Web広告は、高精度なターゲティングや豊富な配信面によって成果が出やすいメリットがある一方で、改善などに手間がかかるデメリットもあります。
ディープラーニングや機械学習などを活用すれば、工数を削減できる可能性が高いです。
この記事では、広告AIや機械学習・ディープラーニングがどのようなものなのか解説していきます。
Web広告の手間が懸念となり現在導入を先送りしている方や、より効率的に活用したい方はぜひ参考にしてください。
1.広告AIとは
広告AIは、人工知能を導入することで運用における工程を自動化した配信手法です。
対象とするユーザーや配信するクリエイティブなどを自動で最適な形に設定してくれるため、広告主が工数削減をしながら効果を最大限引き出せます。
Web広告で効果的な配信を行いたい場合、各設定項目を把握して改善を繰り返す必要があります。
ある程度の経験や知識が求められますが、広告AIを活用すれば初心者の方であっても短期間で高い成果が期待できるでしょう。
2.広告AIができること
広告AIができることとしては、以下のようなことが挙げられます。
・広告を表示するタイミングの最適化
・広告の入札価格の自動調整
・クリエイティブの自動選択
より具体的にどのような利点があるのか確認していきましょう。
2−1.広告表示のターゲット設定
広告AIでは広告表示のターゲット設定を自動化できるため、今までよりも効率的かつ効果的な配信を実現可能です。
ユーザーの行動履歴や趣味嗜好に合わせて配信対象を決定できます。
また、配信先となるWebページの内容や文脈を分析し、関連した広告を表示させるコンテキストターゲティングも利用可能です。
美容に関心を持ったユーザーに対して製品情報を訴求するなど、成果の出やすいWeb広告配信が期待できます。
2−2.広告を表示するタイミングの最適化
広告AIによって、広告表示のタイミングを最適化できれば、より高確率でクリックしてもらえます。
特に、ニーズが自身で明らかになっている顕在層の場合、商品やサービスについてリサーチしているタイミングで良質な広告が表示されれば、購入につながる可能性が高いです。
Google広告では、曜日や時間帯などを設定できる自動化ルールも存在するので、細かく調整したい方は活用していきましょう。
2−3.広告の入札価格の自動調整
広告の入札価格の自動調整を行うことで、無駄な費用をカットできます。
例として、Google広告のスマート自動入札では、今までの配信データなどをもとにして予想を行い、ディスプレイ広告やリスティング広告の入札を実施します。
機械学習が進むと、コンバージョンの期待値が低いと判断すれば入札を制限することもできるため、コストを削減しながら十分な成果を実現できます。
2−4.クリエイティブの自動選択
広告AIは、クリエイティブの自動選択を行える点も利点です。
文章や画像などの素材を登録しておけば、広告枠に合わせて最適な組み合わせをAIが実行します。
サイズや表示形式も調整してくれるため、デバイスに合わせて視認性を上げることも可能です。
3.機械学習とは
機械学習はデータ分析方法の1つで、名称の通りコンピュータが自動で学習を行います。
人によって具体的な指示を与えなくても挙動することが特徴で、特徴量を元にしたトレーニングを実施すると学習機能を与えることが可能です。
ここからは、機械学習について以下の項目を解説していきます。
・機械学習が広告キャンペーンにもたらすメリット
3−1.機械学習はどのように行われるか
機械学習は、コンピュータに大量のデータを学習させ、パターンやルールなどを抽出していきます。
このような仕組みはモデルといわれています。
モデルは下記の3つに分類されます。
・教師なし学習
・強化学習
それぞれの内容を確認していきましょう。
教師あり学習
教師あり学習とは簡潔に言えば正解データを与えるモデルです。
正解データも合わせて学習させるため、データの特徴とその結果の関係性を学習します。
この関係性をもとに、正解が与えられない場合でもより高い精度で正解を導くことが可能です。
予測を行うときに有効な手法です。
教師なし学習
教師なし学習は教師あり学習の逆で、正解データを与えないモデルです。
このモデルでは、データの類似点・相違点からデータの関連性を学習します。
異常なデータの割り出しやデータの分類を行うときに有効な手法です。
強化学習
強化学習では、一般的にはいい結果になった場合にプラスの、悪い結果になった場合はマイナスの点が与えられるモデルです。
ある行動の結果を繰り返し学習することで、目的に沿って最良の結果を得られる方法を学習します。
人工知能によるAIによる将棋や自動運転に活用されます。
3−2.機械学習が広告キャンペーンにもたらすメリット
機械学習を広告キャンペーンに導入することで、キーワード選定や価格調整などの手間をなくせるだけでなく、コンバージョン数の向上も期待できます。
Web広告では、機械学習によってユーザー属性や検索クエリなどの膨大なデータを分析することが可能です。
数百万のデータを元にした予測など、人の手では実現できないような施策を実施できることが大きなメリットといえます。
4.ディープラーニング(深層学習)とは
深層学習(ディープラーニング)は、機械学習における分野の1つで、人の手を借りることなくデータの中から特定の特徴を見出します。
ニューラルネットワークの拡張を実施することで、より精度の高い分析を行うことが特徴です。
ニューラルネットワークとは、ニューロンと呼ばれる層が重なっているものです。
このニューラルネットワークによって、処理精度の向上を期待できます。
ここからは、ディープラーニング(深層学習)についても以下の項目を解説していきます。
・深層学習(ディープラーニング)のメリット
4−1.ディープラーニング(深層学習)はどのように行われるか
深層学習では、データから分析を行う際、入力層から取り入れたデータを中間層で計算し、その後出力します。
出力する前に、中間層で複数の層が存在しており、異なる性質から特徴を捉えることが可能です。
機械学習と比較すると、さらに高い精度の分析が可能になっており、音声認識や自動運転など様々な分野で取り入れられています。
4−2.ディープラーニング(深層学習)のメリット
深層学習は、多層のニューラルネットワークによって情報を深く学習できることが大きなメリットです。
広告配信では、タグ情報やユーザーの行動履歴・属性などをもとに、成果につながりやすい施策を実施できます。
例として、深層学習を導入しているRTB Houseでは、以下3つのファネルにおけるユーザーの行動形態を分析可能です。
・Consideration(興味)
・Conversion(購入)
新規顧客の獲得から顕在層へのアプローチまで、幅広く行えるメリットがあります。
5.機械学習とディープラーニング(深層学習)の違い
機械学習と深層学習では、以下のような点で違いがあります。
・得意なタスクの種類
・特徴量の表現
・結果への解釈性
それぞれ確認していきましょう。
5−1.必要なサンプルと計算量
機械学習の1つであるロジスティック回帰分析では「説明変数の数×10 = 最低限必要なサンプル数」が、分析の際に必要になるといわれています。
一方で、深層学習の場合は、ある程度の精度を確保するのに5,000件ほどのデータが必要で、さらに人間並の精度を求める場合は1千万件ほどのデータがないと難しいです。
必要となるサンプルの量が異なるため、計算量においても大きな違いが生まれます。
5−2.得意なタスクの種類
特徴量について設定を行う機械学習では、データ数が限られている場合でも高い精度の分析を行えます。
特に、単純なタスクの場合は機械学習が有用です。
一方で、深層学習は特徴量の設定を行う必要がなく、音声認識など複雑な処理を実行できます。
5−3.特徴量の表現
機械学習を活用する際は、分析の元となる特徴量を設定する必要があります。
例えば、ユーザーの収入について知りたい場合、学歴や地域、職業などのデータが求められるでしょう。
深層学習の場合は、人間が明示的に設定する特徴量を必要とせず、データから自動的に重要な特徴量を学習することが可能です。
人の手が加わることなく、今までカバーできなかった分析も実施できます。
5−4.結果への解釈性
解釈性は「機械学習による振る舞いを理解できるか」を表した用語です。
「入力に対し、なぜそのような出力をしたのか」がわかりづらい場合、ビジネスシーンでの活用が難しくなるといわれています。
機械学習はシンプルなモデルであるため、解釈性が高くなりやすい点が特徴です。
深層学習は複雑なモデルを取り入れていることから、解釈性が低くなりやすく、理解を得づらいとされています。
6.まとめ
いかがでしたか?
ディープラーニング(深層学習)や機械学習は、広告に取り入れることで、自動的に適切なユーザーや配信面への掲載が可能になります。
人の手間を減らし、効果を最大限引き上げることが可能なので、メリットなど理解して取り入れていきましょう。
なお、ディープラーニングは機械学習の枠組みの1つであり、異なる意味を持っています。
それぞれの用語の意味についても把握しておくことで、今後の広告配信のトレンドなどをキャッチアップしやすくなるでしょう。