自社の売上増加や利益拡大を図る上で、一人当たりの顧客を獲得するためのコストを把握しておくことは重要です。
当然ながらプロモーション施策にはコストがかかり、このコストが大きくなれば広告・プロモーション施策を見直す必要が出てきます。
このような顧客獲得コストは、CAC(Customer Acquisition Cost)と呼ばれており、CACをもとにマーケティングを行うことで、現状分析や改善策に繫げやすくなります。
今回は、CACの基本的な概要からマーケティングにおける重要性、種類や活用のコツなどについてポイントを中心に紹介していきます。
CACとは?
CACは、Customer Acquisition Costの略で、顧客獲得コストのことを指します。
自社のビジネスにおいて、新規顧客の獲得は売上増加や利益拡大に繫がります。
この新規顧客を一人獲得するためには、広告だけでなくホームページやチラシの作成、販売における人件費など、マーケティングにおける様々な施策のためのコストが必要になります。
制作や運用を外部企業に委託していれば、その分手数料などもコストとして含まれ、これらのコストに対して新規顧客獲得数で割った数値がCACとなります。
CACをいかに抑え、効率良く獲得に繫げられるかが重要になるため、あらかじめ自社の目的や目標をふまえ適切なCACを把握しておき、その上で効果検証を行っていきましょう。
CACを把握することの重要性
CACの把握は、マーケティングはもとより、自社のビジネスの効率性を高める上で重要です。
新規顧客のリピーターやファン化に繫げることができれば、LTV(顧客生涯価値)を高める効果も期待できます。
CACは、このLTVとあわせ検証していくことで、中長期的な成長戦略に繫げることも可能になります。
近年、ユーザー行動の多様化や流行の短期化などが進み、様々なニーズに対応したビジネスが求められています。
そのため、単発的な売上やコストに注力するのではなく、CACをもとに効果検証しつつ、中長期的な戦略を構築していくことが重要です。
LTVとの違い
先ほどふれたように、CACはLTVと組み合わせることでより詳細な把握に繫げやすくなりますが、LTVとはLife Time Valueの略で、顧客生涯価値のことを指します。
顧客は、単に1回商品を購入しただけでなく、気に入れば他の商品の購入にも至るでしょう。
特に近年では、サブスクリプションと呼ばれる月額制のサービスも、業種問わず多く登場してきており、1回の単価というよりは生涯でどれだけ利益をもたらすのかも注目されています。
CACが高かったとしても、LTVも高ければ結果的に利益に繫がっているともいえるでしょう。
LTVはCACと組み合わせながら検証していくことで、ビジネスを健全に進めることが可能になります。
CACの代表的な種類
続いて、CACの代表的な種類について紹介していきます。
一口にCACといってもその種類は多岐に渡ります。
中でもCACは顧客を獲得する経路(チャネル)によって以下に分類することが可能です。
Organic CAC
Organic CAC は、自然検索によって獲得した際の顧客獲得コストのことを指します。
基本的にはGoogleやYahoo!といった検索エンジンをはじめ、口コミサイトなどからの流入などが対象となります。
SEOなどによって検索結果からの流入を強化する施策もありますが、一般的には企業側の努力というよりはユーザー側にて自然と顧客化した動きとなります。
そのため、Organic CACをもとに何か改善するというよりは、他のCAC要素と照らし合わせながら検証していくのが望ましいといえます。
Paid CAC
Paid CAC は、主に広告によって獲得した顧客獲得コストのことを指します。
広告効果に応じてPaid CACは変動するため、広告の最適化を図り、費用対効果を高めることでPaid CACを下げることが可能です。
また、Paid CACは通年の広告費とキャンペーンなどの一時的な訴求とでは数値が変わる場合もあります。
Blended CAC
Blended CACは、Organic CACとPaid CACをあわせトータルで顧客獲得コストを把握する際の指標となります。
顧客獲得コストには、自然流入や広告以外にも様々なマーケティング活動が影響しており、人件費なども加味すると全体的なコストを算出でき、これに対して新規顧客数で割った数値がBlended CACとなります。
企業として全体的な傾向を把握する上では、このBlended CACをもとに検証していくと効果的です。
CACを把握する事のメリット
次に、CACを把握することのメリットについて紹介していきます。
CACは、自社のビジネスにおける健全性を可視化することができますが、目的や種類などに応じて把握していくことで、以下のような効果も期待できます。
効果的なアプローチ先の選定
まず、CACを把握することで、効果的なアプローチ先を選定することが可能になります。
先ほどふれたCACの代表的な種類でもあるように、CACでは様々な獲得に至るチャネルを把握できます。
これにより、どの経路が効果に繫がっているのか可視化することで、マーケティング活動における費用対効果を高める効果が期待できます。
一般的に、マーケティングやプロモーションにかける予算には上限が設けられていますが、その限られた予算内で効果を高める上でも、あらかじめCACを把握しておくことが重要です。
ビジネスにおける収益性の確認や効果的な戦略立案
また、CACの把握によりビジネスにおける収益性の確認や効果的な戦略立案に繫げることも可能です。
CACは、LTVとあわせることで、自社のユニットエコノミクスを算出することができます。
ユニットエコノミクスとは採算性のことを指し、CAC(顧客獲得のために投入したコスト)とLTV(獲得した顧客から得られる利益)のバランスを検証することができます。
この指標をもとに新たな戦略を立案することで、より現実的かつ健全な会社運営に繫げることが可能になります。
CACの計算方法
続いて、CACの計算方法について紹介していきます。CACは、以下の計算方法で算出することが可能です。
CAC=新規顧客の獲得コスト÷新規顧客獲得数
この新規顧客獲得コストには、広告費はもちろん、ホームページやチラシの作成、販売における人件費、外部委託の手数料なども含まれます。
また、一般的にCACは四半期や年間などの期間で区切り算出する傾向にありますが、取り扱う商材やサービスによっては、月によって変動が激しいケースも少なくありません。
特に季節性の高い商品であれば尚更CACの差が大きくなるため、キャンペーン期間や一定のタイミングをもとに計算しましょう。
CACをもとに改善に繫げるポイント
最後に、CACをもとに改善に繫げる上でのポイントについて紹介していきます。具体的には以下の要素をもとに検証・改善していくと効果的です。
販売プロセスの可視化と効率化
ユーザーが自社の商材やサービスを知り、顧客化に繫がるためにはいくつものプロセスが存在しますが、そのプロセスを可視化し、課題や問題点を改善していくことでCACの抑制に繫がります。
申込フォームで離脱しているケースが多ければ、フォームの入力項目などを簡略化することで改善する可能性も高まります。
また、顧客管理やサポート体制をシステム化することで、人件費を調整できる可能性もあります。
このように、販売プロセスを可視化することで、現状のボトルネックが発見しやすくなるため、改善にも繫げやすいでしょう。
広告の最適化
広告の最適化を図ることもCACの改善にとって重要です。
一番即効性の高いコストカット方法としては、広告費の調整です。
Web広告であれば、運用効果を細かく数値・データなどで把握し、広告クリエイティブをはじめ、出稿先媒体やLP、ターゲットなどを定期的に見直し検証していくことで、費用対効果を高めることが可能です。
また、広告によって認知が高まれば、Organic CACにも良い影響が出る可能性もあります。
様々なチャネルをもとに効果検証を行い、PDCAサイクルを回していくことでCACの改善に繫げていくと効果的です。
まとめ
CAC(顧客獲得コスト)は、自社のビジネスにおける健全性を把握する上で重要な指標となります。
LTVなどとあわせユニットエコノミクスとして定期的に確認することで、マーケティング全体の価値を高めることも期待できます。
今回紹介した内容も参考に、CACをもとに自社のマーケティング効果を高めていきましょう。