自社の商品やサービスにおける強みは、マーケティング領域においてはUSPと呼ばれています。
USPを明確化し、広告・プロモーション施策に落とし込むことができれば、効果を飛躍的に高めることも期待できます。
今回は、USPの基本的な概要から、その重要性、USPを作成する上でのコツなどについてポイントを中心に紹介していきます。
USPとは?
USPとは、Unique Selling Proposition(ユニーク・セリング・プロポジション)」の頭文字をとった略語で、自社の商品やサービスにおける独自の強みのことを指します。
様々な商品やサービスが日々生まれ、目まぐるしく変化する市場の中において、USPを明確化することは重要です。
競合他社にはない強みを生み出すことができれば、自社の立ち位置を確立することにもつながります。
このUSPは、アメリカのコピーライターであるロッサー・リービス氏によって提唱されました。
Uniqueには「唯一・特有の」といった意味があり、Selling「販売」においてそれをProposition「主張」することで、よりマーケティングを有利に進めることが可能になります。
USPを作成することの重要性
インターネット技術の発達やスマートフォンの普及、SNSの浸透などに伴い、ユーザーは日々様々な情報を収集し、その中から自身にあった情報を取捨選択しています。
このような中で、ありふれた情報はユーザーの目には留まらず、認知拡大やコンバージョン獲得にもつながりません。
一方で、自社の商品やサービスにおけるUSPを明確化し、強みを最大限アピールすると、ユーザーの目に留まりやすくなり、コンバージョン獲得にもつながる可能性が高まります。
そのため、USPはマーケティングにおいて重要な要素となり、いかにユーザーに対して分かりやすく訴求できるかが重要になります。
このようなUSPの作成は、中小企業やスタートアップ企業になればなるほど重要な要素となります。
一般的に、大手企業であれば既に多くのユーザーに認知されているため、USPを作成しなくとも商品やサービスを訴求することができます。
これに対し中小企業では、いくら商品やサービスにこだわりがあったとしても、それを適切にアピールできなければ認知拡大にはつながりません。
ユーザーに知ってもらうきっかけを作る上でも、USPを明確にしておくことは効果的です。
USPを作成することのメリット
自社のマーケティングにおいて、USPを作成することは以下のような効果が期待できます。
① 認知度の拡大
USPをもとに広告・プロモーション施策を行えば、ユーザーの記憶に残りやすく、認知度拡大につながりやすくなります。
例えば、単に「〇〇の商品です」と訴求するよりは「他社にはない〇〇がついた商品」とアピールした方が、ユーザーの目に留まりやすくなります。
このような強みをもとに認知度拡大を図ることで、商品やサービスのブランド性を広め、市場における立ち位置を確立させることも可能になります。
② コンバージョンの獲得
USPによる競合他社との違いは、コンバージョン獲得という面でも効果が期待できます。
ユーザーは、様々な情報から自身の目的やニーズに合ったものを比較検討しながら収集しています。
そのため、USPによって違いを確立することができれば、比較検討の際に役立ち、コンバージョン獲得にもつながりやすくなります。
③ 拡散性の誘発
近年のマーケティングにおいて、SNSをはじめとする拡散は重要です。
ユーザーからの口コミや評判はコンバージョンへの判断基準にもなるため、いかに拡散性を誘発させるかに注力する企業も少なくありません。
USPは、この拡散を促す上でも効果が期待できます。
他商品にはない強みや独自性などは、自然とユーザーからの口コミにもつながりやすい特徴があります。
その結果、認知度拡大やコンバージョン獲得にもつながりやすくなります。
USPの主な用途
基本的にUSPは、以下の用途で活用される傾向にあります。
① キャッチコピーとしての活用
ユーザーに訴求するにあたり、キャッチコピーはフックの一つとして重要です。
広告クリエイティブや自社サイト内に掲載するキャッチコピーに対し、USPを含めることで効果をより高めることが可能になります。
② ブランドイメージの向上
USPは、商品やサービスにおけるブランドイメージの向上という面でも効果的です。
強みや独自性を強調することができれば、商品やサービス自体の認知度を高め、市場における優位性を確保することも可能です。
③ マーケティング戦略における方向性の確立
また、USPを明確化できれば、そのUSPを基準に自社のマーケティング戦略における指針とすることも可能になります。
方向性が確立できれば、その後の検証・改善にもつなげやすくなり、効率的なPDCAサイクルを回すことができます。
USPを作成する上で押さえておくべき概念
USPはただ単に作成すればいいという訳ではありません。
その後のマーケティング効果を高めるためにも、以下の概念をふまえ作成していくと効果的です。
① ターゲットとなるユーザーニーズをふまえた作成
USPは、売上増加や利益拡大を意識して作成していく必要があります。
例えば、競合他社よりも安い価格をUSPとして設定したとしても、ユーザーが安さよりも品質を求めているのであれば効果にはつながりません。
そのため、あらかじめターゲットとなるユーザーのニーズを可視化し、その上でUSPを作成していくことが重要です。
② 商品やサービスの特性をふまえた作成
商品やサービスによっては、強みや独自性が伝わりにくい場合もあります。
そのため、USPはその後のマーケティング施策をふまえ作成することが重要です。
例えば、専門的な用語を含めると、ユーザー側にてその用語の意味が分からず、強みや独自性が薄まってしまう可能性も高まります。
ターゲットとなるユーザーのニーズと合わせ、分かりやすいUSPを作成することが重要になります。
③ 他社よりも早くUSPを広める
USPは、業種業態問わず様々な企業が日々マーケティングに活用しています。
そのため、USPの作成に時間がかかり過ぎると、同じような表現を他社に活用され、効果が弱まる可能性も起こり得ます。
USPは、より早くユーザーに認知されなければ効果を高めることができません。
そのため、他社よりも早くUSPを作成し、市場における優位性を確保することが重要です。
効果的なUSPを作成する上でのコツ
USPの効果を高めるためには、先ほどふれた概念をふまえ、以下の要素を加味しながら作成していくと効果的です。
① 個性的で独自性の高いUSPの追求
USPを作成する際には、ターゲットとなるユーザーのニーズをふまえ、個性的で独自性の高いものを追求する必要があります。
情報が雑多化する昨今において、ありきたりなUSPではユーザーには響きません。
一方で、突飛な内容になり過ぎることもマイナスにつながる可能性があります。
基本的には、自社の商品やサービスに対する思いやこだわりをもとに、他社にはない個性を導き出すことが重要です。
その際に、ナンバーワンの要素だけではなく、オンリーワンもふまえ追求していくと効果的です。
② 複数のUSPを組み合わせる
USPは、商品やサービスに対して一つという訳ではありません。
例えば、価格の安さだけでなく品質も高いなど、複数のUSPを組み合わせて作成することも効果的です。
他社にはない強力なUSPがあれば別ですが、一般的に確立したUSPを導き出すことは難しい傾向にあります。
このような場合には、複数のUSPを組み合わせることで、トータル的な差別化を図ることも有効です。
とはいえ、あまりUSP要素を組み合わせすぎると、強みや独自性が弱まり、かえってマイナスになる場合もあるため注意が必要です。
ユーザーニーズをふまえ、ピンポイントにて訴求できる分かりやすいUSPを作成することが重要です。
③ 客観的な視点に立った作成を心掛ける
自社のUSPを作成すると、開発時の思いやこだわりが強くなりすぎるほど主観的になりやすい傾向にあります。
とはいえ、主観的なUSPは自社に有利になり過ぎるあまり、ユーザーには響かずに終わってしまう可能性も高まります。
そのため、USPを作成する際には客観的な視点に立ち、ユーザー目線を心掛けることが重要です。
また、作成後にはいきなり世に広めるのではなく、社内や既存顧客などにテストマーケティングを行うことも効果的です。
USP作成時に役立つフレームワーク
USP作成時には、以下のフレームワークを活用すると効率的に進めることが可能です。
① 4P分析
4P分析とは、Product(商品・サービス)、Price(価格)、Place(販売場所・提供方法)、Promotion(販促活動)からなるフレームワークです。
自社の商品やサービスにおけるマーケティング全般の流れを可視化することができ、USPの作成にも役立ちます。
自社の商品やサービスの現状を理解できなければ、効果的なUSPの作成にはつながりません。
その把握という面で、4P分析は効果的に活用することが可能です。
② 4C分析
4C分析とは、Customer Value(顧客価値)、Cost(顧客コスト)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)からなるフレームワークです。
自社の商品やサービスに対して、ユーザー視点に立って分析することで、ニーズを可視化することができます。
USPの作成には、自社の商品やサービスにおける理解と合わせ、ユーザーニーズも把握する必要があります。
このユーザーニーズを効率的に把握する上で、4C分析は効果的に活用することが可能です。
USPの成功事例
多くの企業がUSPをもとにマーケティングに活用していますが、その中でも代表的な事例について紹介していきます。
① ニトリ
家具やインテリア雑貨を販売するニトリは、「お、ねだん以上。ニトリ」というUSPをもとにしたキャッチコピーを展開しています。
分かりやすいキャッチコピーにて、価格の安さだけでなく瀕死の高さも訴求し、成功につなげています。
特に、「お、ねだん以上。」の表記は、単に価格の訴求だけでなくユーザーが感じる印象を含んでおり、興味関心を促す効果につながっています。
② ダイソン
掃除機などの家電製品を販売するダイソンは、「吸引力が変わらないただ一つの掃除機」というUSPをもとにしたキャッチコピーを展開しています。
吸引力という強みをUSPとして協調したことで、商品のブランドイメージだけでなく、市場における優位性を確保することにもつながっています。
また、「ただ一つ」という表現で差別化を図ったことも、USPを効果的に活用した結果といえます。
③ ドミノピザ
宅配ピザチェーンのドミノピザは、「ホットでフレッシュなピザを 30 分以内にお届けします。もし30分以上かかったら、ピザの料金は頂きません」というUSPをもとにしたキャッチコピーを展開しています。
30分以内という分かりやすいUSPの明記により、ユーザーに対し提供の速さを訴え、売上増加につなげています。
さらに、30分以内に届けられなかった場合には無料になると訴求することで、他社との差別化を明確化し、ユーザーに安心感を与えたことも成功につながる要因といえます。
まとめ
自社のマーケティングを成功に導く上で、USPの作成は重要です。
情報が雑多化する昨今において、作成したUSPは認知度拡大だけでなくコンバージョン獲得にもつながりやすくなります。
このUSPの作成には、自社の商品やサービスにおける把握とともに、ターゲットとなるユーザーのニーズを理解しておく必要があります。
今回紹介した内容も参考に、自社ならではのUSPを作成し、マーケティングに活用していきましょう。