が増大し、サンプリングが発生しやすくなる - 探索レポートで詳細な分析を行うとき:
標準レポートより柔軟な分析ができる探索レポートで、
カスタムディメンションやメトリクスを多用するとクエリが複雑化し、
サンプリングが発生しやすくなる - トラフィック量が非常に多いサイトの場合:
ECサイトやニュースメディアなど、
月間数百万件以上のイベントが発生する大規模サイトでは、
通常のレポート表示でもサンプリングが発生しやすくなる
3. サンプリングが発生しているか確認する方法
GA4でサンプリングが適用されているかどうかは、
レポート画面右上の「データ品質アイコン」で確認できます。

緑色の「✔」アイコンで「非サンプリング データ」と表示されている場合は、
利用可能な全データを使用しており、サンプリングは行われていません。
一方で、
赤い「!」アイコンが表示され、
クリックすると「サンプリング率の高いデータ」と表示される場合は、
サンプリングが適用されています。
このとき、
「利用可能なデータの○%に基づいています」というメッセージが表示されます。
この数値が100%に近いほど、より多くのデータが使用されており、
レポートの精度が比較的高い状態です。
逆に、
パーセンテージが低いほど、使用されるデータが少なく、
分析結果にばらつきが生じやすくなります。
4. サンプリングを回避する方法

サンプリングを避け、
より正確なデータ分析を行うための代表的な手法を紹介します。
データ量や分析目的に応じて、最適な方法を選びましょう。
4-1. 分析期間を短くする
最も手軽で効果的な方法は、一度に分析する期間を短くすることです。
【実践例】
- 1年間のデータを分析する場合 :四半期ごと、または月単位に分割して分析
- 年間トレンドを把握したい場合 :各月のデータを個別に取得してから統合
この方法により、
1回のクエリで処理するイベント数を削減でき、サンプリングの発生を抑えることが可能です。
一方で、分析工数が増えるため、分析の目的と優先度を考慮して判断しましょう。
4-2. 不要なディメンションや指標を削減する
レポートに含める項目を最小限に絞ることで、クエリの負荷を軽減できます。
【具体的な対策】
- 使用するディメンションを1〜2個に限定する(一般的な目安)
- 必要なメトリクスだけを選択し、余分な指標は除外する
- 複雑なセグメントを避け、シンプルな条件設定にする
探索レポートで詳細分析を行う際は、
「本当にこのディメンションは必要か?」と
自問しながら、分析設計を見直すことがポイントです。
4-3.「BigQuery」へエクスポートして分析する
より確実にサンプリングを回避する方法は、
GA4のデータを「BigQuery」にエクスポートして分析することです。
BigQueryとは、
Googleが提供するクラウド上のデータ分析プラットフォームで、
サンプリングが適用されていない生データにアクセスできます。
ただし、
BigQueryを活用するには、「SQL」という言語の知識が必要です。
SQL(エスキューエル)とは、
データベースに保存された情報を抽出・集計・分析するための言語です。
導入ハードルはやや高めですが、
正確なデータをもとに意思決定を行いたい企業にとって非常に有効な手段です。
特に、
大規模なサイトを運営している場合は導入を検討する価値があります。
4-4.「Google アナリティクス 360」へアップグレードする
月間のイベント数が数千万を超えるような大規模サイトを運営している場合、
Google アナリティクス 360(GA4 360)への移行も選択肢の一つです。
GA4 360では、
サンプリングが適用される上限が「最大10億イベント」と、
標準版GA4の約100倍に相当します。
一方で、
参考値として「年間、数百万円規模のコスト」が発生する場合もあるため、
導入には慎重な検討が必要です。
データ活用の重要性や事業規模を踏まえ、
投資対効果を十分に検討した上で導入を判断しましょう。
5. まとめ
GA4のサンプリングは、
大量のデータを効率的に処理するための重要な仕組みですが、
分析の目的によっては予期せぬ数値のズレを引き起こすことがあります。
【本記事のポイント】
- GA4でのサンプリングは「1,000万イベント」を超えると自動適用される
- 画面右上の「データ品質アイコン」で適用状況とサンプリング率を確認できる
- 主な回避方法は「分析期間の短縮」「項目の削減」「BigQueryの活用」
「GA4 360への移行」がある
全体的な傾向を素早く把握したい場合はサンプリングが役立ちますが、
正確な数値が必要な意思決定の場面では、
BigQueryの生データを活用するなど適切な回避策を講じましょう。
サンプリングの仕組みを理解し、
目的に応じて上手に使い分けることで、
GA4をより効果的に活用したデータ分析の実現が可能です。
まずは、
自社のGA4でサンプリングが発生しているかを確認することから始めてみてください。
※本記事の参考:アナリティクス ヘルプ(データのサンプリングについて, [GA4] アナリティクスでデータが保存され表示される仕組みを理解する), Google Cloud
※本記事は公式情報をもとに作成していますが、一部当社の見解を含みます。また、記載内容は効果や成果を保証するものではありません。設定内容や挙動はご利用の環境や時期などによって異なる場合があります。



















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