マーケティングではインサイトという言葉をたびたび耳にしますが、具体的な内容について理解できている人は少ないのではないでしょうか。
あらゆる市場が飽和状態にある現代においては、無闇にサービスの提供を行うのではなく、インサイトを元に具体的なマーケティング施策を行うことが求められています。
本記事では、インサイトの意味や注意すべきことについて具体的に解説していきます。これからインサイトへの理解を深めてマーケティングで活用したい人はご一読ください。
インサイトとは?
まずはインサイトの基本情報について解説していきます。インサイトの意味や潜在ニーズとの違いなどについて理解を深めていきましょう。
インサイトの意味
インサイトを日本語に変換すると洞察、直感、発見、ものごとを見抜く力などを意味します。
マーケティングにおいては、消費者でも気づいていない欲求を指しており消費者インサイトとも呼ばれています。
潜在ニーズとの違い
インサイトは、意味が似ていることから潜在ニーズとよく混同されることがあります。
双方とも消費者自身が気づいていないという点は同じですが、潜在ニーズはインサイトよりも浅い領域にあるため、比較的引き出しやすいことが特徴です。
インサイトが重要視される理由
インサイトが重要視されている理由は以下の2つです。
・競合との差別化を図る
それぞれの理由について具体的に解説していきます。
ユーザーへの理解を深める
選択肢が豊富になった現代では、ユーザーが何を考えて行動しているのかを理解し、適切なマーケティングを施策する必要があります。
インサイトは、潜在ニーズよりもさらに深い場所にあるユーザー自身でも気づいていない欲求のことです。
したがって、インサイトを用いることができれば、より具体的なマーケティング戦略を導入できるでしょう。
競合との差別化を図る
高品質なものが溢れている現代において、Appleの製品のように、特定のものが圧倒的な人気を確保するのは珍しい事例だといえます。
ネットなどで比較し、簡単に類似品が手に入るため、高い品質や安さをアピールするだけでは消費者から受け入れてもらえないでしょう。
顕在ニーズだけを満たす商品は巷に溢れており、単純な価格競争に追い込まれています。
他者とは違った製品を生み出すためにも顧客が何を求めているのかをさらに細かく落とし込むことが大切です。
インサイトを明確にする方法とは
消費者も気づくことができていないインサイトは、どのようにすれば明確になるのでしょうか。
下記では、消費者のインサイトを明確にする方法を紹介していきます。
データを集める
消費者にアンケートを取ったり、サイトのアクセスデータなど、消費者の考えや心理が隠されているデータを可能な限り多く集めましょう。
データを分析する
収集したデータを分析します。
アクセスデータであれば、GA4(グーグルアナリティクス4)をはじめとするアクセス解析ツールを使って、データの傾向を探っていきましょう。
フレームワークでインサイトを探る
インサイトを見えるようにするには、ワークフレームを活用しペルソナ設定と共感マップを作成することが有効な手段です。
ペルソナ設定を細かくすれば、消費者目線での商品開発が可能になります。
共感マップは、ターゲットとなるユーザーが置かれている状況や考え、感じていること、望むものなどを図でまとめたものです。
ペルソナの設定や共感マップを活用することで、ユーザーのインサイトがだんだんと見えてきます。
新しい視点でのアプローチする
ユーザーのインサイトが分かったとしても、わかっただけでは意味がありません。インサイトがわかったら、その後は新しい視点でアプローチすることが重要になります。
「本来はこうあるべき」という考えをなくし、これまでにない形で体系化させましょう。
インサイトを用いる際に注意するべきこと
インサイトを用いる際に注意するべきことは以下の3つです。
・インサイトのエビデンスを示す必要がある
・自分のインサイトの理解度がわかりづらい
インサイトの活用で失敗しないために、どんなことに注意するべきなのか把握しておきましょう。
3つの注意事項について詳しく解説します。
使い方によっては会社のイメージを損なう
ストレートすぎる表現で潜在意識に強く働きかけると、逆に悪い印象を与えしまう可能性があるので注意が必要です。
たとえば食欲旺盛な人をターゲットにした広告で、肥満体型の人がカロリーの高い食事をしている様子を使用した場合、世間からの印象は悪い方向に進むでしょう。
あくまでも、やんわりとした訴求によって消費者に行動を働きかけることが大切です。
インサイトのエビデンスを示す必要がある
仮にインサイトを発見したとしても、根拠がなければ周りから受け入れてもらえません。
インサイトとは深い場所にある欲求であるため、アンケート調査やツールなどを用いてしっかりと情報の裏取りをすることが大切です。
自分のインサイトの理解度がわかりづらい
インサイトは可視化すること自体が難しく、自分がどれだけ理解できているのかがわかりづらいです。定期的に顧客インサイトのフレームワークを埋めることで、自分の理解度を測っておきましょう。
インサイトの事例
国内でも有名な顧インサイトを活用した事例として挙げられるのは以下の2つです。
・マクドナルド
インサイトをうまく活用するには、概念として捉えるだけでなく、実際の事例から活用方法について把握しておくことも大切です。
それぞれの事例について具体的に紹介していきます。
日清食品
手軽に食べられるカップヌードルは、若年層からの支持を得られていましたが、健康への意識が強いシニア層からは人気がありませんでした。
日清食品がシニア層についてさらに調査を実施したところ、健康思考を目指しているにも関わらず、SNSでは豪華な食事をアップしており、食へのこだわりが強いことが分かったのです。
日清食品は調査結果をもとにカップヌードルリッチを販売し、発売7ヶ月で1,400万食を売り上げることに成功しました。
食へのこだわりが強いシニア層は、ジャンキーな食品であったとしても品質が高いものには興味を示すことがわかった事例です。
参照:一世を風靡したあの贅沢メニューが再び登場!「カップヌードル リッチ スッポンスープ味」「カップヌードル リッチ フカヒレスープ味」をリニューアル発売 ― NISSIN
マクドナルド
ヘルシー思考の人が多かった中、マクドナルドは2006年にマックサラダという商品を販売しましたが、売り上げが伸びませんでした。
その後ビッグマックのような、逆に健康から遠ざかるようなメニューは人気だったことから、消費者のニーズは真逆であることが発覚します。
ヘルシー思考と言いつつも、消費者はマクドナルドに健康に悪い食べ物を食べに来ていることが分かりました。
参照:ビッグマック® ― マクドナルド
カリフォルニア牛乳協会
1990年代のアメリカのカリフォルニア州では牛乳の消費量が減少していました。カリフォルニア牛乳協会は健康に良いという路線で広告を打っていましたが、売り上げは思うように伸びなかったのです。
消費者の意見を聞いたところ、牛乳が欲しいときに手元に無いのは嫌だが、そもそも牛乳について考えたことがないという意見が多い傾向にありました。
意見をもとにカリフォルニア牛乳協会はGot Milk?(牛乳ある?)キャンペーンを実施し、パンやクッキーの近くに牛乳を設置するようにします。
すると、牛乳消費量は前年比の70%増になり、小売額で15億円もの増益になりました。
「Got Milk?」キャンペーンは、消費者の根底にある望みを元に独自の広告を編み出し、成功に導いた代表的な事例だといえます。
参照:THE GOLD MEDAL OF SPORTS DRINKS GOES TO MILK ― got milk?
まとめ
いかがでしたか?
顧客インサイトは、顧客ですら認識していない欲求を指しており、潜在ニーズよりもさらに深いニーズのことです。比較できる商品や、さらに高品質かつ安価な商品が溢れている昨今では、顧客インサイトをもとに顧客の購買意欲を理解する必要があります。
インサイトを取り入れたい場合は、一消費者として体験することやアンケートをとって情報の根拠を示すことが大切です。
また、過去の事例なども参考にして、効果的な活用を行なっていきましょう。