インターネット技術の発達に伴うスマートフォンの普及やSNSの浸透により、近年ではユーザー行動の多様化が注目されています。
このような市場背景において重要視されているマーケティング手法が、1to1マーケティングです。
今回は、1to1マーケティングの基本的な概要から重要性、活用するメリットなどについてポイントを中心に紹介していきます。
1to1マーケティングとは?
1to1マーケティングとは、顧客一人一人のニーズや悩み、要望などを深堀りし、且つ過去の購買履歴や行動履歴などから読み取ることで、個々に最適な訴求やコミュニケーションを行うマーケティング手法のことを指します。
One to Oneマーケティングと呼ばれることもありますが、1対1ということで、一人ひとりに適したアプローチを行うことを意味します。
この際の顧客には、見込顧客だけでなく既存顧客も含まれます。
見込顧客であればニーズや趣味嗜好、自社のホームページにどこから訪れたのか、どのページをよく見ているのかなどの行動履歴をもとにしたアプローチが対象となり、既存顧客であればさらに追加して過去の購買履歴なども参考指標となります。
1to1マーケティングの重要性
1to1マーケティングの重要性が高まる背景には、以下の要素が考えられます。
①ユーザー行動の多様化や流行の短期化
1to1マーケティングが注目されてきた背景には、インターネット技術の発達に伴うユーザー行動の多様化が影響しています。
そもそも従来のマーケティングには、主にテレビCMに代表されるマスメディアが重要視されていました。
マスメディアを活用したマーケティングや広告プロモーションは、エリアなどによって多少セグメントを分けることはできますが、基本的に不特定多数に広くアプローチする傾向にあります。
また、ユーザー側も情報収集源としてマスメディアを活用していたため、ブームやトレンドといった流行もマスメディアから生まれることが多くありました。
ところが、スマートフォンをはじめインターネットが一般的になる昨今においては、様々な情報元からユーザー自身で必要な情報を取捨選択するようになり、一概に広くアプローチすることが効果に直結するケースは少なくなりました。
それに伴い、ユーザー行動は多様化し、ブームやトレンドといった流行も現在では短期化する傾向にあります。
このような中で、従来のような不特定多数に向けたマーケティングでは効果につながる可能性は低く、よりユーザー一人ひとりに応じたアプローチが重要視されてきています。
②パーソナライズ化技術の向上
また、1to1マーケティングが注目されている背景には、インターネットを介したマーケティング技術の向上も影響しています。
顧客一人ひとりに対する個別のアプローチを行う際には、顧客データの収集やその数値データにもとづくターゲティングやセグメント配信などが必要になります。
例えば、メールマガジンであっても従来では全員に同じ内容の訴求を行っていましたが、効果を高めるためには個別に内容をカスタマイズする必要があります。
とはいえ、一人ひとりに向けたメルマガを手動で設定するには限界も生じます。
これが近年であれば、パーソナライズ化に伴う技術が向上し、Cookieやシステムなどを活用することで、効率的に1to1マーケティングにつなげることが可能です。
このように、IT技術が進んだことも、1to1マーケティングの重要性が高まる要因の一つとなり、よりユーザーに対して価値の高いアプローチにつなげることができています。
1to1マーケティングを活用するメリット
1to1マーケティングは、上手に活用することで以下のような効果が期待できます。
①顧客との良好な信頼関係の構築
概要でもふれたように、ユーザー行動の多様化に伴い、ユーザーは必要な情報を自分で取捨選択する傾向にあります。
このような中で、ニーズや悩み、要望などに対して最適なタイミングで情報を知ることができれば、興味を惹くとともに見込顧客や既存顧客につながる可能性も高まります。
一方で、不必要な情報が何度も目にふれるとユーザーの不快感を増幅させ、かえってマイナスにつながる可能性も起こり得ます。
例えば、広告などによって多くのユーザーをランディングページに遷移させたとしても、ユーザーの興味と合わなければすぐに離脱してしまいます。
これに対して広告出稿時のターゲティングはもちろんのこと、ランディングページも顧客ニーズに応じて出し分けることで、スクロール率やコンバージョン率を高めることにもつながります。
1to1マーケティングでは、顧客一人ひとりに寄り添うマーケティング手法であるため、このようなユーザーの必要な情報を汲み取り、適切にアプローチすることで良好な信頼関係の構築につなげることが期待できます。
②費用対効果を高めた運用
顧客との信頼関係が構築できれば、マーケティングや広告プロモーション施策の費用対効果を高めることにもつながります。
ユーザーの購入履歴や行動履歴をもとにパーソナライズ化した運用を行えば、無駄な広告コストを削減することにもつながります。
例えば、100万人に同じ文章でメールアプローチを行ったとしても、自分事と思わないユーザーが90万人いればそれだけで非効率となります。
一方で、仮に1万人であったとしてもパーソナライズ化し、1to1マーケティングとして実施すれば、費用対効果を高めた効果につなげることも期待できます。
ニーズや悩み、要望などはユーザーによって異なります。
そのため、それぞれのユーザーに沿ったアプローチをすることで、業務効率化を図るとともに費用対効果を高めた運用につなげることもできます。
1to1マーケティングの代表的な手法
一口に1to1マーケティングと言ってもその種類は多岐に渡ります。
今回は、その中でも代表的な1to1マーケティングの種類と特徴について紹介していきます。
①リターゲティング広告
リターゲティング広告とは、過去に自社のホームページに訪れたユーザーに対して関連する広告などを表示させる手法のことを指します。
自社のホームページに訪れたユーザーは、何かしら自社の商材やサービスに興味を示している可能性が考えられます。
そのようなユーザーに対してアプローチすることで、購入や申し込みといったコンバージョンにつなげやすくする特徴があります。
ユーザーの閲覧履歴や行動履歴に応じて訴求できるため、1to1マーケティングの広告手法として多くの企業が導入・活用しています。
②マーケティングオートメーション(MA)
マーケティングオートメーション(MA:Marketing Automation)は、ホームページやWeb広告、メールマガジンなど様々なチャネルを通じたマーケティング業務を自動化するツールのことを指します。
近年、マーケティングや広告プロモーション施策は一つではありません。
ユーザー行動の多様化に伴い、複雑化するマーケティング施策を効率的に行うためにはツールの使用が欠かせません。
1to1マーケティングの効果を高めるためにも、顧客の購入履歴やユーザーの閲覧・行動履歴などを、アクセス解析をもとにマーケティングオートメーションで管理運用することで、業務効率化を図りつつ適切なアプローチにつなげることが可能です。
③レコメンデーション
レコメンデーションは、Cookie情報などを参考に、既存顧客の購入履歴やユーザーの閲覧履歴などをもとにパーソナライズ化を行い、対象ユーザーに対して適切な訴求を行う手法のことを指します。
ホームページやECサイトなどで目にする「おすすめ商品はこちら」「このページを見ているユーザーはこちらもよく見られています」といった表記がレコメンデーションに代表されるコンテンツとなります。
ユーザー情報にもとづいて訴求できるため、興味を惹きやすく、購買意欲や閲覧意欲を高める効果が期待できます。
1to1マーケティングを活用する上での注意点
これから1to1マーケティングの実施を検討している場合には、以下の要素はあらかじめ考慮しておくと効果的です。
①数値やデータをもとにした客観的なアプローチ
まず、1to1マーケティングには、客観的なアプローチに注力することが重要です。
顧客一人ひとりに則したアプローチは、人力且つ手動で行うことは困難です。
さらに、自社の経験や主観に捉われすぎると、ユーザーのニーズとはかけ離れ、マイナスのプロモーションにつながる可能性も起こり得ます。
一つの指標だけでなく、様々な観点から複合した指標をもとに、数値やデータによって算出し、適切にアプローチすることが重要です。
②効果には時間がかかる
また、1to1マーケティングの効果につなげるためには時間や工数もかかります。
①の数値やデータにもとづく客観的なアプローチには、自社のユーザーニーズに合致するだけの指標や根拠となる数値・データが求められます。
これらは一朝一夕で収集できるわけではなく、且つユーザー行動や流行は日々変わりますので、定期的なブラッシュアップも必要になります。
売上増加を求め、中途半端なまま1to1マーケティングを行うと、かえってマイナスにもつながりかねません。
目的を明確化し、戦略やシナリオを定めた上で実行していくことが重要です。
まとめ
ユーザー行動の多様化や、顧客ニーズ、流行の短期化などが進む昨今において、顧客一人ひとりに寄り添うマーケティングが重要視されてきています。
ユーザーに対して適切にアプローチすることで、費用対効果を高めた運用につなげるだけでなく、既存顧客の満足度を向上させ、アップセルやクロスセルにつなげることも期待できます。
今回紹介した内容も参考に、1to1マーケティングを是非検討してみてください。