「リテールメディア」という言葉をご存じでしょうか。
リテールメディアは流通・小売業界における広告配信の仕組みの1つです。
今回は、このリテールメディアの概要と利用手順、利用メリット、実際の利用例などを紹介していきます。流通・小売業界の人はぜひ参考にしてください。
リテールメディアとは?
リテールメディアとは、小売・流通事業者が運営する様々なメディアのことです。
具体的には、ECサイトや店舗アプリ、リアル店舗の店頭に設置されているデジタルサイネージなどにコンテンツや広告を配信する仕組みを言います。
小売・流通事業者自身のメディアを利用して情報提供するのが特徴で、顧客との間で直接的な接点を持つことができます。
リテールメディアへの関心が高まっている背景
リテールメディアは今注目の的で関心が非常に高まっていますが、その背景を探ってみましょう。
サードパーティクッキーに対する規制強化
リテールメディアに関心が高まっている理由の一つがサードパーティクッキーへの規制強化が進んでいることです。
これまで企業は他のWebサイトでのユーザーの行動データ(サードパーティデータ)を元に、リターゲティング広告などを配信していました。しかし、各国でサードパーティクッキーの規制が強化され、リターゲティング広告の配信や効果検証が難しくなっています。
そこで注目されているのがファーストパーティデータです。ファーストパーティデータとは自社で入手した顧客データのことですが、リテールメディアが該当します。
リテールメディアをマーケティングに活かそうという動きが加速しているのです。
生活様式の変化
コロナ禍により人々の生活様式も変化しました。これまで以上にオンラインショッピングを利用する人が増えたのです。
それに伴い、人々の情報収集の方法も変わりつつあります。従来は、テレビCMや紙広告を通して商品やサービスの情報を集めていたのが、最近はWebサイトやアプリケーションを見て、購買を決める人々も増えています。
このような変化に対して、リテールメディアは柔軟に対応でき、オンラインでコンテンツを配信できます。企業と顧客の関係を深める手段として、ますます注目が集まっています。
コスト面で優位
リテールメディアはコスト面でも優位です。従来のテレビCMや折り込みチラシなどの手法に比べて、広告を配信するのが自社メディアになることが多いので、費用がそれほどかかりません。
広告掲載の結果得られた収益は、次のマーケティング戦略にも活かせます。
また、メーカーの広告作成の提案などもできるようになり、新しい収益源が得られる可能性もあります。
これらが関心が高まっている理由ですね。
海外の成功例からの影響
リテールメディアの成功例は海外でよく見られます。
Amazon、ウォルマートなどはリテールメディアで巨額の売上を達成しました。
このような海外の成功例が追い風となって、日本の小売・流通業界でもリテールメディアへの関心が高まっているのです。
リテールメディアのメリット
リテールメディアのメリットはどのようなところにあるでしょうか。
以下にまとめました。
小売業者目線
リテールメディアで活用するファーストパーティデータは小売業者自ら獲得した情報で、出所もたしかで、高い信頼性があります。
そのような情報を元にすれば、個別の顧客にぴったりの広告を配信できるようになり、購買意欲を高められるでしょう。
また、Webサイトやアプリケーションを通してのクーポン配信やパーソナライズされた広告配信は幅広い顧客層に来店動機を与え、購買につなげられます。
さらに、製品を製造しているメーカーからも広告配信に見合った収入も得られるでしょう。
広告主目線
メーカーなどの広告主は、小売業者が集めたファーストパーティデータを活用して、顧客一人一人のニーズに合った商品やサービスのアピールができるようになります。
サードパーティデータの収集が困難になる中にあって、ファーストパーティデータは貴重な情報源です。
小売業のWebサイトを訪問する顧客はすでに商品やサービスに興味を持っていて、購買意欲も高い状態です。広告主としても、リテールメディアを通じでそのような顧客にアピールできれば、売上アップが期待できますね。
メーカーと小売業界との連携という点でもリテールメディアが役立ちます。それぞれが協力しながら販促活動を行えば、販売の現場で効果の検証もでき、検証結果を元に次の戦略を考えられるでしょう。
消費者目線
消費者にとってのリテールメディアのメリットは、自分のニーズとタイミングに合った広告やコンテンツが届くことです。
リテールメディアでは小売業者が顧客データを直接集めます。そのため、各顧客の状況を正確に把握でき、適切なタイミングで適切な広告を配信します。
それは消費者にとってもとても助かることです。例えば、トイレットペーパーの使用頻度について小売業者がデータを取得していると、次になくなりそうなときにクーポン付きトイレットペーパーの案内が届くなどです。
消費者にとってリテールメディアは有益な存在といえるでしょう。
リテールメディアの利用手順
小売・流通業界が実際にリテールメディアを利用する手順を見ておきましょう。
ターゲット層の分析
リテールメディアを実施するに当たって、まずターゲット層の事前分析をします。来店・購入している顧客のデータを分析し、ターゲットを絞り込んでいきます。
分析ではGoogle AnalyticsなどのWeb解析ツールが役立つでしょう。分析が済んだら、顧客の行動情報、属性、ライフスタイル、購買行動などの項目でターゲティングを行います。
広告配信
ターゲティングができたら、広告を作成し配信します。内容として、訴求力のある文章や画像を含めたいですね。
タイトルなども独自の特徴を打ち出し、顧客にアピールしてみましょう。
商品画像は利用するメリットが視覚的に分かるようにします。
配信方法は2種類。オウンドメディアかペイドメディアです。
オウンドメディアは自社が保有するメディア、ペイドメディアは費用を支払って広告を出すメディアです。
最初のうちはペイドメディアでの広告配信が主となるでしょう。
インストアプロモーション
インストアプロモーションは店頭販促とも呼ばれ、店内で行われる広告活動、販促活動のことです。
広告配信ができたら、店内で広告と連動したクーポンやサンプリング配布、イベントやワークショップの開催などをしてみましょう。
これらの活動に合わせて、顧客行動データを集めれば、今後ターゲットに合ったプロモーション活動もしやすくなります。
効果測定・修正
リテールメディアの実施で大事なのが効果測定です。
広告配信前と配信後で、顧客の行動にどのような変化があったのかしっかり確認する必要があります。
その結果を元に、今後の戦略を考えていきます。リテールメディアに修正すべき点があれば修正、良い効果が上がりやすくするのです。
事例
リテールメディアを実際に活用している事例があるので、紹介しましょう。
ファミリーマート
ファミリーマートでは、デジタルサイネージやレジ前モニター、チラシなどを活用して、リテールメディアを展開しています。店内では、「ミックスファム」というラジオ番組のようなものも提供しています。
顧客のコンビニ滞在時間は短いですが、その中で効果的な広告配信やブランディングを行っているのです。視覚・聴覚に訴える手法で、他のコンビニとの差別化を図っています。
マツモトキヨシ
マツモトキヨシのリテールメディアの特徴は値下げに頼らず、効果的な販促効果を生み出すことです。その目的にかなっているのがGoogleのプラットフォームを活用した販促モデル「Matsukiyo Ads(マツキヨアド)」です。
「Matsukiyo Ads」を活用し、動画広告を配信することで顧客の購買率を高めています。今後もアップデートを重ねていくそうですから、楽しみですね。
ウォルマート
ウォルマートはアメリカを拠点に世界中に展開するスーパーマーケットです。
同社はリテールメディアに力を入れていて、全米で成長率No.1になっています。特徴を見てみましょう。
ECサイトでは商品一覧が分かりやすくシンプルにまとめられ、その中にさりげなくスポンサー広告が表示されています。とても自然に溶け込んだスポンサー広告になっていて、広告かどうか分からないほどです。
また、ECサイトで自社商品の広告だけでなく、クレジットカード広告など様々な広告も配信しています。
株式会社 トライアルホールディングス
株式会社トライアルホールディングスは福岡県に本部を置き、全国展開しているスーパーマーケットです。同社のリテールメディアはとてもユニークです。
デジタルサイネージを取り入れているのはもちろん、売り場天井部には「リテールAIカメラ」、「スマートショッピングカート」にはタブレット端末とスキャナーが搭載されています。顧客の行動を正確に解析し、適切なタイミングでタブレット端末にクーポンなどを配信したりします。
さらにショッピングカートにはセルフレジ機能付き。広告配信だけでなく、顧客の利便性向上のために様々な取り組みをしているのが株式会社トライアルホールディングスです。
Amazon
Amazonのリテールメディア市場における占有率は非常に高いです。
特徴は、顧客の検索意図に沿った広告が表示されること。例えば、「サッカーボール」という言葉で検索した顧客に対しては、サッカーボールに関連した広告を表示させます。
すでに商品に興味を持っている人に出す広告になるので、実際に購買にも繋がりやすくなっています。
まとめ
いかがでしたか。
今回はリテールメディアについて解説しました。
サードパーティクッキーの規制が強化されている中で、注目されている広告配信手段です。
流通・小売業界に従事されている方はぜひ参考にしてみてください。