ビールやウイスキー、お茶、コーヒー、清涼飲料水など様々な飲料を扱うサントリーは、老若男女問わず幅広いユーザーに支持されています。
長年愛されるロングセラー商品も多く、商品ごとにコアなファンを抱えています。
近年の新型コロナウイルスの影響などもあり、飲食店をはじめ酒類や飲料を扱う市場全体が減少傾向にある中でも、新たな商品開発やマーケットの開拓などによってビジネスを成功に導いています。
このようなサントリーの成功には、徹底した市場調査やターゲティング分析による他社との差別化が影響しています。
マーケティングにおいて市場調査や競合分析などは欠かせません。
差別化を図り優位性を確立することができれば、売上増加や利益拡大につなげることも可能になります。
そこで今回は、サントリーのマーケティング戦略に関して、成功事例とあわせ自社に活用できるコツなどポイントを中心に紹介していきます。
サントリーのマーケティング戦略とは?
サントリーホールディングス株式会社は、近年の多様性や流行の短期化が進むユーザーニーズに対し、様々なマーケティング戦略を取ることで成功に導いています。
例えば、新型コロナウイルスの影響によって、店舗ではなく自宅での食事が増えた際には、家飲みに最適な商品を開発販売することで売上増加につなげています。
また、ビールの消費が落ちたり、アルコール度数が高い商品が嫌煙されるようになると、チューハイやノンアルコールカクテル、アルコール度数の低い商品を販売しています。
サントリーでは、このような市場の変化やユーザーニーズの移り変わりを適切に察知し、ニーズをふまえた戦略をもとにスピーディーに対応しています。
この柔軟性や即効性がマーケティング戦略を成功に導く大きな要因として考えられます。
サントリーが実施した経営戦略
サントリーでは柔軟性や即効性をもとにマーケティングを成功に導いていますが、基本的に多くの企業市場やユーザーの変化を適宜把握することには限界も生じます。
そこでサントリーでは以下の経営戦略をもとに徹底したターゲットの分析を行っています。
① 独自システムによる流通や消費動向の可視化
サントリーは、飲料メーカーとして自社で開発した商品をスーパーマーケットやコンビニ、飲食店などに卸して販売しています。
そのため、実際に商品が売れたかどうかは販売店によって異なり、通常であればその傾向を把握することはできません。
そこでサントリーは、「サントリーリンク」というシステムを開発し、自社のデータだけでなく販売店や流通状況などを確認できるようにしました。
その結果、店舗ごとのユーザー動向などを可視化することができ、その傾向やデータを自社のマーケティングに活かしています。
② 各商品の売り上げ状況をもとにしたユーザーニーズの把握
サントリーリンクの開発により、サントリーでは各商品の売り上げ状況をもとに、ユーザー動向やニーズを把握できるようになりました。
この数値・データをもとにした徹底的な顧客分析は、ユーザーニーズの深掘りや新たなマーケットの開拓につながっています。
例えば、サントリーリンクでは地域ごとの売り上げ状況を把握することも可能です。
エリア別の売れ筋や人気の商品などを把握できれば、ターゲットに応じたアプローチを行うことで、売上増加や利益拡大につなげられます。
さらに、AIなどを活用して在庫状況を管理しているため、データに基づくスピーディーな対応につなげることができています。
③ 市場ニーズにあわせた積極的な商品開発
サントリーでは、先ほどふれた市場やユーザーニーズの可視化を、新商品の開発にも役立てています。
様々な商品をスーパーマーケットやコンビニなどに展開しているため、サントリーリンクを活用すれば全体的に何の商品が売れ残り、どのようなジャンルが購入されているのか把握することが可能です。
これにより、市場ニーズを掴むことができ、新たな開発にもつなげやすくなります。
例えば、ビールの売り上げが落ち、チューハイやレモンサワーの売り上げが伸びれば、ユーザーはプリン体の低いアルコール飲料に興味が高まっていることが想定できます。
であれば、プリン体を抑えたビールを開発販売すれば売り上げにつながるだろうといったデータに基づく予測をもとに商品開発を行うことができます。
固定概念に縛られず、積極的な商品開発から販売までスピーディーに行う体制が、サントリーの強みとも言えます。
サントリーのマーケティング戦略事例
次に、サントリーのマーケティング戦略について紹介していきます。
サントリーでは徹底した市場調査やターゲティング分析による他社との差別化により成功につながっています。
その具体的なマーケティング戦略について事例とあわせ紹介していきます。
① 商品に応じたブランディング
サントリーの看板商品でもあるザ・プレミアム・モルツは、数あるビールの中でも人気の高い商品です。
一般的にプレミアムビールは、贈答品やギフトとして扱われる傾向にありましたが、ユーザーニーズを調査したところ、週末や休日のプチ贅沢というニーズが分かりました。
このように、実際に商品をユーザーがいつどこでどのように活用しているかを分析することで、ブランディングすべき要素が分かります。
サントリーでは、「週末」という点にフォーカスし、ザ・プレミアム・モルツを「週末のプチ贅沢として飲むもの」というブランディングを行いました。
その結果、ユーザーが商品を活用するシーンを具体化してイメージできるようになり、大幅な売り上げ増加につながりました。
② テレビを絡めた話題性の創出
サントリーでは、ブランディングの一環としてテレビCMを多く活用しています。
とはいえ、ただ単にテレビCMにて商品を告知するのではなく、話題性の創出にも力を入れています。
例えば、缶コーヒーのBOSSでは、テレビCMにハリウッドスターのトミー・リー・ジョーンズ氏を活用しています。
日本人俳優に交じってさりげなく登場するトミー・リー・ジョーンズ氏の演技は多くのユーザーの印象に残り、BOSSのブランディング向上とともに売り上げ増加にもつながっています。
また、2014年にNHK連続テレビ小説でウイスキーを取り上げた「マッサン」が放映されると、サントリーは徹底的にウイスキー市場を調査しました。
そこでユーザーニーズをふまえたハイボールの開発に力を入れ、テレビCMでも魅力を伝えることで売り上げ増加につながっています。
このように、サントリーでは視聴者を引きつけ、且つ自社の商品も記憶に刻みつけるテレビCMにこだわっており、ブランディング向上につなげています。
③ Z世代に向けたWebマーケティング
先ほどふれたように、サントリーではテレビCMに力を入れているものの、そもそもテレビで情報収集を行うユーザーは減少傾向にあります。
特に、Z世代といわれる20代前後のユーザーは、テレビよりもSNSなどによって情報収集を行う傾向にあります。
このような中で、サントリーではZ世代に向けたWebマーケティングにも注力しています。
例えば、サントリーでは公式YouTubeチャンネルを開設し、若年層に向け様々な動画広告を展開しています。
いずれも顧客との接点を持つことに注力しており、商品に関する認知度拡大や興味関心を煽ることで実店舗での売り上げ増加につなげています。
まとめ
サントリーでは、徹底的な市場調査や競合分析、ユーザーニーズの深掘りを行うことで、根拠に基づくマーケティングにつなげています。
サントリーリンクのようなシステム開発や、スピーディーな商品開発から販売などを、自社で同じように対応することは難しいケースも存在します。
とはいえ、市場調査やターゲティング分析は効果的なマーケティング戦略には欠かせません。
今回紹介したサントリーの事例も参考に、自社のマーケティング戦略に活用していきましょう。