WebサイトやWebの広告などでは、様々な情報を数値・データとして収集することが可能です。
このような情報を分析・解析し、目的やターゲットに応じて戦略に落とし込むことで、よりマーケティング効果を高めることが可能になります。
とはいえ、様々な要素を含む数値・データを闇雲に分析・解析したとしても、重複や漏れが発生し、効果につながらないケースも起こり得ます。
このような分析・解析における精度をより高める上で、MECEという考え方が存在します。
今回は、MECEの基本的な概要から重要性、メリットやマーケティング活用するコツなどについてポイントを中心に紹介していきます。
MECEとは?
MECEは、1970年代にコンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーに所属していた、バーバラ・ミント氏によって提唱されたロジカルシンキング理論です。
Mutually(お互いに)、Exclusive(重複せず)、Collectively(全体に)、Exhaustive(漏れがない)の頭文字からなり、漏れや重複をせず分析・解析する上で重要な概念となります。
物事を考える上で、必要な要素を網羅しつつも重複しないよう整理することは重要です。
特に、Webマーケティングの領域においては、様々な要素が分析・解析に影響を及ぼします。
例えば、ターゲットを導くにあたって収集した情報に対し、漏れや重複が含まれていると適切な抽出ができず、無駄な工数やコストで終わってしまう可能性も高まります。
これに対し、MECEを意識して分析・解析を行うことで、より精度の高いターゲティングを行うことができ、運用効果を高めることが期待できます。
ロジカルシンキングとは?
そもそも、MECEも含まれるロジカルシンキングとは、論理的な思考のことを指します。
担当者による直感や感覚などに影響されることなく、数値やデータにもとづく考え方を行うことで、客観的かつ筋の通った結論を導きやすくなります。
ユーザー行動の多様化が進む昨今においては、直感的な思考の方が功を奏すケースも少なくありません。
とはいえ、数値・データをはじめ過去のユーザー行動などの事実にもとづいて分析を行い、その上で戦略立案につなげることで、効果を高める可能性も向上します。
このように合理的な判断を行う上で、ロジカルシンキングは重要視されています。
MECEの基本的な分類・考え方
続いて、MECEの基本的な分類・考え方について紹介していきます。
今回は、エリアによるユーザー属性について、MECEをもとに分類した例とあわせ紹介していきます。
① ダブりはないが漏れがある状態
エリアを「北海道」「東北」「関東」「中部」「近畿」「中国」「九州・沖縄」と分けた場合、重複してはいないものの「四国」が漏れた状態となります。
このような場合にはMECEではありません。
② 漏れはないがダブりがある状態
同じくエリアを「北海道」「東北」「関東」「中部」「近畿」「関西」「中国・四国」「九州・沖縄」と分けるとします。
すると、漏れはありませんが「近畿」と「関西」で重複するエリアが存在します。
このような場合もMECEではありません。
③ 漏れもダブりもある状態
次にエリアを「北海道」「東北」「関東」「中部」「近畿」「関西」「中国・四国」「九州」と分けるとします。
すると今回は、「近畿」と「関西」で重複するエリアが生じ、且つ「沖縄」が抜け漏れてしまいます。
このような分類もMECEではありません。
④ MECEの状態
最後に、エリアを「東日本」と「西日本」に分けるとします。
このケースであれば、漏れもダブりも生じないため、MECEの状態ということができます。
MECEが重要視される背景
Webマーケティングにおいて分析・解析は、運用効果を高める上で欠かせません。
ユーザー属性や興味関心、閲覧・購入などの行動履歴を可視化することができれば、よりターゲティング精度を高め施策の効果を高めることも可能になります。
とはいえ、そのためには対象となる数値・データを正しく分析する必要があります。
近年、ユーザー行動の多様化に代表されるように、Webマーケティングにおいては様々な検討要因が存在します。
特に数値・データは複数の要因が絡み合うケースが多く、それらを適切に分類しなければ間違った分析となり、マイナスに影響する可能性も高まります。
これに対し、MECEを活用すれば論理的かつシンプルに分類できるようになり、精度を高めるだけでなく業務効率化にもつながります。
そのため、多くの企業がMECEをマーケティングに活用しています。
MECEを活用することのメリット
自社のマーケティングにMECEを活用することで、以下のような効果が期待できます。
① 分析対象の精査
MECEによって物事を論理的に分類することができれば、分析対象の効率的な精査につなげることが可能になります。
様々な複合的な情報の中から、闇雲に分析につなげようとすると、対象が煩雑化し、効果的な分析にはならなくなります。
一方で、MECEをもとに対象となる情報を一度整理して分類することができれば、見落としや余計な情報をあらかじめ除き、より精度の高い分析につなげることができます。
② Webマーケティングにおける運用効果の向上
分析・解析による精度が高まれば、全体的なWebマーケティングの運用効果を高めることにもつながります。
分析・解析は、その後の戦略立案にも影響を及ぼします。
そのため、間違った分析によって導き出した戦略では、無駄なコストや工数で終わってしまう可能性も高まります。
これに対し、MECEによって論理的に導き出した方向性であれば、仮に失敗したとしてもその後の検証を繰り返す中で、運用効果を高めていくことも期待できます。
MECEをマーケティングに活用するコツ
MECEは、主にマーケティングにおけるアプローチと切り口の面にて有効活用することが可能です。
それぞれの特徴とあわせて紹介していきます。
① アプローチにおけるMECEの活用
マーケティングにおけるアプローチは、基本的にトップダウン型とボトムアップ型に分類できます。
トップダウンアプローチ
トップダウンアプローチとは、あらかじめ全体像を定め、そこから詳細を検討していくアプローチ手法となります。
例えば、自社の商品におけるターゲットを考える際に、「20代」「女性」「関東に住むユーザー」など深掘りしながら分類・検討していく方法がトップダウンアプローチとなります。
この際に、MECEを活用することで、漏れや重複を防ぎ、効率的に対象を導くことが可能になります。
ボトムアップアプローチ
一方で、ボトムアップアプローチとは、詳細を収集する中で全体像を検討していくアプローチ手法となります。
例えば、サービスに対してユーザーからアンケートを取った場合、その項目を分類・検討していく中で、自社の改善点を導き出す方法などが当てはまります。
こちらに関しても、MECEを活用することで、アンケート結果を効率的に分類できるようになり、論理的な方向性の策定につなげやすくなります。
② 切り口によるMECEの活用
MECEを効果的にマーケティングへと活用するためには、どのような切り口を設定するかが重要になります。
漏れもダブりもなく、MECEの状態であればすべて問題ないという訳ではありません。
この切り口を設定するにあたって、以下の要素を押さえておくと効果的です。
要素分解
要素分解とは、対象となる情報に対して要素を分解して分ける方法です。
例えば、日本国内を切り分ける場合、「北海道」「東北」「関東」「中部」「近畿」「中国・四国」「九州・沖縄」と分類することができます。
このように、あらかじめ全体像が決まっている場合には、要素分解によって切り分けていくと、効率的に分類することが可能です。
因数分解
因数分解とは、対象となる情報を計算式で表現し、それぞれの要素に分解していく方法です。
例えば、自社の売上を考えた場合、顧客数×一人当たりの顧客単価に分解することで算出することが可能です。
このように、計算式をもとに分類することで、全体像を把握しやすくなります。
時系列・ステップ分け
時系列・ステップ分けとは、対象となる情報を時系列やステップ(段階)で分類する方法です。
例えば、ユーザーのコンバージョン獲得に至る経路や、プロジェクトの進捗状況を把握する際には、時間軸や各ステップ(段階)に応じて分類することで、どこに問題があるのか、改善点などを可視化しやすくなります。
対象概念
対象概念とは、対象となる情報を相反する概念によって分類する方法です。
例えば、メリットとデメリットや法人と個人、量と質などが挙げられます。
このように相反する概念によって分類することで、それぞれの因果関係などが可視化され、マーケティングに落とし込みやすい特徴があります。
MECEのフレームワーク
以下のフレームワークは、MECEを考える上でも活用することができます。
① 4P分析
4P分析は、自社のマーケティング戦略を考える上で、現状を製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の4つに分類するフレームワークです。
商品やサービスをどう売上につなげていくかを考える上で効果が期待できます。
② SWOT分析
SWOT分析とは、自社のビジネスを強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つに分類するフレームワークです。
各要素においてプラスとマイナスの要因を検証することで、ビジネスチャンスの発見や改善につなげやすくなります。
③ 5フォース分析
5フォース分析とは、ビジネスにおける収益性などを検証する際に、業界内での競争、業界への新規参入者、代替品の存在、買い手(顧客)の交渉力、売り手(サプライヤー)の交渉力という5つの脅威をもとに分類するフレームワークです。
あらかじめ脅威を把握しておくことで、その後の改善や開発に活かすことができます。
④ 3C分析
3C分析とは、自社のマーケティング戦略における外的環境を把握する際に、顧客(Customer)、競合会社(Competitor)、自社(Company)の3つに分類するフレームワークです。
それぞれの要素をふまえ検証することで、自社の立ち位置を可視化することができます。
⑤ 7S分析
7S分析とは、組織における戦略を分析する際に、能力(Skills)、人材(Staff)、価値観(Shared Value)、経営スタイル(Style)からなるソフト面のSと、仕組み(Systems)、組織構造(Structure)、戦略(Strategy)からなるハード面のSに分類するフレームワークです。
それぞれの経済資源の相関関係を可視化することで、企業の組織における戦略を導きやすくなります。
MECEを活用する際の注意点
MECEは、様々な情報を精査・分類する上で効果的な理論となりますが、活用する際にはいくつか注意も必要です。
実施の際には以下の要素を考慮しておくと効果的です。
① 目的をふまえ活用していくことが重要
MECEは、目的をふまえて活用していくことが重要です。
重複や漏れなどMECEを意識した分類ばかりに注力してしまうと、本来の目的を見失ってしまうケースも少なくありません。
MECEはあくまで情報を分類するための手法の一つであるため、その後に何をするのか、どうマーケティング活用するのかを意識しながら活用していくと効果的です。
② 優先順位をつける
何でもかんでも情報を分類すればいいという訳ではありません。
例えば、関東のユーザー属性を分析し、マーケティング活用したいのであれば、日本全国のユーザー属性を分類しても無駄が生じてきます。
そのため、目的をふまえ対象となる情報に対しても、優先順位をつけ分類していくと効果的です。
③ 重複よりも漏れを防ぐこと
MECEにおいて、重複が無いことは重要ですが、それよりも漏れを防ぐことはより重要になります。
漏れた情報が分析・解析に影響を及ぼした場合、間違った結果や戦略立案につながりかねません。
そのため、情報の分類・精査の際には漏れを防ぐことに注意しておくと効果的です。
④ すべてがMECEで対応できるわけではない
MECEは、すべてにおいて万能という訳ではありません。
様々な要素が複合的に絡んだ情報の場合には、すべてを分類しきれないケースもあります。
また、無理に分類することでかえってマイナスの分析・解析につながる可能性も起こり得ます。
そのため、目的をふまえ参考として活用していくことが重要です。
まとめ
情報が雑多化する昨今において、MECEをもとに論理的に分析・解析していくことは重要です。
MECEのようなロジカルシンキングは、物事を論理的に見ることができるため、自社のマーケティングにおける運用効果を高めることも期待できます。
とはいえ、目的をふまえ展開しなければ効果にはつながりません。
今回紹介した内容も参考に、MECEを適切に自社のマーケティングへと活用していきましょう。