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【図解】3分で分かるITP||iOSアップデートでさらに強化 最新ITP情報

更新日:2025年09月30日

【図解】3分で分かるITP||iOSアップデートでさらに強化 最新ITP情報

AppleのITP(Intelligent Tracking Prevention)は、
広告業界に大きな影響を与え続けているプライバシー保護機能です。

2019年9月に発表されたITP2.3では、
従来のCookie制限に加えてlocalStorageやリファラー情報の制限も導入され、
デジタルマーケティングの計測環境はさらに厳しいものとなりました。

本記事では、
ITPの基本概念から最新バージョンまでの変遷を振り返り、
広告主が知っておくべき対策について解説します。

1. おさらい:ITPとは

ITP2.3の詳細の前に、
ITPについて振り返ります。

1-1. Appleのプライバシー保護機能

ITPとは、
Intelligent Tracking Preventionの略で、
AppleがSafariに搭載しているトラッキング防止機能です。

Appleがこれを行うのは、
インターネット広告のターゲティングに高まる嫌悪感・不信感から、
ユーザーのプライバシーを守るという意図があります。

GoogleやFacebookなど、
広告目的のトラッキングによって収益を獲得している
他のGAFA勢力への挑戦とも言えるでしょう。

1-2. 日本におけるITPの影響度

ITPの対象となるのは、
Safariブラウザでインターネットを閲覧しているユーザーです。

このSafariの利用割合が少なければ、
広告計測における影響も小さいと言えますが、
実際のところはどうでしょうか。

現在の国内スマートフォンのブラウザシェアを調べてみた結果が以下です。

国内のブラウザシェアは
Safariが約50%と過半数であることが分かります。

つまり、
ITPの影響はスマートフォンに配信する全体のおよそ50%に及ぶため、
計測数値が大きく変わることが予測できます。

正確なデータ計測を目指す上では、
ITP対策は非常に重要です。

1-3. トラッキングとは

そもそもトラッキングとは何だったのでしょうか。
なんとなく分かった気でいても、
明確な定義は分からないという人は少なくないと思います。

トラッキングの意味は以下のとおりです。

トラッキング(Tracking)とは、特定の情報収集を目的に、人の行動やシステムの挙動、データの推移などを継続的に追跡することを指します。

※参考:トラッキング(Tracking)|アドインテ

コンバージョン計測や、
リターゲティングなどの“行動ターゲティングには、
この「トラッキング」を行いユーザーデータを収集する必要があります。

そしてITPとは、
Appleがユーザーのプライバシーを守るために、
広告を目的としたユーザー行動データの収集を規制する機能
という機能です。

では、
具体的にどのように規制を行うのでしょうか?

その鍵となるのが「Cookie」です。

1-4. Cookieとは

Cookieとは、
Webサイトから発行されるアクセス情報のことです。

テキストファイルとして送信され、
ユーザーのデバイスに蓄積されます。

例えば、
一度ログインしたWebサイトに再度アクセスした際に、
ログイン作業が省略されることがあります。

これは、
Webサイトが発行したCookie情報を利用して、
直近でログインしたユーザーの利便性を考慮しているためです。

ECサイトのカート機能なども、
Cookieが活用されているケースが多くあります。

一方で、
広告のコンバージョン計測や、リターゲティングにも
Cookie情報が用いられています

つまり、
ITPではトラッキングを規制するためにCookieを削除する必要があります。
この削除する条件や範囲がITPの問題となっています。

また、
Cookieにも大きく分けて「1st party cookie」と「3rd party cookie」の
2種類があります。

カンタンにまとめると、

  • 1st Party Cookie:ユーザーが現在アクセスしているWebサイトのサーバーから直接発行されるCookie。
  • 3rd Party Cookie:ユーザーが現在アクセスしているWebサイトとは異なる、第三者のサーバーから発行されるCookie。

となります。

2. ITPによる規制範囲の変遷

ITPはこれまで、
バージョン1.0から2.3へと度重なるアップデートを重ねてきました。

そのたびに削除対象となるCookieの範囲を広げ、規制を強化しています。
その変遷を見ていきましょう。

バージョン 発表日 内容
ITP1.0 2017年9月 ・3rd party cookieが制限
過去含めサイト内遷移なし
発行から24時間後に無効 30日後に削除
ITP1.1 2018年3月 ・3rd party cookieの制限強化
過去にサイト内遷移があっても、
そのセッションで遷移がなければ24時間後に無効
ITP2.0 2018年9月 ・3rd party cookieの制限強化
サイト内遷移なし
即時削除
・1st party cookieも制限
4つ以上のドメインからリダイレクトされている
3rd party cookieと同じく削除
・トラッカーへのリファラ制限
トラッカー(トラッキングする第三者)と判定された場合、
Cookieのリファラ情報が削除
(e.g. http://example.com/service/listing-ads.html
→ http://example.com)
ITP2.1 2019年3月26日 ・1st party cookieの制限強化
JavaScriptを利用する場合、最大有効期限が7日に短縮
ITP2.2 2019年5月13日 ・1st party cookieの更なる制限強化
JavaScriptを利用する場合、最大有効期限が1日に短縮
ITP2.3 2019年9月10日 ・1st party cookieの制限を更に強化
・localStorageも制限
localStorageの情報も1st party cookieと同じく制限
Safari1
3.1
2020年3月 ・条件を問わず[3rd Party Cookie]の付与・読み取りができなくなる
・[localstorage]が最後のインタラクションから7日で削除される
※インタラクションがない場合は、即時(3時間以内)で削除される
・クロスドメイン(異なるドメインへの遷移)時に、javascriptで取得できるリファラがドメインのみになる
 iOS14およびiPadOS14 2020年9月 これまでのITPの影響が、Safariブラウザのみから以下iOS/iPad上の全ブラウザが対象に
・iOS及びiPadOS上で動作する全ブラウザ(ex. iOSChrome)
・iOS及びiPadOSアプリ内ブラウザ(ex. iOSFacebookアプリ内でリンクをクリックして開いたブラウザ)
 iOS14.2 2020年11月 iOS、iPadの全ブラウザおよびMacSafari/Bigsurからのアクセスにおいて、CNAMEが規制。
CNAME計測の設定をしていても、Cookieの保存期間が7日間に制限。
 iOS14.5 2021年4月 ATTによるIDFAの義務化、および、PCMの提供開始。
 iOS16 2022年9月 [1st party cookie]が最後のインタラクションから7日で削除される
※インタラクションがない場合は、即時(3時間以内)で削除される
※ITP2.1と同様、アドエビス等の計測ツールが付与するJavaScriptで設定された1st party cookieが対象であり
サイトのサーバから設定するHTTP 1st party cookieは制限されない
 iOS16.4 2023年3月 IPアドレスの異なるサーバーから付与されたCookieに対しての規制が強化、これにより
NSレコード計測の設定をしていても、Cookieの保存期間が7日間に制限。
 iOS17 2023年9月 プライベートブラウジングなどでの規制強化。これにより以下のような制限。

発表時期を見ると、
加速度的にアップデートされているのが分かります。

【トラッキングを規制したいApple】対【規制をすり抜けてトラッキングしたいアドテク業界】
の戦いが激化していますね。

2-1. ITP1.0

最初に発表されたのは3rd party cookieの制限のみで、
「過去含めサイト内遷移なし→発行から24時間後に無効」、
また有効・無効を問わずCookieは30日後に削除されるというものでした。

つまり、
過去訪問履歴のないドメインのLPから直帰したとき、
セッション終了後に3rd party cookie情報が削除されます。

2-2. ITP1.1

1.0の制限が強化され、
過去の訪問があっても直帰ユーザーの3rd party cokkieは
24時間後に削除されます。

2-3. ITP2.0

ITP2.0で大幅に変更がありました。

3rd party cookieは直帰した場合即時削除。
サイト内遷移がないユーザーはリターゲティングが実質不可能となります。

更にそれだけでなく、
本来は広告トラッキングのために使うことのない
1st party cookieも規制の対象になり始めます。

なぜかと言うと、
当時のITP1.1環境下では、リダイレクトを行い、
あたかも1st party coolie かのような3rd party cookieを生成するという方法で
トラッキングを行った広告媒体・計測ツールが多かったからです。

また、
サイト解析のデータ集計時、
トラッカー判定されたアクセスはリファラ表示をドメイン以降削除されます。

この辺りから広告媒体側とのイタチごっこが加速していきます。

2-4. ITP2.1

2.1では、
JavaScriptを用いて生成された1st Party Cookieの有効期限が
7日まで短くなりました。

2-5. ITP2.2

同じくJavaScriptを用いて生成された1st Party Cookieの有効期限が
1日まで短縮されています。

ここまでくると、
Safariブラウザでのリターゲティングが相当難しいのが分かります。

3. ITP2.3での新たな規制対象

このように、
ITP2.2でも十分厳しい規制がされていますが、
ITP2.3では以下の条件を追加しました。

3-1. ローカルストレージの制限

一部の広告媒体では、
Cookieの代わりにlocalStorageというでデータを使うことで
トラッキング情報を補っていました。

ITP2.3では、
それらCookie以外のストレージデータも最大7日間で無効としました。

代替案も即時潰しにかかるAppleの本気度が伺えます。

3-2. リファラーのダウングレード

サブドメイン間の遷移が行われた場合、
今まで取得できていたサブドメインの情報が
ITP2.3環境下では取得できなくなります。

リファラー情報がダウングレードする例

https://sub.social.example/some/path/?clickID=0123456789
から流入したとしても、リファラーで取得できる情報は
https://social.example
となり、取得できるサブドメインがダウングレードされる。

※引用:ITP2.3の登場(1〜2.x 総まとめ)随時更新!

このように、
計測の抜け道を塞ぐように規制を強めているのです。

4. 広告媒体・計測ツールでの対応状況

この状況に、
広告媒体側はどのような対応をしているのでしょうか。

4-1. Appleに同調

Googleはこれまで
「クリックID」やタグマネージャーの「コンバージョンリンカー」を
使用することでITP対策をとってきましたが、
遂に3rd party cookieの使用を取りやめることを発表しました。

AppleのSafariは既に3rd party cookieを
全面的にブロック済み(2020年のITPアップデート)で3rd partyだけでなく、
1st party cookieの利用期限制限も導入しています。

主流ブラウザにおけるサードパーティクッキーの利用は、
2024年内にはほぼすべて終了する見込みで、
今後各ブラウザは、広告業界やウェブ開発者にとっての代替技術
(例: プライバシーサンドボックス、ファーストパーティデータの活用)を推進中です。

※参考:グーグル、広告向け「クッキー」利用打ち切りへ-アップルに追随|Bloomberg

AppleとGoogleという、
IT界の2大巨人が「3rd party cookieを止めます」と言い出したら、
ほかの広告媒体社も追従していくしかありません

これから数年掛けて、
3rd party cookieを使用しないコンバージョン計測が
スタンダードになっていくことでしょう。

4-2. CNAME対応で計測(一部)

これだけ厳しい扱いとなった広告トラッキングですが、
まだ一部抜け道があったのです。

1st Party Cookieが制限される条件は、
先述の通り「JavaScriptによって生成された」Cookieです。

つまり、
自社サーバーから直接発行される1st Party Cookieであれば、
ITPの影響を受けにくいという特性がありました。

これを受けて、
アトリビューション計測ツール「ADEBiS」や、
DSP「Criteo」で実装されているのが
「CNAME対応」です。

自社サーバーのDNS設定を行うことで、
完全に現ITP環境を克服することができています。

※画像引用(出典:CNAMEを利用したトラッキング方式のご提供)

コンバージョン数を正確に計測したい場合は、
このCNAME対応を行える計測ツールを利用するのが良いでしょう。

しかし、
ツール上で計測できたとしても、
各広告媒体はITP環境下であるため、
コンバージョンによる自動最適化はやはり部分的なデータしか
取得できないことになります。

そのうえ、
いつAppleがまたITPをアップデートして、
CNAME対応の対策をしてくるか分かりません。

“その場しのぎ”とまでは言いませんが、
長期に渡って安心して計測できる方法とも断言できません。

※「A8」などのASPでもCNAME対応が順次進んでいるようです。
成果報酬のアフィリエイト関係者にとっては死活問題ですよね……

5. まとめ

ITPの概要と、
広告・マーケティング担当者が知っておきたいポイントをまとめると
以下の通りです。

  • ITPは、Appleがユーザーのプライバシー保護を目的としたトラッキング防止機能
  • ITP2.3では、Cookieの代替策として利用されていた「localStorage」も1st Party Cookieと同様に制限の対象となった
  • ITP適用環境下では、サブドメインのリファラー情報が部分的に取得できなくなるなど、詳細な経路分析が困難になっている
  • Appleだけでなく、Googleも3rd Party Cookieの使用を取りやめる方針を示しており、今後3rd Party Cookieに依存しない計測方法が次世代のスタンダードになるだろう
  • 過去には、自社サーバー情報を書き換える「CNAME対応」によって一部のツールや広告でITP下での計測が可能だった
    しかしこれはあくまで一時的な対策であり、長期的な解決策ではなかった

現在のITP環境下で、
完璧にコンバージョン計測を行う術はもうない、と言って良いでしょう。

アドエビスのCNAME対応を行ったり、
実際の顧客データをより詳細に分析できるよう取り組むなど、
空いたデータの穴を保管する必要があります。

また、
Googleが「プライバシーサンドボックス」に代表される
新たなコンバージョン計測方法の開発を進めているため、
広告主側も将来的に何らかの対応を迫られる可能性があります。

常に最新情報を見逃さないよう、
IAラボをチェックしていただけると幸いです!

この記事を書いた人

大学3年生から内定者インターンを開始し、2020年にインフィニティエージェント新卒3期生として入社。 約5年半の運用者経験を活かし、現在はチーフ職としてマネジメントも行いながら、新規顧客の開拓やメディア編集長に従事。 冷麺が好きで1週間に何度も食べているという偏食な一面も。

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