国内でも多くの人が利用しているSNSとして「Facebook」が挙げられます。
現在、自社の商材に関する広告をFacebookで配信している人も多くいますが、iOS14.5による影響について理解できている人は少ないのではないでしょうか。
iOSがアップデートされたことによって、Web広告業界は多大な影響を受けており、特に広告担当者は把握しておくべきことが複数あります。
本記事では、iOS14.5にアップデートしたことで変化したターゲティングや実際の影響について解説します。
具体的にどんなところが変わって、今後どのような対応をしていけばいいのかわからない方はぜひ最後までお読みください。
1.iOS14.5のアップデート内容
古いバージョンからiOS14.5にアップデートしたことで変わった内容は以下の3つです。
・IDFAの取得に制限
・Safari以外のブラウザでITPが有効化
・ITPにリダイレクトトラッキング対策
それぞれのアップデート内容について理解を深めていきましょう。
1−1.IDFAの取得に制限
IDFAとは、Apple社がユーザーの端末にランダムで割り当てるデバイスIDのことです。
今までは、Webマーケティングにおいて、ユーザーの行動を追跡したりコンバージョン計測で使用されていました。
3rd party Cookieと特徴が似ていますが、IDFAは端末の所有者のデータを匿名化でき、プライバシーを保護しながらアプリの計測が可能となっています。
iOS14.5からはIDFA取得に制限がかかり、利用者からの同意が必須になっています。
デバイスやアプリなどを横断したデータを取得することで、高い精度で個人を特定できることから、CookieやIDFAが個人情報として認知されるようになりました。
初期設定ではIDFAの取得が不許可になったままであるため、情報の獲得がこれまでよりも難しくなっています。
1−2.Safari以外のブラウザでITPが有効化
ITPは Intelligent Tracking Prevention の略称で、プライバシーを保護するための機能のことを指しています。
ITPによってサイトから別のサイトへ移動した際にcookieを利用することができない仕様となっています。
これまで、ITPはSafariを利用しているユーザーに対して有効となっていました。
国内においてSafariを利用しているユーザーは18.6%であり、Chromeに次いで2番目に多いことからITPの影響はかなり大きいものとなっています。
iOS14.5からSafari以外のGoogle ChromeやYahoo! JapanでもITPが有効になったので、リターゲティング広告の配信がより難しくなっています。
なお、ITPの有効化はTwitterやFacebookなど、アプリ内のブラウザでも同様に影響を受けます。
1−3.ITPの機能にリダイレクトトラッキング対策が追加
リダイレクトトラッキングは、サイトから別のサイトへ遷移する際、リダイレクトを挟むことで、1st Party Cookieをドロップし、トラッキングを図る手法です。
ミリ数秒単位でリダイレクトされることでユーザーに気づかれることはほとんどなく、3rd party Cookieの規制・廃止への代替案として企業に活用されていました。
しかし、iOSがアップデートされてから、以前まで可能だったデータ取得やユーザー追跡ができなくなっています。
リダイレクトトラッキングの規制を行なっていることからも、Apple社によるユーザーの個人情報保護に対しての強い姿勢が伺えます。
2.iOS14.5によるFacebook広告のターゲティング精度の変化
iOS14.5によるFacebook広告のターゲティング精度の変化として、以下3つが挙げられます。
・ユーザーデータの収集が困難になる
・成果判断が困難になる
・興味関心・類似ターゲティングの配信が難しくなる
Facebookでの広告配信に対してどんな変化が起こるのか見ていきましょう。
2−1.ユーザーデータの収集が困難になる
iOS14.5以降、ATT( AppTrackingTransparency )を有効にしているユーザーのデータを収集することが難しくなります。
ATTはアプリの開発者に対してAppleが義務付けているルールで、以下の状況においてデータ収集への許可が求められます。
・iOS14.5にアップデート後、アプリを最初にダウンロードするとき
・利用者によってアプリが初めて利用されるとき
ATTを有効にしていると、Facebook(Instagram)が取得できるデータが減少することが予想できるでしょう。
リターゲティング広告を中心として成果が停滞する事例も出てきているので、ユーザーデータの収集が困難になる影響は大きいといえます。
2−2.成果判断が困難になる
iOSが14.5にアップデートされると、Facebook広告による成果判断が困難になることも影響として挙げられます。
なぜなら、トラッキングをしないように要求しているユーザーは全体の68%にものぼるからです。
過半数以上がトラッキングを拒否していることから、広告配信でのターゲティングへの影響は大きくなります。
トラッキングを拒否するユーザーが広告経由であったとしても、適切に行動を追うことが難しくなるでしょう。
2−3.興味関心・類似ターゲティングの配信も難しくなる
Cookieの有効期限短縮やIDFAのオプトイン化によって、リターゲティングだけでなく興味関心・類似ターゲティングも配信が難しくなります。
属性情報や行動履歴を収集できなくなり、オーディエンスターゲティング配信の精度が下がるためです。
また、オーディエンスリストの保持時間は24時間に短縮されています。
オーディエンスリストの蓄積件数が減ることで、同じユーザーに広告を何度も配信してしまうことも可能性として挙げられます。
同じユーザーに広告を何度も配信してしまうと、ユーザーに不快感を与えてしまい、企業やブランド全体のイメージを損ねてしまうこともあるので注意が必要です。
3.【広告代理店が実際に感じる】iOS14.5によるFacebook広告のターゲティングへの影響
広告代理店としては、規制の強化計測が困難になることで、ターゲティングの精度が悪くなっていることは日々感じています。
ただし、ユーザーの変化やコロナウイルスの影響などの外的要因も関わっているので、一概にiOSのアップデートが大きく絡んでいるとはいえません。
広告配信の成果が下がっていることを悲観的に捉えるだけでなく、対策を施して改善を試みることが重要です。
4.iOS14.5によってFacebook広告を利用する際に対策すべきこと
iOSのアップデートが行われたことで、Facebookの利用者が対策すべきことは以下4つが挙げられます。
・コンバージョンAPIの導入
・クリエイティブの工夫
・合算イベント測定の利用
・広告以外の施策の検討
それぞれの対策について詳しく把握し、今後の動きを検討していきましょう。
4−1.コンバージョンAPIの導入
コンバージョンAPIは、cookieの利用を伴わない広告計測・最適化の手段としてMeta社によって開発されました。
コンバージョンAPIでは、広告主のサーバーからMeta社の広告サーバーにイベントデータを直接送信することができます。
ターゲティング精度が下がっている状況を改善するとともに、以前のCookieよりも正確な計測ができることがメリットです。
ただし、コンバージョンAPIを導入するには、専門的な知識を持ったエンジニアからのサポートが必要になります。
自社の顧客情報をMeta社の広告サーバーに送信しなければいけないため、法務的な調整もしなければいけない点がデメリットです。
技術的・法務的の両方で工数がかかるため、検討している場合は早めに行動に移すことをおすすめします。
コンバージョンAPIについては、弊社YouTubeチャンネルの以下動画でも詳しく解説しているので、是非チェックしてみてください!
参考:【 知らなきゃヤバい ?! 】コンバージョンAPIの必要性!!【Facebook広告】|インフィニティエージェント
4−2.クリエイティブの工夫
個人情報の保護の観点からリターゲティング広告など、これまで成果の高い手法が難しくなったことで、これまでよりもクリエイティブに工夫を施す必要があります。
バナーやキャッチコピーに工夫を施すことで、成果の停滞を防ぎましょう。
広告のクリエイティブを作成する際は、情報を盛り込む量が多ければいいわけではなく、引き算も大切です。
最も目立たせたい訴求を確認し、情報にヒエラルキーを作ることで、適切な情報をユーザーに伝えることができます。
また、動画広告であれば、ストーリ性を持たせて興味を惹き続けるように構成することがおすすめです。
クリエイティブの作成については、弊社YouTubeチャンネルの以下動画でも解説しているのでぜひ参考にしてください。
参考:【即活用】効果絶大!?効果的なバナーキャッチコピーの作り方を大公開!|インフィニティエージェント
4−3.合算イベント測定の利用
Meta社の公式サイトによると、合算イベントについて以下のように説明されています。
Metaの合算イベント測定は、iOS 14.5以降のデバイスの利用者からのウェブイベントとアプリイベントの測定を可能にするプロトコルです。
合算イベント測定では、ドメインおよびモバイルアプリで合算イベント測定のレポートが行われるように設定・優先順位付けできるコンバージョンイベントが8件に制限されます。
現時点では、優先イベントのみで合算イベント測定のデータを使用してコンバージョンの最適化を改善できます。
合算イベント測定では、 iOS 14.5以降のバージョンを利用しているユーザーのイベント測定が可能になります。
イベントの優先順位を設定することで対象計測が定まり、最低限の広告配信の効果測定が可能です。
優先順位の設定は、1つのドメインに対して最大で8つのイベントを選択できます。
ユーザーがオプトアウトすると、測定可能なイベント数は1つに限られてしまうため、優先して取得するイベントを設定することが大切です。
なお、合算イベント測定を行うには、事前に以下の項目を満たしている必要があります。
・ドメイン認証の完了
・設定者がドメインを保持しているビジネスマネージャの管理者
・設定者がカスタムコンバージョンや標準イベントの権限を保持している
引用:Metaの合算イベント測定について|Metaビジネスヘルプセンター
4−4.広告以外の施策の検討
Webマーケティングでは、広告以外にも以下のように多数の施策が存在します。
・SEO対策
・SNS運用
・メールマーケティング
・コンテンツマーケティング
中長期的な目線でユーザーの獲得を狙いたい場合は、広告よりもオーガニック検索からの流入やSNS運用の方が適している可能性があるでしょう。
また、SEO対策やSNS運用は、自社で完結できる可能性が高いため、費用を抑えられるメリットもあります。
リターゲティング広告などを使用して思っていた成果が出ない際は、早めに撤退を考えて他のマーケティング施策を取り入れることも大切です。
即効性という観点から見ればWeb広告は高い効果を期待できますが、まだ他の施策を利用したことがない方には一度利用の検討をおすすめします。
5.iOS14.5によるFacebook広告のターゲティング以外の変化
IOS14.5によるFacabook広告の変化は、ターゲティング以外にも以下のことが挙げられます。
・レポートに制約が生まれた
・広告作成に制限がかかった
上記2つの変化についても確認しておきましょう。
それぞれ解説します。
5−1.レポートに制約が生まれた
iOSが14.5になったことで、配信とアクションの内訳の閲覧ができなくなりました。
広告の表示回数(インプレッション)は「Instagaram」や「Facebook」などのプラットフォームごとに確認できますが、インストール数は「その他」にまとめられたため、プラットフォームごとに見ることができなくなっています。
5−2.広告作成に制限がかかった
これまで配信していたキャンペーンでも、iOS14以降を利用しているユーザーに対しては新規で iOS14用のアプリインストールキャンペーンを作成する必要があります。
新規のiOS用のアプリインストールキャンペーンは、既存のキャンペーンを複製して設定を「オン」に切り替えて作成が完了します。
6.まとめ
いかがでしたか?
iOSのアップデートは広告への影響がとても大きいため、具体的な変更点を理解しておくことが大切です。
Facebook広告では、ユーザーデータの収集が困難になることで、成果の停滞が発生しやすくなったり、成果の判断が難しくなったりします。
また、リターゲティング広告だけでなく、興味関心・類似ターゲティングの配信も難しくなるでしょう。
実際、弊社でもターゲティングの精度の低下は感じている部分はありますが、外的要因もあるため一概にcookieだけが関連しているともいえません。
まずはコンバージョンAPIの導入やクリエイティブの工夫など、さまざまな手法を取り入れて成果が出せるように試みてみましょう。
今後、CookieやIDFAなど、個人情報への対策は強くなっていくことが予想されるため、動向に引き続き注目し、最適な広告配信ができるようにしておくことをおすすめします。
なお、iOSのアップデートによるFacebook広告への影響については、以下の動画でも解説していますので、是非参考にしてみてください!