
広告運用で「インプレッションシェアが低い」と感じたことはありませんか?
他の指標ばかりに注目してインプレッションシェアを見落としていると、
競合に機会を奪われてしまう可能性があります。
本記事では、
インプレッションシェアを改善するための基本的な考え方から具体的な施策まで解説します。
1. インプレッションシェアとは?
インプレッションシェアとは、
広告が表示される機会のうち、実際に広告が表示された割合を示す指標です。
計算式は以下の通りです。
■ 具体例
表示可能だった回数:1,000回
実際の表示回数:700回
計算式に当てはめると次のようになります。
インプレッションシェア :70%
表示できなかった回数(機会損失):30%(300回)
つまり、300回の表示機会を活用できていない状況です。
このようにインプレッションシェアが低いと、
潜在的なビジネスチャンスを逃してしまう可能性があります。
特に競合が激しい業界では、
インプレッションシェアの改善が成果に繋がるケースもあり、
広告運用において重要な指標の一つとされています。
※参考:Yahoo!広告ヘルプ
1-1. 関連する指標
インプレッションシェアには、基本指標のほかに
「上部インプレッションシェア」と
「最上部インプレッションシェア」があります。
■ 上部インプレッションシェア
上部インプレッションシェアとは、
検索結果ページ上部に広告が表示される機会のうち、
実際に広告が表示された割合を示す指標です。
■ 最上部インプレッションシェア
最上部インプレッションシェアとは、
検索結果ページ上部に広告が表示される機会があった回数に対して、
検索結果ページ最上部に広告が表示された回数の割合を示す指標です。
これらの指標を言い換えると、
「自社の広告がどれだけ機会損失なく上部、または最上部に表示できているか」を
数値化したものになります。
※参考:Google広告ヘルプ
1-2. 検索結果ページ上部・最上部とは?
検索結果のページ上部とページ最上部は、
検索結果ページのオーガニック検索結果より上にある広告掲載枠のうち、
以下の部分を指します。
Googleによれば、通常、上部の広告はオーガニック検索結果の上に表示されますが、
検索語句によってオーガニック検索結果の下に表示されることもあると言われています。
※参考:Google広告ヘルプ, Yahoo!広告ヘルプ
2. インプレッションシェアの改善方法
インプレッションシェアを上げるには、いくつかの方法があります。
ここでは、すぐに実践できる9つの改善策を紹介します。
- 改善策①:インプレッションシェア損失率をチェック
- 改善策②:日予算を上げる
- 改善策③:入札単価を上げる
- 改善策④:品質スコアを上げる
- 改善策⑤:オークション分析を行う
- 改善策⑥:ターゲティングを絞る
- 改善策⑦:キーワードのマッチタイプを見直す
- 改善策⑧:キーワードの追加と除外
- 改善策⑨:入札戦略「目標インプレッション シェア」を使う
それでは、次より順に解説していきます。
改善策①:インプレッションシェア損失率をチェック
インプレッションシェアを改善するためには、
「どのくらい損失しているのか」「損失の原因は何か」を把握することが大切です。
Google広告・Yahoo!広告・Microsoft広告では、
管理画面からインプレッションシェア損失率と要因を確認でき、
要因は大きく「予算」と「ランク」に分けられます。
- 「予算」による損失:
予算不足が原因で、広告の表示機会を逃している状態 - 「ランク」による損失:
広告ランクの低さ(または掲載順位)が原因で、広告の表示機会を逃している状態
インプレッションシェア損失率とその原因を正確に特定したうえで、
適切な改善策を講じることが重要です。
以下より、
各媒体の管理画面でインプレッションシェア損失率を確認する方法を説明します。
■ Google広告での確認方法
➀ キャンペーン・広告グループ・キーワードのいずれかの画面を開く
➁ 右側の「表示項目」から「表示項目を変更」をクリック
➂ インプレッションシェア損失率の項目を選択し、「適用」をクリック
「損失」と検索すると効率的
それぞれの画面に指標の列が表示されていれば完了
※[■ Google広告での確認方法]での画像引用(出典:Google広告管理画面)
なお、
広告グループとキーワードの画面では、
ランクによるインプレッションシェア損失率のみ確認が可能です。
予算によるインプレッションシェア損失率はキャンペーン画面で確認する必要があります。
■ Yahoo!広告での確認方法(検索広告)
➀ キャンペーン・広告グループ・キーワードのいずれかの画面を開く➁ 右側の「表示項目」から「表示項目を編集」をクリック
➂ インプレッションシェア損失率の項目を選択し、「適用」をクリック
※「損失」と検索すると効率的
※それぞれの画面に指標の列が表示されていれば完了
※[■ Yahoo!広告での確認方法(検索広告)]での画像引用(出典:Yahoo!広告ヘルプ)
なお、
広告グループとキーワードの画面では、
予算によるページ上部と最上部のインプレッションシェア損失率は確認できますが、
予算によるインプレッションシェア損失率はキャンペーン画面のみ確認が可能です。
ランクによる損失率は全ての画面で確認できます。
■ Microsoft広告での確認方法
➀ キャンペーン・広告グループ・キーワードのいずれかの画面を開く➁ 右側の「列」から「列の変更」をクリック
➂ インプレッションシェア損失率の項目を選択し、「適用」をクリック
※「競合」タブを選択したうえで「損失」と検索すると効率的
それぞれの画面に指標の列が表示されていれば完了
※[■ Microsoft広告での確認方法]での画像引用(出典:Microsoft広告管理画面)
改善策②:日予算を上げる
予算によるインプレッションシェア損失率が高い場合、
最も直接的な解決策が「日予算の増額」です。
しかし、
闇雲に予算を上げるのではなく、データに基づいた適切な予算設定が重要です。
■ 予算増額の手順
➀ 現在の予算使用状況を確認
- 予算制限により配信制限がかかっていないか確認
- 配信が停止されている時間帯がないかレポートで確認
➁ 適切な予算額の算出
- 予算制限がかかっている場合、媒体の推奨予算額を適用
- 目標CPAを維持できる範囲での最大予算を算出
- 過去30日間の平均クリック単価×目標クリック数で概算
➂ 段階的な予算増額
- 一度に大幅増額せず、様子を見ながら調整
- 数日~週単位でCPAやROASの変化を監視
■ 注意点
予算を増やす際は、
品質の低いキーワードへの無駄な配信を避けるため、
除外キーワードの設定や入札調整も並行して行うことが重要です。
また、
予算増額によってオークションでの競争が激化し、
クリック単価が上昇する可能性もあるため、ROIの監視は欠かせません。
改善策③:入札単価を上げる
ランクによる損失率が高い場合は、入札単価の引き上げが効果的です。
その理由は、広告ランクが以下の式で算出されるからです。
広告ランクを構成する要素には品質スコアもありますが、
改善には時間がかかり、ハードルも高めです。
一方で、
入札単価は即時に調整できるため、短期的な改善策として有効です。
ただし、
単純に入札価格を上げるだけでは費用対効果が悪化する可能性があるため、
戦略的なアプローチが必要です。
■ 効果的な入札価格調整方法
- キーワード単位での精密調整
┗ 成果の良いキーワードの入札単価を優先的に引き上げ
┗ コンバージョン獲得単価が目標範囲内のキーワードに限定
┗ 目標コンバージョン単価×現状のコンバージョン率で理想のクリック単価を算出
┗ →入札調整 - 時間帯・曜日別の入札調整
┗ 成果の良い時間帯の入札を強化
┗ 週末や夜間など、競合が少ない時間帯で入札を強化 - デバイス別入札調整
┗ モバイルとPCでの成果差を分析し、効果の高いデバイスの入札を強化 - 地域別入札調整
┗ 成果の良いエリアの入札を強化
自動入札を行っている場合、
目標コンバージョン単価や目標ROASなどの目標値を緩めることで
入札単価を上げることが可能です。
■ 注意点
入札単価の引き上げはあくまで短期的な施策です。
広告は常にリアルタイムでオークションが行われており、
競合の動きによって入札単価は変動します。
そのため、
入札単価による損失を補おうと上げ続けると、費用対効果が悪化するリスクがあります。
このため、
入札単価の調整とあわせて品質スコアの改善に取り組むことが重要です。
品質スコアが向上すれば、同じ掲載順位でもより低い入札単価で表示でき、
長期的な費用対効果の向上に繋がります。
次の章では、品質スコアの改善方法について解説します。
※参考:Google広告ヘルプ
改善策④:品質スコアを上げる
品質スコア(別名:品質インデックス)とは、
広告の品質を10段階で評価する指標です。
キーワードごとに表示され、10に近いほど品質が高いことを表します。
品質スコアの改善は、
インプレッションシェアの向上だけでなく、費用対効果の改善にも繋がります。
品質スコアが高ければ、入札単価を抑えつつ広告ランクを上げることができ、
効率的な広告運用が可能になります。
■ 品質スコアを構成する要素
■ 品質スコアの改善方法
品質スコアを改善するには、
スコアを構成する3つの要素にアプローチする必要があります。
【推定クリック率の改善】
- 検索クエリとの関連性を高める(カスタマイザーの活用など)
- 魅力的な広告文の作成(定量的表現、記号の活用、差別化など)
- 除外キーワードの登録
【広告の関連性の改善】
- 検索クエリとの関連性を高める(カスタマイザーの活用など)
- 同じ広告では対応できないキーワードが多い広告グループの分割
【ランディングページの利便性の改善】
- 検索クエリとランディングページの関連性を高める
- 広告文とランディングページの一貫性を持たせる
- ページの読み込み速度を改善する
- モバイルフレンドリーな構成・デザインの実装
■ 注意点
品質スコアの改善には時間がかかりますが、
一度向上すれば長期的に安定した効果を発揮します。
入札調整とあわせて取り組むことで、持続的な費用対効果の改善に繋がります。
※参考:Google広告ヘルプ
改善策⑤:オークション分析を行う
Google広告には
「オークション分析」という機能があります。
この機能を使うと、
競合他社との競合度合いやインプレッションシェアなどを確認することが出来ます。
競合の動きを把握することで、以下の点でインプレッションシェアの改善に役立ちます。
- 競合性の高い広告主のWebサイトをチェックし、
広告文やランディングページの改善に活かす - 自社の優位性や競合他社のインプレッションシェアを確認して、
予算や入札単価の調整に活かす
■ オークション分析の方法
➀ オークション分析を行うキャンペーンまたは広告グループを選択
➁ 左側メニューの「分析情報とレポート」から「オークション分析」をクリック
ここで、期間や表示項目を変更したり、データをダウンロードして詳細に分析したりできる※画像引用(出典:Google広告管理画面)
■ 注意点
オークション分析のデータはあくまで推定値であるため、
他の指標とあわせて判断することが重要です。
また、
表示されるのは主要な競合に限られ、データは時期やキャンペーンによって変動します。
そのため、
短期間の変化だけにとらわれず、一定期間の傾向を見て改善策を検討することが大切です。
改善策⑥:ターゲティングを絞る
適切なターゲティング設定は、
限られた予算でインプレッションシェアを効率的に高めるために効果的です。
無駄な配信を減らし、成果が期待できるユーザー層に集中することで、
効率的な広告運用に繋がります。
■ 効果的なターゲティングの絞り込み方法
【地域ターゲティング】
- 過去のコンバージョンデータから成果の良いエリアを特定
- 商圏外や成果の低い地域を除外
- 地域別の入札調整で重点エリアへの配信を強化
【時間帯・曜日ターゲティング】
- 深夜や早朝など成果の出にくい時間帯を除外
- 業界特性を踏まえて配信スケジュールを最適化
【デバイスターゲティング】
- モバイル・PC・タブレットごとの成果を分析
- 成果の低いデバイスは入札を下げるか除外
【オーディエンスターゲティング】
- 既存顧客やコンバージョン済みユーザーを除外し、無駄な配信を抑制
■ 注意点
ターゲティングを絞り込みすぎると配信量が減少する可能性があります。
必ず段階的に調整を行い、配信ボリュームとのバランスを取ることが重要です。
改善策⑦:キーワードのマッチタイプを見直す
キーワードのマッチタイプを見直すことで、
インプレッションシェアを効率的に高められる場合があります。
■ マッチタイプを活用した改善方法
【部分一致の活用】
- 広い検索語句をカバーできるため、インプレッション数の拡大に繋がる
- ただし無駄な表示も増える可能性があるため、
除外キーワードを組み合わせて調整することが重要
【フレーズ一致・完全一致の活用】
- 配信を狙った検索語句に絞り込むことで、無駄な表示を減らし、
限られた予算でのインプレッションシェア確保に繋がる - 特に競合が強いキーワードでは、完全一致で効率的に広告を表示できる
【マッチタイプの組み合わせ】
- 部分一致でボリュームを広げつつ、完全一致で成果の高いキーワードを押さえると、
インプレッションシェアと費用対効果のバランスを取りやすい
■ 注意点
部分一致のキーワードは拡張性が高く、
意図しない検索クエリを拾う可能性が高いため、定期的に検索語句レポートを確認し、
必要に応じてフレーズ一致・完全一致を活用しましょう。
また、
マッチタイプによって配信が絞られすぎている場合は部分一致を活用するなど、
状況に応じてバランスよく調整しましょう。
改善策⑧:キーワードの追加と除外
適切なキーワードの追加と除外は、
広告運用における基本かつ重要な要素です。
関連性の高いキーワードを増やし、不要な検索語句を排除することで、
無駄な配信を抑えて広告の品質を高めることができます。
■ キーワードの追加と除外の手順
➀検索クエリレポートを定期的に確認
➁成果の見込める語句はキーワードとして追加
➂関連性の低い語句はキーワード除外
④追加時は広告文・ランディングページとの親和性を確認
- 親和性が低い場合は広告グループを分けて広告文を調整
- カスタマイザー広告を活用
- ランディングページをキーワードに合わせる(例:ファーストビューのみ変更)
■ 注意点
新しいキーワードを幅広く追加すると管理が複雑になり、
広告グループ全体の一貫性が損なわれる可能性があります。
また、
除外キーワードは特に慎重に行いましょう。
場合によっては、本来成果につながるはずの表示機会まで逃してしまうことがあります。
改善策⑨:入札戦略「目標インプレッション シェア」を使う
入札戦略「目標インプレッション シェア」は、
設定したインプレッションシェアの達成を目指して入札単価を自動調整してくれる機能です。
特に、
指名キーワードなど、確実に広告を表示させたいキャンペーンで活用すると効果的です。
この機能はGoogle広告・Yahoo!広告・Microsoft広告で利用可能で、
Yahoo!広告では「ページ最上部掲載」という名称で提供されています。
■ 設定可能な項目
- 掲載位置
┗ ページ上部:検索結果ページの上部(通常はオーガニック検索結果より上)
┗ ページ最上位:検索結果ページの一番上
┗ 任意の位置:検索結果ページのいずれかの場所 - 目標インプレッションシェア(%)
┗ 設定した掲載位置に広告が表示される可能性のある回数のうち、
┗ どのくらいの割合で広告を表示するかを指定 - 上限CPC(クリック単価)
┗ 自動入札の範囲を制御するために設定する入札単価の上限値
■ 注意点
目標インプレッションシェアを高く設定しすぎると、
入札単価が上がりすぎて費用対効果が悪化する可能性があります。
一方で、上限CPCを低く設定しすぎると入札単価が制限され、
目標としたインプレッションシェアを達成できない場合があります。
特に競合の多いキーワードではコストが急増しやすいため、
目標値と上限CPCをバランスよく設定することが重要です。
※参考:Google広告ヘルプ
12. まとめ
インプレッションシェアの改善は広告運用における重要な課題の一つですが、
常に高ければ良いというものではありません。
インプレッションシェアが低くても成果が出ている場合は、
無理に上げる必要はないでしょう。
大切なのは、
シェアを上げること自体ではなく、
ビジネス成果につながる質の高いインプレッションを獲得することです。
継続的な分析と改善を重ねることで、
競合に左右されない強固な広告運用体制を築いていきましょう。
※本記事は当社の広告運用の知見に基づくものです。また、効果や成果を保証するものではありません。