NPO団体向けの無料広告、Google Ad Grants(グーグルアドグランツ)というものをご存じでしょうか。
Googleが提供しているNPO団体向けの無料広告プランで、非営利団体であっても効率的にプロモーション施策を行い、日々の活動を促進させることが可能です。
活用するためには事前条件とともに制限もいくつか存在するため、仕組みや手法を正しく理解し、適切に活用していくことが重要です。
Google Ad Grantsの基本的な概要から、参加条件、メリットなどについてポイントを中心に紹介していきます。
Google Ad Grantsとは?
Google Ad Grantsとは、Google社が提供するNPO法人(Non Profit Organization:非営利団体)に向けたサービスの一つです。
そもそもGoogleは非営利団体向けにGoogle for Nonprofitsと呼ばれるプログラムを展開しており、Google Ad Grantsもその中のサービスに含まれます。
Google Ad Grantsでは、NPO法人であればGoogleリスティング広告として利用できる費用を、毎月最大$10,000(約100万円)まで無料で受け取ることができます。
実施に際しては多少の規定や制限も存在しますが、非営利団体の活動を加速化させる上で、有効に活用することが期待できます。
Google Ad Grantsの位置づけ
Google社がGoogle Ad Grantsを実施する背景には、以下の2つが考えられます。
①CSRの観点
CSR(Corporate Social Responsibility)とは、企業における社会的責任や社会貢献の意味を持ち、大手企業に多く取り入れられています。
世間からの視点や株主からの評価など、大企業になればなるほど重要になります。
これには、業績に限らず企業としてのスタンスや社会的責任が問われます。
このような背景から、採算は度外視し、世間や社会から信頼される企業を目指す目的で、Google Ad Grantsを実施しているものと考えられています。
②市場規模が拡大している観点
近年、NPO法人の市場規模が拡大しつつあります。
1団体あたりの規模だけでなく、NPO法人自体の数も増加傾向にあります。
規模が大きくなれば、集客を目的としたニーズが生まれる可能性は高まります。
そこで、先行投資的にNPO法人に向けたキャンペーンとしてGoogle Ad Grantsを活用していることも考えられます。
Google Ad Grantsのメリット
続いて、Google Ad Grantsを活用するメリットについて紹介していきます。
Google Ad Grantsは、無料でリスティング広告を実施できる点が大きなメリットとして挙げられますが、それ以外にも以下のような効果が期待できます。
①無料で集客を増やすことが可能
Google Ad Grantsでは、Google広告に実施できる費用を毎月最大$10,000(約100万円)分まで無料で受け取ることが可能です。
条件や制限はありますが、リスティング広告にて100万円の費用をかけずに集客できることは大きな利点となります。
非営利団体であったとしても、活動を広めたり寄付を募るためにはマーケティングやプロモーションを行う必要があります。
それが無料で展開できる点は大きなメリットとなります。
②認知度拡大やブランディング効果
NPO法人は、一般的に商材やサービスがあるわけではないため、企業に比べてマーケティングやプロモーションが難しい側面があります。
また、災害時のボランティアなど一時的な活動も多く、集客するにしても即効性が求められます。
このような背景において、Googleのリスティング広告で訴求できることも、大きなメリットとして挙げられます。
リスティング広告であれば、検索キーワードに応じて訴求でき、顕在層に対してアプローチが可能です。
また、運用型広告であるため即効性も高く、効果が期待できる特徴もあります。
特に、NPO法人の活動に関するキーワードは、競合性もそこまで高くは無いため、効率的に訴求することで認知度拡大やブランディングにつなげることも期待できます。
Google Ad Grantsの参加資格や基準とは?
次に、Google Ad Grantsの参加資格や基準について紹介していきます。
Google Ad Grantsは誰でも活用できるわけではなく、当然ながらNPO法人であることを証明していく必要があります。
なお、非営利団体であれば全て対象というわけではなく、政府機関や団体、病院、医療団体、学校、大学、学術期間などは対象外となります。
また、リスティング広告を実施するとなると、広告からの遷移先としてホームページが必須となります。
このホームページも適用条件となり、NPO法人としての活動が、視覚的にも分かりやすく且つ情報量も多く掲載されている必要があります。
これらを確認した上で、Google Ad Grantsに参加するためにはGoogle for Nonprofitsのサイト(Google for Nonprofits | 非営利団体向けプログラム)から申し込むことが可能です。
この際、「TechSoup」というNPO法人を支援する為のプログラムでアカウントを作成する必要があります。
Google Ad Grantsの広告配信における制約
続いて、Google Ad Grantsの広告配信における制約について紹介していきます。
Google Ad Grantsは、月約100万円のリスティング広告が出稿できますが、いくつか制限が設けられているため注意が必要です。
具体的には以下の要素となります。
①入札単価の上限
まず、Google Ad Grantsではリスティング広告の入札単価が上限で$2(約200円)と決められています。
一般企業も含め競合性が高いキーワードなどは、入札単価が高騰する可能性も起こり得ます。
その場合には表示されない可能性も高まるため、キーワードの見直しや広告の品質スコアを向上させるなど、対応を行う必要があります。
②予算の上限
先ほどからもふれているように、Google Ad Grantsは毎月$10,000(約100万円)まで無料で出稿することが可能です。
そのため、効率的な運用につなげるためには、適切なキーワードや広告グループ、キャンペーンなどに予算を振り分けていく必要があります。
なお、一定条件を満たしたNPO法人であれば、Google Ad Grants Proというプログラムも用意されています。
この場合、1ヵ月の予算を$40,000(約400万円)まで増額させることも可能です。
③配信タイプおよびネットワーク
Google Ad Grantsは、リスティング広告として活用することができますが、その配信手法はテキスト広告のみに限定されています。
また、配信先のネットワークもGoogle検索に限定されており、通常のリスティング広告のように関連する媒体には配信されないため、あらかじめ注意が必要です。
④商用利用の禁止
NPO法人の中には、様々なマーケティングやプロモーション施策を同時に実行しているケースも少なくありません。
ただ、Google Ad Grantsでは商用での利用は禁止されています。
例えば、広告の遷移先ページにアフィリエイトを実施している場合には、出稿自体停止される場合もあるため注意が必要です。
⑥出稿キーワードや広告文・リンク先ページ
商用利用に関連して、Google Ad Grantsでは出稿キーワードや広告文などにも制限が設けられています。
例えば、一般的なキーワードやNPO法人として属さないブランド名などは出稿できない可能性があります。
また、単一のキーワードも一般的なキーワードに含まれる可能性が高いため、出稿することは出来ません。
その他、リンク先ページとしてSNSやWordPressなどサードパーティーと呼ばれるサービスを使用したページは、設定できないため注意が必要です。
⑦入札ツールの制限
利用できる入札ツールにも制限があります。
Google広告で利用できるもののうち、Google Ad Grantsで利用できないものは下記のとおりです。
・コンバージョンオプティマイザー
・最適化タブの入札単価候補
Google Ad Grantsの使用方法
Google Ad Grantsの仕様手順は下記のとおりです。
1.Percentの認証を受ける
2.Google Ad Grantsのアカウント作成
3.キャンペーン作成
4.広告作成
それぞれ確認していきましょう。
Percentの認証を受ける
はじめにPercentの認証を受ける必要があります。
審査は3~5営業日程で完了します。
1.Google for Nonprofitsにアクセス>「使ってみる」をクリック
2.Google Ad Grantsの利用の対象かどうかを確認
3.自分の団体が登録されている国や地域を選択
4.「開始」をクリック>「非営利団体番号」「住所」「オンラインの連絡先」を入力
5.団体の正式名称を入力>自分の団体が表示されたら団体名をクリック
6.団体のサイトURL、理念・活動目的、団体の活動を説明するカテゴリを選択
7.団体の代表者の氏名、役職、メールアドレスを入力
8.表示内容に同意する場合は「上記の利用規約に同意する」にクリックし送信
Google Ad Grantsのアカウント作成
Percentの審査完了メールが届いたら、Google Ad Grantsのアカウント作成に進みます。
既にGoogle広告アカウントを持っている場合でも、Google Ad Grants専用のアカウントを作成しましょう。
1.Google for Nonprofitsに登録したGoogleアカウントでログイン
2.「請求先住所の国」を選択>「タイムゾーン」を選択>「通貨」を選択(Google Ad Grantsでは、団体の所在地にかかわらずドルで計算されるため「米ドル」を選択)>「送信」をクリック
キャンペーン作成
次にキャンペーン作成に進みます。
1.キャンペーンページにて「+新しいキャンペーンを作成」をクリック
2.キャンペーンタイプの選択にて「検索」をクリック
3.キャンペーンの目標を選択>キャンペーン名を入力
4.Google Ad Grantsは検索広告のみ対応しているため、「キャンペーン設定」の「ネットワーク」にて、「」Google検索パートナーを含める」と「Googleディスプレイネットワークを含める」のチェックを外す
5.「ターゲティングとオーディエンス」にて、「地域」「言語」「予算」を入力し、入札戦略を選択
6.「+新しいサイトリンク表示オプション」をクリック>サイトリンクを2つ以上入力
7.「保存して次へ」をクリック
広告作成
次に、広告の作成に進みます。
各広告グループで、2つ以上の広告を作成する必要があります。
1.「+新しい広告」をクリック
2.広告を入稿して「完了」をクリック>「保存して次へ」をクリック
3.キャンペーン確認後、「キャンペーンを公開」をクリック
Google Ad Grantsの効果的な運用方法
最後に、Google Ad Grantsの効果的な運用方法について紹介していきます。
Google Ad Grantsは、先ほど紹介したように制限が設けられているため、通常のリスティング広告よりも工夫を凝らす必要があります。
①キーワード選定にこだわる
リスティング広告は、キーワードに応じた入札制で、クリックされて初めて課金対象となります。
競合他社が多ければ入札額が高騰する傾向にありますし、ユーザーニーズに合致しないキーワードであればクリックにつながらない可能性も生じます。
このような背景に加え、制約でもふれたように、Google Ad Grantsでは単一のキーワードでの出稿はできません。
例えば、「ボランティア」のようなキーワードでは入札出来ないため、「災害 ボランティア」「ボランティア 募集」のようにキーワード選定には工夫を凝らす必要があります。
NPO法人としての目的はもちろんのこと、ユーザーニーズや競合他社の状況などをふまえ選定していくと効果的です。
②毎月のクリック率は5%以上が必要
Google Ad Grantsでは、月のクリック率が2ヶ月連続で5%を下回ってしまった場合、広告キャンペーンやアカウント自体が一時停止してしまう可能性があります。
一度停止されると、5%を超えるまでは表示が再開しない場合も起こり得ます。
そのため、先ほどのキーワード選定はもとより、広告文などを定期的に見直し、最適化していく必要があります。
また、Google Ad Grantsでは動的検索広告を活用することが可能です。
動的検索広告とは、Google側で対象のページなどを参考に自動で関連性の高い広告を表示してくれる仕組みのことを指します。
この仕組みを活用すれば、クリック率を高めた運用につなげることも期待できます。
③PDCAサイクルに応じた定期的な見直しおよび改善
リスティング広告は、一度入札設定を行えば完了というわけではありません。
運用型広告でもあるため、定期的に数値やデータをもとに状況を見直し、ブラッシュアップしていく必要があります。
近年、ユーザー行動は多様化し、ブームやトレンドといった流行は短期化が進んでいます。
このような中で、ユーザーの心理や行動を汲み取り訴求していくためには、PDCAサイクルに則り改善していくことが重要です。
まとめ
Google Ad Grantsは、NPO法人(非営利団体)に向け、リスティング広告の費用を月額最大$10,000(約100万円)まで無料で展開できるため、近年非常に注目度が高まっています。
NPO法人であっても、活動を促進していくためにはコストがかかりますが、そのコストを軽減し、且つマーケティングやプロモーション効果を高めることができるGoogle Ad Grantsは、今後も広まる可能性が高いプログラムです。
今回紹介した内容も参考に、NPO法人であればGoogle Ad Grantsを効果的に活用していきましょう。