IT技術の発展に伴い、近年ではビックデータの活用やAI技術を活かした分析などを行う企業も増加傾向にあります。
マーケティングにおいて、より多くの情報を分析に活用することは、その後の戦略やより可能性の高い戦術につなげやすくなります。
クラスター分析は、多くの情報を分類し、類似したカテゴリに分けることで全体像を見やすくするフレームワークです。
今回は、クラスター分析の基本的な概要から、メリットや手順、注意点などについてポイントを中心に紹介していきます。
クラスター分析とは?
クラスター分析とは、個々の数値やデータといった情報の中から、似ている情報をもとにグルーピング化することで、分析に活用するフレームワークのことを指します。
例えば、顧客情報に対してクラスター分析に当てはめて分類した場合、性別や年齢、地域といった情報をもとにユーザー情報を振り分けることが可能です。
このように数値・データをカテゴリ別に分けることで、どこに集中しているのか、他と比べて足りないエリアなどが可視化することができるため、その後のマーケティング活動も効果につなげやすくなります。
クラスター分析では、先ほどの性別や年齢、地域のようなグルーピングされた情報はクラスター(集団)と呼ばれています。
このクラスターの数には制限はなく、必要に応じてクラスターを用意することも可能です。
とはいえ、クラスターの数が増えれば情報が分散しすぎてしまい、全体的な傾向が把握しづらくなる可能性もあります。
クラスター分析では、あくまで全体傾向を客観的に分析する上で効果が期待できるため、深掘りしすぎることなく活用すると効果的です。
クラスター分析の種類
クラスター分析は、大きく2種類の手法が存在します。
それぞれ特徴や得られる効果が異なるため、自社の目的に合わせて選択する必要があります。
① 階層性クラスター分析
階層性クラスター分析では、数値・データなどの情報に対する類似度をあらかじめ算出した上で、一定の基準に沿ってクラスターを形成していく方法のことを指します。
特定の類似度に応じてクラスターが形成されるため、グルーピング化の後に分析する必要がありません。
そのため、客観的に比較検討していく上では効果が期待できます。
ただ、階層性クラスター分析では類似度に応じた分類が難しいため、対象となる情報量が多くなりすぎた場合には適応しづらい傾向もあります。
ビックデータなどでは分類に時間や工数がかかりすぎてしまうため、小規模の情報の分類に効果的です。
また、階層性クラスター分析を行う手法には、ウォード法や群平均法、最短距離法、最長距離法などの分類法を活用することで効率化させることも可能です。
特に、多くの分類に関しても精度が高いウォード法や群平均法は階層性クラスター分析にて多くの企業が活用しています。
② 非階層性クラスター分析
一方で、非階層性クラスター分析は、あらかじめ情報を分類するクラスターやその数を決めた上で形成していく方法のことを指します。
階層性クラスター分析と異なり、特定の階層構造を形成せず、指定のクラスター内の類似性を強調させながら分類していきます。
分類時における計算量が少なく済むため、多くの情報に対しても適応でき、ビックデータの分類でも効率的に行うことが可能です。
ただ、非階層性クラスター分析では当初設定したクラスター数に依存するため、後からクラスターを追加変更することができません。
また、クラスターの設定や数の指定などには目的に応じた対応が求められ、分類後の分析に際しても専門知識や経験が必要になります。
この非階層性クラスター分析には、k-means法(k平均法)や超体積法といった分類法を活用することで効率化も可能です。
特に、k-means法(k平均法)は対象となる情報とクラスターの距離を計算して割り当てることで、効率的にグルーピングを形成していくことができます。
クラスター分析のメリット
クラスター分析では、対象の数値やデータ、情報に対してどこに集中しているのかという点を可視化することができます。
マーケティングにおいて、自社で持つ情報がどういった傾向にあるのか把握することは重要です。
個々の数値にとらわれ戦略を変えてしまうと、間違った方向に進み、集客や売上に影響を及ぼす可能性もあります。
そのため、まずは全体像を把握して戦略立案につなげていく必要があります。
その上で、漠然とであったとしても全体傾向をつかんでおくことは重要です。
クラスター分析では、様々な観点で集めたデータを目的に応じてグルーピング化することで、全体傾向を把握することが可能です。
これにより、自社の現状や傾向、強みや弱み、問題点や課題を見つけるヒントにつなげることができ、その後のマーケティングを効率的に進めることが期待できます。
クラスター分析を行う手順
効果につなげるグルーピング化を図る上で、以下の手順を参考にすると効果的です。
① 分析の種類の選定
まず、クラスター分析を行う種類の選定を行います。
クラスター分析は、先ほどふれたように階層性クラスター分析と非階層性クラスター分析に分けられます。
ビックデータなど多くの情報量を取り扱う場合には非階層性クラスター分析を選択する必要がありますが、この分析には専門知識や経験・ノウハウなども求められます。
また、一般的なクラスター分析ではそこまで多くの情報量を扱わないため、多くの場合では階層性クラスター分析を活用すると効果的です。
② 対象の類似度の定義を決める
次に、対象の情報を分類していく上で、類似度の定義を決めていきます。
クラスター分析では、類似度によって情報を分類していきますが、その基準は対象となる情報のカテゴリとの距離が判断材料となります。
例えば、ユーザーの身長と体重を情報として、クラスター分析にかけるとします。
これらを、身長を150cmから200cmまで1cm刻みに分類し、体重も50kgから100kgまで1gずつ振り分ける定義を行った場合、各ユーザーの情報にもとづいて近しい数値に分類されます。
ただ、1つの指標であればまだしも、身長と体重のように2つの要素をもとに分類した場合、同じ1という数値でもcmとkgで要素が異なるため、分類時に問題が生じる場合も起こりえます。
このような場合を回避するために、クラスター分析ではユークリッド距離や標準化ユークリッド距離、マハラノビス距離、マンハッタン距離、チェビシェフ距離など様々な距離を定義する概念が用意されています。
③ 分析手法を決定する
続いて、分析手法を決定していきます。
クラスター分析の形成には、種類に応じて様々な方法が用意されています。
この手法によって形成されるグルーピング化の優先度やバランスなどが変わるため、目的に応じて選定する必要があります。
一般的には、階層性クラスター分析の場合はウォード法、非階層性クラスター分析であればk-means法(k平均法)を活用し分析方法を決定していけば、その後の形成時に問題も発生しにくいため、信頼性の高いグルーピング化につなげることが可能です。
④ 分析結果を活用する
最後に、分析結果をマーケティングに活用していきます。
クラスター分析は、グルーピング化すれば終わりというわけではありません。
その結果をもとに自社のマーケティングに活かしていくことが重要です。
全体的な傾向がつかめたのであれば、その傾向をもとにさらに細分化するケースもあります。
類似する情報の傾向は、マーケティングのヒントになり得るため、広告・プロモーション施策ふくめ戦略につなげていくと効果的です。
クラスター分析における活用事例
クラスター分析は、効果的に活用することでマーケティング活動を効率化することが可能です。
自社の目的に応じて以下の事例も参考にしていくと効果的です。
① 顧客のグルーピング
クラスター分析を活用すれば、顧客を効率的にグルーピング化することが可能です。
例えば、自社の顧客がどういった属性なのか可視化することができれば、ターゲティング精度を高めることにつながり、プロモーションにも活用できます。
これをもとにメルマガやDMに活用すれば、コンバージョン獲得にもつなげやすくなります。
クラスター分析によってグルーピング化したユーザーに対し、属性に応じた内容やニーズをふまえたアプローチができれば、費用対効果を高めることも期待できます。
② アンケートのデータ分析
アンケートなどのデータ分析においても、クラスター分析は活用することができます。
アンケート結果を取りまとめるだけでは、数値集計にしかなりません。
これにクラスター分析を加えることで、アンケートを通じてユーザーがどういったニーズを抱えているのか、どうアプローチしていくべきかといったヒントを導くことが可能になります。
アンケートやヒアリング結果などによるユーザーの声は、大きなビジネスチャンスにつながります。
単に数値の集計に留めるのではなく、クラスター分析を通してその後の戦略につなげていくと効果的です。
クラスター分析の注意点
クラスター分析は、種類や分類法なども多岐に渡るため、それぞれ正しく理解した上で活用していく必要があります。
これからクラスター分析を活用する際には、以下の要素を押さえておくと効果的です。
① データの類似性を判断する方法は1つではない
まず、クラスター分析におけるデータの類似性を判断する方法は一つではありません。
類似性はあらかじめ自社で設定する必要があります。
そのため、類似基準を間違えば、目的と異なるグルーピング化につながる可能性もあります。
間違ったグルーピングによる戦略立案では効果につなげることもできません。
マーケティング効果を高めるためにも、自社にあった類似性を意識し、クラスター分析を活用していくことが重要です。
② 各クラスターの特徴は自分で考察する必要がある
クラスター分析によってグルーピング化された情報は、その後自社で考察していく必要があります。
クラスター分析では、あくまで似ている数値・データを分類するにすぎません。
そのため、グルーピング化した情報をもとに適切に考察できなければ、ただ分類しただけで終わってしまいます。
考察には、担当者の知識や経験、ノウハウなども求められます。
一人で考察するのが難しい場合には、第三者に意見をもらうことも重要です。
③ 必ずしもきれいに分類できるとは限らない
最後に、クラスター分析では必ずしもきれいに分類できるわけではありません。
一つの指標に情報が固まり、クラスターが分類できずに終わるケースも少なくありません。
このような場合には、類似度の基準やクラスターの数などを見直し、再度分析しなおす必要があります。
また、顧客情報などはどうしても自社に有利なように分類してしまうケースもあります。
ただ、このような分類では情報を適切に可視化できず、間違った戦略につながる可能性も高まります。
クラスター分析では、あくまで客観的な視点に立ちグルーピング化していくことが重要です。
まとめ
自社の顧客情報や市場傾向、競合分析などを行う上で、数値・データをはじめとした情報をカテゴリ別にグルーピング化していくことは重要です。
クラスター分析を活用することで、全体的な傾向をつかむことができ、その結果をもとにマーケティングに活用していくことで、売上増加や利益拡大につなげることも可能になります。
今回紹介した内容も参考に、クラスター分析を効果的に自社のマーケティングに活用していきましょう。