「キュレーション」や「キュレーションサイト(またはメディア)」という言葉を聞いたことはありますか?どこかで聞いたかもしれないけど、意味まではわからないという人も多いのではないかと思います。実は、キュレーションサイトは身近なもので、私たちの身近にあり、多くの人が利用しているものなのです。
この記事では、「キュレーション」の意味や事例、注目されている背景を紹介し、利用する際のメリットや注意点についても解説します。最後まで読めば、キュレーションサイトを適切に利用でき、成長著しい時代に置いて行かれずに済ませられるかもしれません。
キュレーションとは
はじめに、「キュレーション」の意味について説明し、具体的なサービスを例に上げて説明します。
キュレーション=学芸員の仕事
キュレーション(curation)とは、本来は学芸員の職種を指す言葉です。
学芸員とは、美術館や博物館で展示物の収集・保管・展示する職種です。
この言葉から派生して、キュレーションは、「インターネット上の膨大な情報を目的に合わせて収集・分類・再編し、新たなサービスとして提供すること」を言います。
キュレーションサイト(メディア)とは
キュレーションサイトとは、キュレーションによって再編された情報を掲載しているwebサイトのことを言います。
また、単に「キュレーション」という場合、「キュレーションサイト」や「キュレーションメディア」のことを指している場合が多いので注意しましょう。
キュレーションサイトは、目的が共通したユーザーにターゲットを絞り、ターゲットに必要な情報がわかりやすく分類されているため、必要な情報にたどり着きやすいという特徴があります。
キュレーションサイトの例
キュレーションサイトの中でも、下記に挙げるものは多く利用されています。
・トリップアドバイザー
・北欧、暮らしの道具店
ここからは、これらのサイトを例として、キュレーションサイトの具体例について詳しく解説します。
NewsPicks
NewsPicksは、「The Wall Street Journal」や「The New York Times」など国内外の100近くのメディアに掲載されているニュースとオリジナル記事を配信しているソーシャル経済メディアです。
有料会員制にすることで、ユーザー数よりもターゲットを絞り込むことに特化している点が特徴的です。
また、ニュースやコンテンスに対してコメント機能があり、業界の著名人や有識者のコメントからも学べるという点も特徴です。
NewsPicksは、他のメディアからの情報を選択・収集・整理しているため、キュレーションサイトとしての側面を持ちます。
さらに、専門家のコメントが加えられることで、最新ニュース動向に敏感なユーザー層に対して新しい価値を生み出しています。
NewsPicks:https://newspicks.com/
画像引用:NewsPicks
トリップアドバイザー
トリップアドバイザーは、アメリカを本拠地とするオンライン旅行会社によって運営されています。
世界中の観光名所・飲食店・宿泊施設などに関する情報を掲載し、ユーザーによって評価・口コミを共有できるのが特徴的です。
「インバウンドレポート2019」によると、世界49の国と地域、28言語でサービスが展開されているなど、世界最大の旅行プラットフォームとなっています。
トリップアドバイザーは、単にスポットの情報を掲載するだけでなく、ユーザーからの意見も情報として集約し、詳細な施設情報を更新しており、キュレーションサイトとしての役割を果たしています。
TripAdvisor:https://www.tripadvisor.jp/
画像引用:トリップアドバイザー
北欧、暮らしの道具店
北欧、暮らしの道具店は、株式会社クラシコムが運営しているwebメディアです。
「自分にフィットした居心地の良いライフスタイルを作るサポートをする」をテーマに掲げており、日用品やファッション小物などのさまざまなアイテムを販売しています。
北欧、暮らしの道具店は、ECをベースとしたキュレーションサイトで、商品の仕様だけでなくスタッフやユーザーが投稿するレビューをメインとして紹介されています。
リアルな生活の中で使われるイメージを想像しやすいため、満足感を高めて商品を購入できるという魅力があります。
北欧、暮らしの道具店:https://hokuohkurashi.com/
画像引用:北欧、暮らしの道具店
キュレーションが注目されている理由
キュレーションサイトは、一般家庭でもインターネットが普及した1990年代から2000年代から誕生しましたが、近年さらにその価値が注目されています。
その主な理由としては、下記の項目が挙げられます。
・スマートフォン(主にiPhone)の普及
・モノから「コト」へのニーズの変化
ここからは、これらの理由について詳しく解説します。
情報があふれている
キュレーションサイトが注目されているのは、「情報があふれている」という時代背景が関係しています。
内閣府は、インターネットが普及した情報社会(Society 4.0)に続く、科学技術が実現する新たな社会(Society 5.0)を目指すべき未来社会の姿として提唱しました。
Society 5.0は、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)のことを指します。
これまでの情報社会では、あふれる情報から必要な情報を見つけるのが困難であったのに対して、Society 5.0では、「全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すこと」の実現を目指しています。
この目標に対して、人工知能(AI)の進化によって必定な情報を必要な時に提供されることが期待されているとあります。
この内閣府の動きに対して、具体的にサービスとして実現されているものの一部が「キュレーションサイト」です。
内閣府|Society 5.0:https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/
スマートフォン(主にiPhone)の普及
キュレーションサイトが注目されているもう一つの理由として、「スマートフォンの普及」が挙げられます。
NTTドコモの調査によると、スマートフォンが日本に登場した2010年では利用率が3.6%であったのに対して、2023年では95.9%まで増加しており、もはやスマートフォンは国内では老若男女問わず誰もが利用するデバイスです。
また、2011年は日本でのスマートフォン利用者のうち59.7%が「iPhone」であり、日本のスマホ普及を加速させた要因と考えられます。
このように、スマートフォンが普及し、誰もが時間や場所によらずインターネットとつながる時代になりました。
スマートフォンの普及によって「必要な情報を”スキマ時間”を利用して入手する」というニーズが高まり、情報の早さが求められるようになっています。
そのため、キュレーションサイトのように、必要な情報が集められるプラットフォームの価値がより高まっています。
NTTドコモ モバイル社会研究所ホームページ|モバイル社会白書2023年版:https://www.moba-ken.jp/whitepaper/wp23.html
モノから「コト」へのニーズの変化
キュレーションサイトが注目される3つ目の理由として、「ユーザーニーズの多様化」が挙げられます。
スマートフォンの普及により、誰もが簡単に情報を得られるようになったことで、ユーザーが独自に好みの情報をキャッチし、その分野のより深い知識が得られるようにもなりました。
また、科学技術の進歩によって、あらゆる実用的な商品(モノ)が世の中にある状態になっています。
これらの時代背景から、「モノよりもコト(体験)に価値を求める」といった「ユーザーニーズの多様化」が進行しています。
キュレーションサイトでは、単なる情報に加えてユーザーの体験や意見が反映されています。
それによって、ニーズが多様化されたユーザーの「共感」を得られるよう工夫されており、各分野で「ユーザー体験」を演出するキュレーションサイトの人気が高まっています。
キュレーションサイトのメリット
キュレーションサイトを利用することで、下記に挙げるメリットがあります。
・ポイントだけをおさえられる
・スキマ時間に利用できる
これらのメリットについて、詳しく解説します。
最新情報をすぐに入手できる
キュレーションサイトには、とにかく最新情報をいち早く入手できるというメリットがあります。
キュレーションサイトは、あらゆる情報を集約しており、その分野の最新情報をすぐに入手できます。
最新情報が求められるニュースサイトなどでは、専門家や有識者がトレンドや注目されている情報をもとに記事をまとめているため、関連するニュースなどを複数記事読む必要がありません。
そのため、ユーザーは「キュレーションサイトを見るだけで、最新情報を網羅できる」というメリットがあります。
ポイントだけおさえられる
キュレーションサイトを利用することで、必要な情報のみを入手できるというメリットもあります。
キュレーションサイトに掲載される情報は、ユーザーの興味関心を集約し、必要な情報をまとめて掲載しています。
また、関係する詳細な情報は記事をよく読むことで理解できるなど、必要に応じて情報の深さを調整できるという特徴があります。
そのため、不要な情報を排除してポイントのみおさえたいという場合、キュレーションサイトが有効です。
スキマ時間に利用できる
キュレーションサイトは、比較的短時間で読めるため、スキマ時間に利用できるというメリットもあります。
通常、情報収集のためには、思いつく検索クエリを元にして、さまざまな情報元から多角的な視点を持って目的の情報を絞り込む必要があります。
しかしキュレーションサイトはユーザーや専門家による意見が反映されていることから、自ら複数の情報元を参照する手間がありません。
短時間で情報を入手できることから、スマートフォンとの相性もいいことがキュレーションサイトのメリットです。
キュレーションサイトの注意点
キュレーションサイトは、近年注目されており利用者も増え続けていますが、利用する際には下記にあげる注意が必要です。
・不要な情報も多い
・情報が偏っている
・一部有料のものがある
これらについて、詳細に解説します。
情報の精度は保証されていない
キュレーションサイトは、さまざまな情報を集約しているため、多角的な情報にはなりますが、正確でない可能性があります。キュレーションサイトに限らないことですが、第三者からの情報は、情報元を確認したうえで信頼のできるものだけを活用する「情報リテラシー」が必要です。
不要な情報も多い
キュレーションサイトは、多くの情報元から集約されており、必要とする情報以外の細かな情報も掲載されていることもあります。
そのような細かな情報に気を取られると、早く情報を入手できるキュレーションサイトのメリットが失われてしまうため注意しましょう。
情報が偏っている
キュレーションサイトは、特定の目的を持って収集されている情報のため、全ての人に対して価値のある情報が掲載されているわけではありません。
例えば、「高級グルメ」に関するサイトには「格安グルメ」の情報が掲載されていないように、特定のターゲットに絞ったメディアであることには注意しなければいけません。
「この情報は世の中の全ての人の意見でもある」という捉え方をすると、世の中との価値観がズレていってしまうため、情報が偏っていることを加味して閲覧することが必要です。
一部有料のものがある
キュレーションサイトには、その性質上、有料のものもあります。
多くのユーザーに必要な情報を掲載すればアクセス数を稼げるため広告収入なども得やすくなりますが、キュレーションサイトの本来の意義とは反してしまいます。
メディア運営側の視点としては、特定の目的をもつユーザーに絞り込んでサービスの質を高めるためには、広告収入から課金型の収益モデルにすることも有効な手段です。
有料の情報に対しては、体験期間などを利用して「本当に自分にとって価値があるか」をよく見極めたうえで利用するかどうかを検討しましょう。
まとめ
キュレーションは、特定の目的に対してあらゆる情報を集約し、独自の情報を加えることで新たな価値を生み出すサイトです。
ユーザーとしては「必要な情報を短時間に入手できる」というメリットはあるが、制度の低い情報や偏りのある情報が混在していることには注意が必要です。
キュレーションサイトは情報を入手するために便利な手段ですが、使い方を誤らないよう注意してうまく利用しましょう。